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番外編集 アレな世界のいろいろな話
まなとと桃太の昔の仲間
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例の大戦が終わり40年近くが経った、80年代初め頃の事。
その少し前に僕達はまだまだ神としての扱いではあるものの少しだけ自由が認められ、ある程度意思が尊重され人としての身分も用意されるようになった。
僕は魚と扱われるのは勿論嫌だったが名前の響きは嫌いでは無かったのでそのまま平仮名読みでの名前で戸籍を書き換えてもらい、騰蛇はやはり蛇扱いは嫌だとの事で、それに近いが無難な名で桃太と改名してもらう事になった。
隊長もやはり御名はアレ過ぎると嫌そうだったので、本人の希望で大邑佐紀と名を改める事となった。
ちなみにこの国はアレなので苗字が無い事も普通にある。
それからはあまり国民の血税を使って遊行をしたくは無いのだが、気が向いて裏政府から許可が出れば時折桃太や仲間の皆(クロとシロは別の場所で暮らしていたので基本無理だったし、シロに関しては誘いたくも無かった)と小旅行に出たりして暮らしていた。
「まな兄、今度の旅行どこにするんだ?」
「…そうだね、海はいまだに見ると少し辛くなるから、山がいいかな」
「あー、だよな。じゃあ山深くの温泉宿とかにするか」
「うん、それが良いな。今秋だから紅葉狩りが出来そうな所とかだと嬉しいかな」
そんな取り留めのない会話を交わしていた時、千里が新聞を読みながらぽつりと漏らした。
「…ふうん、最近国内で急速に勢力を伸ばしている犯罪者集団が、アレな薬剤を独自開発して更に悪事を働いているみたいだね」
「うわー、まあこんな国だしそんな奴ら掃いて捨てる程いるだろうが迷惑な話だな。アレな薬剤ってどんな感じなんだ?」
「うん、まだ完全に解明はされていないらしいけれど。健常者でも服用や投薬すると一時的に僕達みたいな異能の力を授かれるらしいね。だが代償に長期や大量に摂取すると、身体に一生残る障害が出たり最悪の場合命を落とすそうだ」
「うっわー、軍でも捕虜に似たような実験してはいたがひでえな」
「…そうだね。当時は戦争のためという大義名分こそあったけれど、人道的に許される事では無いね」
「…昔みたいに僕が直接出向く訳にもいかないけれど、早く捕まって沈静化して欲しいね」
「あー、隊長戦争が始まる前は実際にそういう奴ら退治してたんでしたっけ。生きる為に仕方ないとはいえ当時から大変でしたね」
「まあ、大概は本当に悪人相手だったから例の大戦の時よりはまだ心も痛まなかったけどね。やはり楽しいものでは無かったね」
「千里、その犯罪者集団ってどんな名前なの?」
「うん、《天奇目》と言うそうだよ」
「…!」
「…アメノクシマ、って。まな兄」
「…まなと、桃太。何か心当たりでもあるの?」
「…うん。もしかしたら、僕達の昔の同僚が関係しているかもしれない」
「…ああ、そうかもな。違っていて欲しいが」
「…隊長、難しいかもしれないけれど。この件、僕と桃太に関わらせて欲しい。強権を使いたくは無いけれど、僕と桃太からの強い願いだと伝えて」
「…ああ、俺からも頼む」
「…分かった。裏政府に相談してみるよ」
それから神の身で俗世の事件に関わらせる訳にもとかなり審議されたものの、隊長が強く願い出てくれしばらく後にどうにか直接事件解決に関わる許可が出た。
相当な力を持つとはいえあまり危険に晒す訳にもいかないとの事で、監視も兼ねた厳重な警護が多数付くとの条件付きだったが。
「まなと、桃太。警護付きとはいえ心配だし、僕も一緒に行こうか?」
「…いや、気持ちはありがたいけれど良いよ。…たぶん、一緒に行ったら隊長は辛い思いをすると思うから」
「…ああ、そうだろうな。悪人相手とはいえ、隊長やっぱりこういう狂わせはもうしたく無いでしょうし」
「…そうだね。分かった。君達ならまず大丈夫だろうけど、どうか気を付けて。無事に帰って来てね」
「うん、きっと大丈夫だから。安心して」
「はい、俺達の予想してる奴ならまず勝てるでしょうし。すぐ帰って来ますよ」
そうして千里に頼み予測してもらったそいつらのアジトの大型湾岸倉庫に、黒服の警護付きで俺とまな兄は向かった。
「じゃ、まな兄はずっと俺の後ろにいてな。てうてうだし大概は平気だろうが、どんな毒ガスや科学兵器使ってくるか分からねえから一応ガスマスクしておいてくれ」
「うん、分かったよ。桃太や警護の方達もくれぐれも気を付けて」
「ええ、どうもお気遣いありがとうございます。まなと様」
「我々もガスマスクを始め最新鋭の装備で身を固めておりますので、どうかご心配なく」
そして、桃太の先導で僕達はその倉庫のシャッターを破壊し乗り込んだ。
「うーん、戦争初期の頃は俺が先陣切って武器持って突撃する事結構あったけど懐かしいなー」
「…そうだったね。ある程度功績を立ててからは直接戦闘の大半は一般の兵隊さんが担当してたけど。ほとんど傷付かないとは言え君が武器を持って突撃するのを見るのは、とても心苦しかった」
「あー、まあ仕方無いし昔の事とはいえ嫌な気持ちにさせてごめんなまな兄。武器持って直接ドンパチしたのなんてクロとやりあった時以来か。あいつ本当強かったよな」
「…そうだね。僕の歌もほとんど効かないし本当に手強かった。戦っている最中も本当は優しい子なんだろうなって分かって、辛かったし」
「…そうだな。あいつ、本当早くあのクソ野郎と引き離して幸せにしてやりたいんだがな」
「…うん、僕も。隊長も皆きっとそう思っているよ」
「…ええ、口を挟み申し訳ございませんが我々も同じ気持ちです。当然、表では決して言えませんが」
「はい、あの方の所業を知っている者は、皆そう思っている事でしょう」
護衛の人達も苦々しそうな表情で同意してくれた。
「…ありがとうございます。いつかは神様も、あの子に天罰を下してくださると信じています。出来る事なら直々に制裁してやりたいくらいなんですがね。人を傷付けたくなどありませんが、あの子だけは別です」
「ああ、俺ももう二目と見られないくらいにめちゃくちゃにしてぶっ殺してやりてえな」
「…心中、お察しいたします」
そうして当然多数の武装した構成員がいたが、桃太と護衛の人達が的確に対処してくれたおかげで僕は全く傷付かずにアジトの最奥部へとたどり着く事が出来た。
「…突然襲撃されて敵対勢力か秘密警察かとでも思ったら、まさか君達だったとはね。久しぶりだね」
「…その声と髪の色。やっぱり、君なんだね」
「…目連。お前、何でこんな事やってんだよ」
その犯罪組織の首魁は藍色の少し長めの髪をしサングラスをかけた、僕と同じくらいの外見の少年だった。
「…その忌々しい名前はもう捨てた。君達も化け物呼ばわりされたくは無いだろう。今はアメノマヒトツ神に因み天之真人と名乗っている。組織名もそれになぞらえ名付けた」
「…うん、君昔から僕達とごっこ遊びする時、よくその組織名使っていたもんね」
「…組織名聞いた時まさかとは思ったが、嫌な予感が的中しちまったな」
「…まなと様、桃太様。お知り合いなのですか」
護衛の人が注意深く武器を構えながら訪ねて来た。
「…ええ、僕と桃太が昔居た見世物小屋で古くから一緒に暮らしていました。名前から推測できるでしょうが、目に大きな特徴がありとても小さい頃に売られてきて、気の毒にずっと見世物にされていました」
「ああ、当時のアレな国としても外見的に不気味って事で幸い俺達みたいなクソな事はほとんどされなかったが。…幸いって言って良いのかは、微妙な所だがな」
「…ああ、そうだったのですか」
「…で、お前すげえ臆病で虫も殺せないような奴だったのに。何でよりにもよって犯罪者集団の親玉なんかやってんだよ」
「どんな人間だって歳を取れば変わるものだし君達も察しは付くだろう。僕をこんな体に産んだ世界も、それまで化け物扱いだったのに君達が英雄となってから、手のひらを返したように僕達みたいな者を持て囃して神の子だとか保護する調子の良い国民達も皆憎かった。アレな技術が発達し普通の外見になれてからもその気持ちは変わらなかった。そんな訳で生まれ持ったこの力を存分に振るって、似たような仲間を集めこの国を、ひいてはこの世界全てを滅茶苦茶にしてやろうと思ってね」
「…君の気持ちも分かるけど、それは許される事ではないよ」
「…そうだな。同僚にも似たような境遇で世界を呪いまくってた奴がいるが八つ当たりは駄目だろ。そいつはもう救いようの無いくらいのクズだが」
「ああ、君達の同僚のモンシロチョウの子だろう。僕も裏の世界でのし上がってからあの子のやらかした件を知ったけれど酷い話だね。まあ僕も似たようにアレな薬剤を投薬して人工的に能力者を作り出してはいるが、実験台には犯罪者やどうしようも無いようなクズしか使わないし」
「…お前、俺達もそうだが酷い生まれで学もねえのにどうやってそんな薬剤作り出したんだよ」
「うん、戦争が終わって君達のお陰でアレな子達の地位が大幅に向上しすぐに手厚く保護されるようになった訳だけど。それからは教育も受けられたし、普通の姿になって社会に出てからは金さえ積めば何でもするようなアレな研究者を探しだして、そういう奴を多数雇って作らせたよ。資金は僕の能力を活かせば銀行強盗なり金庫破りなりどうとでもなったさ」
「…そうだね。君の力もなかなか強力だもんね」
「ああ、後になって聞いたが軍もお前のスカウト考えてたらしいしな。上位互換の隊長がいるしって事で結局お流れになったらしいが」
「その時軍に行けていれば、僕も今頃英雄扱いでこう身を落とす事も無かったんだけどね。まあたらればの話をしても仕方ないよね」
「…君は本当はとても臆病で優しい子だから、そうしたらすごく苦しんだと思うよ」
「…そうだな。俺とまな兄も軍に来てものの1月くらいで、軽率に喜んだの後悔したしな」
「…この男も、特異な力があるのですか」
「ええ、彼の目で見つめられるとしばらくの間一切の身動きが取れなくなります。僕達はある程度抵抗が出来るでしょうが、どうか護衛のあなた方はお気を付けて」
「かしこまりました。十分に注意いたします」
「…護衛を付けてここまで来るって事は当然僕を捕まえる気なんだろうけど、悪いがそうはさせないよ。折角ここまで組織を大きくしたんだ、行ける所まで行きたいからね。君達を無力化した後人質にして、国外へ逃亡するかね」
「…これ以上、君に悪事を犯させたくない。気の毒だけど全力で行かせてもらうよ」
「ああ、悪いが金縛り程度で俺達をどうにか出来ると思うな」
「もちろんあの大戦を勝利に導いた君達をそれだけで下せるとは思っていないさ。当然僕の傍には組織でも腕利きの精鋭が控えている。僕と同じように元アレな子とか、酷い環境から救い出して僕に忠誠を誓っている子とかね。―さあ、お前達。全力でかかれ」
そうして彼が手を上げると、どこからともなく多数の武装した少年や青年達が現れ、一斉にカプセルを取り出し飲み下した。
「…そいつが、例の薬剤か」
「ああ。無能力者でも短時間だが僕達のような能力を宿し、元々能力がある者は更に力を強化できる。君達にも十分に渡り合えると思うよ。では、お前達。英雄とはいえ容赦するな」
「はい、真人さま」
「…申し訳ございませんが、このお方の為に倒れて下さい」
「…ごめんね。君達にも事情があるのは分かるけれど、そうは行かないよ。精神汚染系の能力なら僕の歌声である程度中和できると思うから、桃太も護衛の方達も頑張って下さい」
「ああ、まな兄。絶対俺から離れないでくれ」
「ええ、我々もそういった能力者を想定した装備を用意しておりますので」
そして一発の銃声を皮切りに、俺達は激しい戦闘を開始した。
ガスマスクを外したまな兄が全力で歌ってくれ、護衛の人達は真人の視界から離れるように散らばり周囲の精鋭達を対処していった。
「うーん、攻撃力は俺からすれば大した事ねえが確かにこいつら相当強化されてるな。俺もちょっと頭痛くてクラクラするし。まあまな兄が中和してくれてるから平気な程度だけど」
「…君達、流石にやるね。場数を踏んだせいか魔性の歌も更に強力になっているし」
「…こんな風に強くなんか、なりたくなかったけどね」
そうして数十分の激しい戦闘の末、護衛の人は数人動けなくなってしまったが深刻な犠牲は出ずに、真人以外全員武装解除させる事に成功した。
「…あとは、君だけだね。目連、いや真人。これ以上罪を重ねるのは止めて大人しく捕まってくれないか。可能な限り減刑してもらうよう、僕からも裏政府にお願いするから」
「ああ。やった事は許されねえが、昔の同僚で家族みたいな奴が処刑されるのは俺も心苦しいからな」
「…もう、今更後戻りは出来ないさ。君達の権限をもってしても、僕は相当の人を殺したし罪も重ねた。極刑は免れないだろう。…だが折角だし、君達も道連れにしてやろう」
そう言って真人は懐から注射器を取り出し、止める間も無く首筋に打ち込んだ。
「…真人さま、それは」
「…とてつもない濃度の、アレな薬剤。そんな物を投薬したら、あなたとはいえ」
倒れ伏した精鋭達が悲しそうに手を伸ばす。
「…思えば騰蛇には昔からケンカでは敵わなかったし、優しい真魚都はそんな事しないが君の美しさと天上の歌声には内心ずっと嫉妬していた。君達が軍へ引き取られてからは僕が見世物としては一番人気ではあったが、当然嬉しくは無かった。…最後に、君達に一泡吹かせられるなら本望だ」
「…目連、お前」
「…可哀想だけど、僕達もここで死ぬ訳には行かない。まだやりたい事があるし、帰りを待ってくれている仲間がいるから」
そうして、彼はサングラスを外し、血走った両目で僕達を睨みつけた。
「…うわ、確かに超強化してるだけあって眼力やべえな。俺でもほとんど身動き取れねえ」
「…僕が、どうにか中和するから。皆頑張って」
まな兄が渾身の力で歌ってくれたが、それでも俺の身体は全身に鉛を巻き付けたように重かった。
「…真人さま、止めて下さい。すぐに中和薬を使って下さい」
「…あなたは悪辣な孤児院で殺されそうになっていた私を救ってくれた恩人です。どうか、命を大事になさって下さい」
「…皆、悪いがこの組織もここまでだ。アレな強力爆弾を作動させたのであと10分でこの倉庫は跡形も無く消し飛ぶ。すぐに総員退避しろ、首領命令だ」
「…そんな、あなたを失って生きてなどいられません」
「…あの世まで、御供させて下さい」
「…お前、やってる事はクソだが人望あるじゃん。見直したよ。だがそれはそれだ」
俺は悲鳴を上げる筋肉に喝を入れ全力で床を蹴り、真人を全力でぶん殴り吹っ飛ばした。
「…悪いが、喧嘩は今回も俺の勝ちだな」
「…真人。君は優しい子だったのに、どうしてこんな事になってしまったんだろうね」
「…はは、日陰者の負け犬は所詮最後まで負け犬か。まあ、君達をここまで苦しめたし大した物かな」
「ああ、お前案外やるじゃん。まあドーピングしたし褒められる形じゃねえがな」
「…ねえ真人。どうして君、組織名に僕達が気付きそうな名前を使ったの?」
「…大した意味は無い。クソな見世物小屋の生活で唯一楽しかった思い出の名を使っただけさ」
「…本当は、僕達に止めて欲しかったんじゃないのかい?」
「…真人、お前」
「…ふふ、どうだろうね。さあ、もう間もなくここも吹き飛ぶ。さっさと逃げる事だね。精鋭達も連れ帰った所で全員自害するだろうし、放置して帰った方が良いよ」
「…うん、そうするよ。たぶんこの子達もそれを望んでいるだろうしね」
「…ああ、確実に死んだら地獄に落ちるだろうが。いつか生まれ変われたら、今度は初めから普通に生まれて、真人間として普通に生きたいね」
「…うん、そうだと良いね」
「じゃあほら、もう残り5分近いからさっさと行きな。さよなら、二人とも。最後に遊べて楽しかったよ」
「…うん、さよなら。真人」
「…じゃーな、真人。こんな形で会いたくは無かったが、久しぶりに顔見れて良かったよ」
そう力無くくずおれる真人と寄り添う精鋭達を残し、僕達は全員どうにか倉庫を脱出した。
脱出直後、大型倉庫は轟音と爆炎を上げ、あっという間に瓦礫の山と化した。
「……」
「…まな兄、大丈夫か」
「…うん。大体こうなるだろうと、想像は付いてたから」
「…そうだな」
「…まなと様、桃太様。組織壊滅の為ご尽力ありがとうございました」
護衛の人達が恭しく頭を下げた。
「…いえ、僕が望んだ事ですから。あなた方も危険に晒してしまいすみませんでした」
「はい、しんどいけど俺達の手であいつを止められて良かったんで。頭上げてください」
「…恐縮です」
「…うん、じゃあ帰ろうか。鎮火はアレな消防隊の人がすぐ来てくれるだろうし」
「ああ、そうだな」
「…真人の言う通り、あの子地獄には落ちてしまうだろうけど。いつかは幸せになって欲しいな」
「…ああ、神様も一部アレとはいえ鬼じゃないだろうし、分かってくれるだろ」
「…僕達相当長寿だろうから、いつか生まれ変われたあの子に会えると良いね」
「…そうだな。あのクソぶっ殺す以外にも長生きする理由が増えたな」
そうして、僕達は相当アレな強化処置が施された高級車に乗り込み、隊長達が待つ神社へと帰った。
その少し後、シロとクロが暮らす豪華な神社にて。
「あー?せっかく僕がアニメ見てんのにニュース速報とか邪魔すんなよクソが。こんなアレな国なんだし事件の一つや二つ後回しで良いだろうがよ。テレビ局にクレーム入れてやろうか」
「…シロ、そういう事言っちゃ駄目だよ」
「んで何だよクソウゼえな。ふーん、国内で相当やらかしてた犯罪者集団の本拠地が吹っ飛んで、死体丸焦げだけどボスや幹部たちもたぶん全員死んだんだ。壊滅させた奴らやるじゃん。まあどうでも良いけどー」
「…悪い人とはいえ人が大勢死んだのに、どうでも良いとか言っちゃ駄目だよ」
「でー、そのアレ組織名が天奇目で、ボスの奴の名前は天之真人か。ふーん、神から組織名取って来たのは若干中二だけどセンスは悪くないじゃん」
「…天奇目って、一つ目の神様の名前だっけ」
「あー、確かそうだね。クソな国産み出した神とかどうでも良いけど軍に入ってからは必修項目って事でこの国の神話とか覚え込まされたし。ほんと神なんか僕とクロだけで良いっての」
「…シロ。神様もそうだけど色々な人がいるから、辛い事もあるけどこの世界は楽しいんだよ。そういう事言わないで、もっと色々な人に興味を持って」
「えー?このクソな国に生まれた時点でもう詰んでるんだし好きな人だけ関わってれば良いじゃん。この世界も国民も大概クソなんだから付き合ったって大抵は裏切られるしさ、ほら僕振りやがった御名みたいに。あー今もう名前違うんだっけ。まあやっぱどうでも良いけどさ」
「…そっか」
「あ、でもクロは僕の事絶対裏切らないって分かってるから、宇宙一大好き!」
「…うん、ありがとう」
その少し前に僕達はまだまだ神としての扱いではあるものの少しだけ自由が認められ、ある程度意思が尊重され人としての身分も用意されるようになった。
僕は魚と扱われるのは勿論嫌だったが名前の響きは嫌いでは無かったのでそのまま平仮名読みでの名前で戸籍を書き換えてもらい、騰蛇はやはり蛇扱いは嫌だとの事で、それに近いが無難な名で桃太と改名してもらう事になった。
隊長もやはり御名はアレ過ぎると嫌そうだったので、本人の希望で大邑佐紀と名を改める事となった。
ちなみにこの国はアレなので苗字が無い事も普通にある。
それからはあまり国民の血税を使って遊行をしたくは無いのだが、気が向いて裏政府から許可が出れば時折桃太や仲間の皆(クロとシロは別の場所で暮らしていたので基本無理だったし、シロに関しては誘いたくも無かった)と小旅行に出たりして暮らしていた。
「まな兄、今度の旅行どこにするんだ?」
「…そうだね、海はいまだに見ると少し辛くなるから、山がいいかな」
「あー、だよな。じゃあ山深くの温泉宿とかにするか」
「うん、それが良いな。今秋だから紅葉狩りが出来そうな所とかだと嬉しいかな」
そんな取り留めのない会話を交わしていた時、千里が新聞を読みながらぽつりと漏らした。
「…ふうん、最近国内で急速に勢力を伸ばしている犯罪者集団が、アレな薬剤を独自開発して更に悪事を働いているみたいだね」
「うわー、まあこんな国だしそんな奴ら掃いて捨てる程いるだろうが迷惑な話だな。アレな薬剤ってどんな感じなんだ?」
「うん、まだ完全に解明はされていないらしいけれど。健常者でも服用や投薬すると一時的に僕達みたいな異能の力を授かれるらしいね。だが代償に長期や大量に摂取すると、身体に一生残る障害が出たり最悪の場合命を落とすそうだ」
「うっわー、軍でも捕虜に似たような実験してはいたがひでえな」
「…そうだね。当時は戦争のためという大義名分こそあったけれど、人道的に許される事では無いね」
「…昔みたいに僕が直接出向く訳にもいかないけれど、早く捕まって沈静化して欲しいね」
「あー、隊長戦争が始まる前は実際にそういう奴ら退治してたんでしたっけ。生きる為に仕方ないとはいえ当時から大変でしたね」
「まあ、大概は本当に悪人相手だったから例の大戦の時よりはまだ心も痛まなかったけどね。やはり楽しいものでは無かったね」
「千里、その犯罪者集団ってどんな名前なの?」
「うん、《天奇目》と言うそうだよ」
「…!」
「…アメノクシマ、って。まな兄」
「…まなと、桃太。何か心当たりでもあるの?」
「…うん。もしかしたら、僕達の昔の同僚が関係しているかもしれない」
「…ああ、そうかもな。違っていて欲しいが」
「…隊長、難しいかもしれないけれど。この件、僕と桃太に関わらせて欲しい。強権を使いたくは無いけれど、僕と桃太からの強い願いだと伝えて」
「…ああ、俺からも頼む」
「…分かった。裏政府に相談してみるよ」
それから神の身で俗世の事件に関わらせる訳にもとかなり審議されたものの、隊長が強く願い出てくれしばらく後にどうにか直接事件解決に関わる許可が出た。
相当な力を持つとはいえあまり危険に晒す訳にもいかないとの事で、監視も兼ねた厳重な警護が多数付くとの条件付きだったが。
「まなと、桃太。警護付きとはいえ心配だし、僕も一緒に行こうか?」
「…いや、気持ちはありがたいけれど良いよ。…たぶん、一緒に行ったら隊長は辛い思いをすると思うから」
「…ああ、そうだろうな。悪人相手とはいえ、隊長やっぱりこういう狂わせはもうしたく無いでしょうし」
「…そうだね。分かった。君達ならまず大丈夫だろうけど、どうか気を付けて。無事に帰って来てね」
「うん、きっと大丈夫だから。安心して」
「はい、俺達の予想してる奴ならまず勝てるでしょうし。すぐ帰って来ますよ」
そうして千里に頼み予測してもらったそいつらのアジトの大型湾岸倉庫に、黒服の警護付きで俺とまな兄は向かった。
「じゃ、まな兄はずっと俺の後ろにいてな。てうてうだし大概は平気だろうが、どんな毒ガスや科学兵器使ってくるか分からねえから一応ガスマスクしておいてくれ」
「うん、分かったよ。桃太や警護の方達もくれぐれも気を付けて」
「ええ、どうもお気遣いありがとうございます。まなと様」
「我々もガスマスクを始め最新鋭の装備で身を固めておりますので、どうかご心配なく」
そして、桃太の先導で僕達はその倉庫のシャッターを破壊し乗り込んだ。
「うーん、戦争初期の頃は俺が先陣切って武器持って突撃する事結構あったけど懐かしいなー」
「…そうだったね。ある程度功績を立ててからは直接戦闘の大半は一般の兵隊さんが担当してたけど。ほとんど傷付かないとは言え君が武器を持って突撃するのを見るのは、とても心苦しかった」
「あー、まあ仕方無いし昔の事とはいえ嫌な気持ちにさせてごめんなまな兄。武器持って直接ドンパチしたのなんてクロとやりあった時以来か。あいつ本当強かったよな」
「…そうだね。僕の歌もほとんど効かないし本当に手強かった。戦っている最中も本当は優しい子なんだろうなって分かって、辛かったし」
「…そうだな。あいつ、本当早くあのクソ野郎と引き離して幸せにしてやりたいんだがな」
「…うん、僕も。隊長も皆きっとそう思っているよ」
「…ええ、口を挟み申し訳ございませんが我々も同じ気持ちです。当然、表では決して言えませんが」
「はい、あの方の所業を知っている者は、皆そう思っている事でしょう」
護衛の人達も苦々しそうな表情で同意してくれた。
「…ありがとうございます。いつかは神様も、あの子に天罰を下してくださると信じています。出来る事なら直々に制裁してやりたいくらいなんですがね。人を傷付けたくなどありませんが、あの子だけは別です」
「ああ、俺ももう二目と見られないくらいにめちゃくちゃにしてぶっ殺してやりてえな」
「…心中、お察しいたします」
そうして当然多数の武装した構成員がいたが、桃太と護衛の人達が的確に対処してくれたおかげで僕は全く傷付かずにアジトの最奥部へとたどり着く事が出来た。
「…突然襲撃されて敵対勢力か秘密警察かとでも思ったら、まさか君達だったとはね。久しぶりだね」
「…その声と髪の色。やっぱり、君なんだね」
「…目連。お前、何でこんな事やってんだよ」
その犯罪組織の首魁は藍色の少し長めの髪をしサングラスをかけた、僕と同じくらいの外見の少年だった。
「…その忌々しい名前はもう捨てた。君達も化け物呼ばわりされたくは無いだろう。今はアメノマヒトツ神に因み天之真人と名乗っている。組織名もそれになぞらえ名付けた」
「…うん、君昔から僕達とごっこ遊びする時、よくその組織名使っていたもんね」
「…組織名聞いた時まさかとは思ったが、嫌な予感が的中しちまったな」
「…まなと様、桃太様。お知り合いなのですか」
護衛の人が注意深く武器を構えながら訪ねて来た。
「…ええ、僕と桃太が昔居た見世物小屋で古くから一緒に暮らしていました。名前から推測できるでしょうが、目に大きな特徴がありとても小さい頃に売られてきて、気の毒にずっと見世物にされていました」
「ああ、当時のアレな国としても外見的に不気味って事で幸い俺達みたいなクソな事はほとんどされなかったが。…幸いって言って良いのかは、微妙な所だがな」
「…ああ、そうだったのですか」
「…で、お前すげえ臆病で虫も殺せないような奴だったのに。何でよりにもよって犯罪者集団の親玉なんかやってんだよ」
「どんな人間だって歳を取れば変わるものだし君達も察しは付くだろう。僕をこんな体に産んだ世界も、それまで化け物扱いだったのに君達が英雄となってから、手のひらを返したように僕達みたいな者を持て囃して神の子だとか保護する調子の良い国民達も皆憎かった。アレな技術が発達し普通の外見になれてからもその気持ちは変わらなかった。そんな訳で生まれ持ったこの力を存分に振るって、似たような仲間を集めこの国を、ひいてはこの世界全てを滅茶苦茶にしてやろうと思ってね」
「…君の気持ちも分かるけど、それは許される事ではないよ」
「…そうだな。同僚にも似たような境遇で世界を呪いまくってた奴がいるが八つ当たりは駄目だろ。そいつはもう救いようの無いくらいのクズだが」
「ああ、君達の同僚のモンシロチョウの子だろう。僕も裏の世界でのし上がってからあの子のやらかした件を知ったけれど酷い話だね。まあ僕も似たようにアレな薬剤を投薬して人工的に能力者を作り出してはいるが、実験台には犯罪者やどうしようも無いようなクズしか使わないし」
「…お前、俺達もそうだが酷い生まれで学もねえのにどうやってそんな薬剤作り出したんだよ」
「うん、戦争が終わって君達のお陰でアレな子達の地位が大幅に向上しすぐに手厚く保護されるようになった訳だけど。それからは教育も受けられたし、普通の姿になって社会に出てからは金さえ積めば何でもするようなアレな研究者を探しだして、そういう奴を多数雇って作らせたよ。資金は僕の能力を活かせば銀行強盗なり金庫破りなりどうとでもなったさ」
「…そうだね。君の力もなかなか強力だもんね」
「ああ、後になって聞いたが軍もお前のスカウト考えてたらしいしな。上位互換の隊長がいるしって事で結局お流れになったらしいが」
「その時軍に行けていれば、僕も今頃英雄扱いでこう身を落とす事も無かったんだけどね。まあたらればの話をしても仕方ないよね」
「…君は本当はとても臆病で優しい子だから、そうしたらすごく苦しんだと思うよ」
「…そうだな。俺とまな兄も軍に来てものの1月くらいで、軽率に喜んだの後悔したしな」
「…この男も、特異な力があるのですか」
「ええ、彼の目で見つめられるとしばらくの間一切の身動きが取れなくなります。僕達はある程度抵抗が出来るでしょうが、どうか護衛のあなた方はお気を付けて」
「かしこまりました。十分に注意いたします」
「…護衛を付けてここまで来るって事は当然僕を捕まえる気なんだろうけど、悪いがそうはさせないよ。折角ここまで組織を大きくしたんだ、行ける所まで行きたいからね。君達を無力化した後人質にして、国外へ逃亡するかね」
「…これ以上、君に悪事を犯させたくない。気の毒だけど全力で行かせてもらうよ」
「ああ、悪いが金縛り程度で俺達をどうにか出来ると思うな」
「もちろんあの大戦を勝利に導いた君達をそれだけで下せるとは思っていないさ。当然僕の傍には組織でも腕利きの精鋭が控えている。僕と同じように元アレな子とか、酷い環境から救い出して僕に忠誠を誓っている子とかね。―さあ、お前達。全力でかかれ」
そうして彼が手を上げると、どこからともなく多数の武装した少年や青年達が現れ、一斉にカプセルを取り出し飲み下した。
「…そいつが、例の薬剤か」
「ああ。無能力者でも短時間だが僕達のような能力を宿し、元々能力がある者は更に力を強化できる。君達にも十分に渡り合えると思うよ。では、お前達。英雄とはいえ容赦するな」
「はい、真人さま」
「…申し訳ございませんが、このお方の為に倒れて下さい」
「…ごめんね。君達にも事情があるのは分かるけれど、そうは行かないよ。精神汚染系の能力なら僕の歌声である程度中和できると思うから、桃太も護衛の方達も頑張って下さい」
「ああ、まな兄。絶対俺から離れないでくれ」
「ええ、我々もそういった能力者を想定した装備を用意しておりますので」
そして一発の銃声を皮切りに、俺達は激しい戦闘を開始した。
ガスマスクを外したまな兄が全力で歌ってくれ、護衛の人達は真人の視界から離れるように散らばり周囲の精鋭達を対処していった。
「うーん、攻撃力は俺からすれば大した事ねえが確かにこいつら相当強化されてるな。俺もちょっと頭痛くてクラクラするし。まあまな兄が中和してくれてるから平気な程度だけど」
「…君達、流石にやるね。場数を踏んだせいか魔性の歌も更に強力になっているし」
「…こんな風に強くなんか、なりたくなかったけどね」
そうして数十分の激しい戦闘の末、護衛の人は数人動けなくなってしまったが深刻な犠牲は出ずに、真人以外全員武装解除させる事に成功した。
「…あとは、君だけだね。目連、いや真人。これ以上罪を重ねるのは止めて大人しく捕まってくれないか。可能な限り減刑してもらうよう、僕からも裏政府にお願いするから」
「ああ。やった事は許されねえが、昔の同僚で家族みたいな奴が処刑されるのは俺も心苦しいからな」
「…もう、今更後戻りは出来ないさ。君達の権限をもってしても、僕は相当の人を殺したし罪も重ねた。極刑は免れないだろう。…だが折角だし、君達も道連れにしてやろう」
そう言って真人は懐から注射器を取り出し、止める間も無く首筋に打ち込んだ。
「…真人さま、それは」
「…とてつもない濃度の、アレな薬剤。そんな物を投薬したら、あなたとはいえ」
倒れ伏した精鋭達が悲しそうに手を伸ばす。
「…思えば騰蛇には昔からケンカでは敵わなかったし、優しい真魚都はそんな事しないが君の美しさと天上の歌声には内心ずっと嫉妬していた。君達が軍へ引き取られてからは僕が見世物としては一番人気ではあったが、当然嬉しくは無かった。…最後に、君達に一泡吹かせられるなら本望だ」
「…目連、お前」
「…可哀想だけど、僕達もここで死ぬ訳には行かない。まだやりたい事があるし、帰りを待ってくれている仲間がいるから」
そうして、彼はサングラスを外し、血走った両目で僕達を睨みつけた。
「…うわ、確かに超強化してるだけあって眼力やべえな。俺でもほとんど身動き取れねえ」
「…僕が、どうにか中和するから。皆頑張って」
まな兄が渾身の力で歌ってくれたが、それでも俺の身体は全身に鉛を巻き付けたように重かった。
「…真人さま、止めて下さい。すぐに中和薬を使って下さい」
「…あなたは悪辣な孤児院で殺されそうになっていた私を救ってくれた恩人です。どうか、命を大事になさって下さい」
「…皆、悪いがこの組織もここまでだ。アレな強力爆弾を作動させたのであと10分でこの倉庫は跡形も無く消し飛ぶ。すぐに総員退避しろ、首領命令だ」
「…そんな、あなたを失って生きてなどいられません」
「…あの世まで、御供させて下さい」
「…お前、やってる事はクソだが人望あるじゃん。見直したよ。だがそれはそれだ」
俺は悲鳴を上げる筋肉に喝を入れ全力で床を蹴り、真人を全力でぶん殴り吹っ飛ばした。
「…悪いが、喧嘩は今回も俺の勝ちだな」
「…真人。君は優しい子だったのに、どうしてこんな事になってしまったんだろうね」
「…はは、日陰者の負け犬は所詮最後まで負け犬か。まあ、君達をここまで苦しめたし大した物かな」
「ああ、お前案外やるじゃん。まあドーピングしたし褒められる形じゃねえがな」
「…ねえ真人。どうして君、組織名に僕達が気付きそうな名前を使ったの?」
「…大した意味は無い。クソな見世物小屋の生活で唯一楽しかった思い出の名を使っただけさ」
「…本当は、僕達に止めて欲しかったんじゃないのかい?」
「…真人、お前」
「…ふふ、どうだろうね。さあ、もう間もなくここも吹き飛ぶ。さっさと逃げる事だね。精鋭達も連れ帰った所で全員自害するだろうし、放置して帰った方が良いよ」
「…うん、そうするよ。たぶんこの子達もそれを望んでいるだろうしね」
「…ああ、確実に死んだら地獄に落ちるだろうが。いつか生まれ変われたら、今度は初めから普通に生まれて、真人間として普通に生きたいね」
「…うん、そうだと良いね」
「じゃあほら、もう残り5分近いからさっさと行きな。さよなら、二人とも。最後に遊べて楽しかったよ」
「…うん、さよなら。真人」
「…じゃーな、真人。こんな形で会いたくは無かったが、久しぶりに顔見れて良かったよ」
そう力無くくずおれる真人と寄り添う精鋭達を残し、僕達は全員どうにか倉庫を脱出した。
脱出直後、大型倉庫は轟音と爆炎を上げ、あっという間に瓦礫の山と化した。
「……」
「…まな兄、大丈夫か」
「…うん。大体こうなるだろうと、想像は付いてたから」
「…そうだな」
「…まなと様、桃太様。組織壊滅の為ご尽力ありがとうございました」
護衛の人達が恭しく頭を下げた。
「…いえ、僕が望んだ事ですから。あなた方も危険に晒してしまいすみませんでした」
「はい、しんどいけど俺達の手であいつを止められて良かったんで。頭上げてください」
「…恐縮です」
「…うん、じゃあ帰ろうか。鎮火はアレな消防隊の人がすぐ来てくれるだろうし」
「ああ、そうだな」
「…真人の言う通り、あの子地獄には落ちてしまうだろうけど。いつかは幸せになって欲しいな」
「…ああ、神様も一部アレとはいえ鬼じゃないだろうし、分かってくれるだろ」
「…僕達相当長寿だろうから、いつか生まれ変われたあの子に会えると良いね」
「…そうだな。あのクソぶっ殺す以外にも長生きする理由が増えたな」
そうして、僕達は相当アレな強化処置が施された高級車に乗り込み、隊長達が待つ神社へと帰った。
その少し後、シロとクロが暮らす豪華な神社にて。
「あー?せっかく僕がアニメ見てんのにニュース速報とか邪魔すんなよクソが。こんなアレな国なんだし事件の一つや二つ後回しで良いだろうがよ。テレビ局にクレーム入れてやろうか」
「…シロ、そういう事言っちゃ駄目だよ」
「んで何だよクソウゼえな。ふーん、国内で相当やらかしてた犯罪者集団の本拠地が吹っ飛んで、死体丸焦げだけどボスや幹部たちもたぶん全員死んだんだ。壊滅させた奴らやるじゃん。まあどうでも良いけどー」
「…悪い人とはいえ人が大勢死んだのに、どうでも良いとか言っちゃ駄目だよ」
「でー、そのアレ組織名が天奇目で、ボスの奴の名前は天之真人か。ふーん、神から組織名取って来たのは若干中二だけどセンスは悪くないじゃん」
「…天奇目って、一つ目の神様の名前だっけ」
「あー、確かそうだね。クソな国産み出した神とかどうでも良いけど軍に入ってからは必修項目って事でこの国の神話とか覚え込まされたし。ほんと神なんか僕とクロだけで良いっての」
「…シロ。神様もそうだけど色々な人がいるから、辛い事もあるけどこの世界は楽しいんだよ。そういう事言わないで、もっと色々な人に興味を持って」
「えー?このクソな国に生まれた時点でもう詰んでるんだし好きな人だけ関わってれば良いじゃん。この世界も国民も大概クソなんだから付き合ったって大抵は裏切られるしさ、ほら僕振りやがった御名みたいに。あー今もう名前違うんだっけ。まあやっぱどうでも良いけどさ」
「…そっか」
「あ、でもクロは僕の事絶対裏切らないって分かってるから、宇宙一大好き!」
「…うん、ありがとう」
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