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しおりを挟む「・・・・・・・」
薫と叔父は腰をぬかしたまま床に座っていたが、すくっと立つと外行きようのコートを着て館に鍵をかけ、呆然としてその場から動かない薫を立たせた志津緒は、近くの古美術商の元に急いだ。
「何故だ。何故開いていない?あのやろう逃げやがったな・・・・」
叔父は怒ったようにシャッターを蹴った。
「あれ?あんた達そこに用があんの?」
振り返ると、ビビットな色の服を着た若い男が声をかけてきた。
「あぁ、それがどうした?」
「ここのオヤジなら、昨日会ったからいるんじゃないの?中に勝手に入れる場所があるんだ。付いて来なよ。」
若い男達はするするっと細い路地を抜け、青い屋根の下まで連れて行ってくれた。
「俺達ここでいつも働いてるんだ。今日は定休日だから開いてないんだよ。じゃぁな。」
ニコニコと笑って去って行く彼らを見送りながら、暗い店内を覗いて、言いようもない恐怖に薫の背中は震えた。
「おい!このやろう!!いるなら返事しやがれ!!」
そろりそろりとゆっくり暗闇に目が慣れてくるまで二人は歩いた。とその時、薫は足元のヌルヌルした感触に足を滑らした。
「わぁ!」
「おい、大丈夫か?」
叔父が薫を抱きかかえて覗き込む。
「え?あぁ、大丈夫です。でも何だろこれ・・油でもなさそうだし・・これ・・血だ・・どこからか流れてきてる?」
どろどろと流れてくる血の川に少し放心しながら、血の流れているバスルームに向かって二人は歩き出した。中からは女の子の声がする。
「どこだ?アタシの心臓はどこにある?さぁっ答えろ!アタシの心臓はどこにある!!」
バスルームにかかるカーテンを勢いよくめくると、ビクリと少女の肩が震えた。
そこには、先程薫が出会った少女の姿があった。
「君はさっきの・・・・」
呆然と少女を見る中で、志津緒は古美術商のオヤジに応急処置を施していた。
「次はおまえだ。覚悟しておけよ。」
少女の姿とは似つかわしくないドスの聞いた声でしゃべって夜の闇に消えた。
「おい。オヤジ!何なんだあの人形はっ、どこで手に入れたっ?」
叔父にガクガクと肩を揺すられているオヤジは、揺すられて今にも吐きそうな顔をしたがそれを必死に堪えて話した。
「あれはちゃんとした『人形』だよ・・・。購入ルートは話す事ができないが、一つだけ確認したい事がある・・・はぁ、はぁ、あんたあの『人形』の傍で誰か怪我をしなかったか?血の出る様な。」
「いや、そんなことは・・・・・」
「昔、姉上が階段上に『人形』を置く時に天井から下がってたフックに腕を引っかけて血を流して人形に付けた事が・・・そう、確かあの時は、血を拭こうとしてバスルームに行った時には、血の跡はなくて不思議に思ってたような・・・・気がする。」
薫は手をフヨフヨと空を探るように動かしながら、話した。それを聞いたオヤジはうなだれるようにがっくりと肩を落として言った。
「あの『人形』はある夫婦の元で作られた人形らしい。だが、ある事件を境に人形から核となる鉛の心臓を生きている人間の中に封じ、アレ自身を分厚いガラスの箱の中に閉じ込めて封印した。まさかとは思うが、アレのケースは分厚いガラスの箱だろ?」
「いや。そんなものには入ってなかったぞ?」
まさかな。というオヤジに対して志津緒は、あっさりと自信たっぷりに言い放った。
「最初に売り渡す時に言わなかったか?分厚いガラスの箱に入れろと言わなかったか?おい!あんた!一体何をするつもりなんだ!!」
全身血だらけにしながら、勢い良く立ち上がってオヤジは叫んだ。しかし、血が足
りないのかフラフラと倒れ込んだ。
「そんなことを言われてもな・・・」
志津緒は、すごく困った様につぶやいた。
「と、とにかく、救急車を呼びましょう。でないとこの人は死んでしまいますよ?って叔父上どこに行くんですか!」
「帰るんだよ。最近忙しくて寝れていないんだよ。この場は薫、お前に任せるよ。・・・のせいで台無しじゃないか。」
何か重要な誰かの名前を言ったような気がしたが聞き取れなかった。志津緒持っていたステッキを振り回しながら、店のシャッターを開けると誰の何が台無しなのか気難しい顔で帰っていった。
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