狂った家族の愛の形

RodMond

文字の大きさ
上 下
4 / 14

しおりを挟む

「はぁ・・・・」

あの後薫は、店主を救急隊に預けると歩いて屋敷に戻ってきた。近いとはいえ途中野犬が出ると噂されている叔父の家の庭を歩いて通り、所々に無惨に散らばった野犬の死骸を見て吐きながらたどり着き、今はバスルームで汗を流している。


カツンカツン


天井の高いホールに薫の足音が聞こえる。

「はぁ。何でこんな事になったんだろう?」

階段を上ったところの近くの部屋の扉が
ギィギィギィと不気味な音をたてて開いているのに彼は気づいた。

いつもは閉まっているはずの部屋の思い扉が開いていたので、不振に思って中に入った。

そこは何とも可愛らしい少女の部屋だった。が、誰かいる。

「ここは誰の部屋?」

天涯付きのベットの上に先程の少女が座っていた。

「君はさっきの・・・・」
「ここは誰の部屋?」
「え?あ?ここかい?僕の妹の部屋になるはずだったんだ。あの子は僕と同じ病気で死んでしまったけど。何故そんなことを?」

一歩一歩僕は彼女の元に進んだ。この時僕は彼女を怖いと思わなかったんだ。

「アタシが生まれた場所に少し似ているから・・・・」
「・・・・・・・・」

二人で黙ったままベットの上に座り込んだ。少しの間、何もしゃべらなかったが、ふと何かに気付いたのか少女は薫を押し倒した。

「何故・・・何故、お前がアタシの心臓を持っている!!」
「えぇっ??」

薫はびっくりした。店主によると彼女の核となる心臓は「鉛」で出来ているはずなのだ。

「そんなことを言われても・・・・・鉛の心臓でしょ・・・・?・・・ま、まさか!」

薫は少女から離れると隣にある自室へ駆け込んだ。
そして、部屋にある引き出しという引き出しを出してあさっていた。
その様子を不思議そうに少女が見守っていた。
手には気に入ったのか、部屋に置いてあった大きな熊のぬいぐるみを抱きかかえている。

「あれ、どこだっけ・・・ええっとこれじゃない・・・あー?」

薫は、とうとうベッド脇の本棚に入れられた透明の袋がいっぱいついた本のようなファイルを一冊一冊一枚一枚めくりながら、あーでもないこーでもないとブツブツ言いながらとうとう見つけた。

「あっ!あったぁぁ!!これだ。僕が七才の頃に受けた手術のレントゲン写真だ。確か、ある人の心臓を僕に移植した時に影が写ったんだ。」

薫は戸口に立って不思議そうに見ている少女に手招きすると、レントゲン写真を見せた。

「これ・・・君の心臓だろう?」

手荒く薫の手から写真を奪い取ると、体を震わせて笑った。

「あははははははははは。こんな、こんなところに・・・あははははは。そんな・・・」
「?」

よく分からなかった。彼女は、数分の間笑っていたが、苦しくなったのか肩で息をしながら震えていた。
ふと僕は、彼女に名前がない事に気がついた。

「ねぇ?君の名前は何?」
「アタシの名前?さぁ何だろう知らない。」

キョトンとした顔でこちらを向いた。そして、傍によると僕の体をぎゅっとつかんだ。
そして、何かを気にしながら言った。

「あの部屋にいてもいい?」
「そうだね。僕はいてもいいよ。叔父上は怒るかな。ただ、約束してね。もう人は傷つけないで?」

体にくっついている少女を見下ろして薫は言った。

「頑張る・・・・・」

そう言うと大きな熊のぬいぐるみをズルズルと引きずりながら隣の部屋に歩いて行った。
その姿は大きな熊のぬいぐるみで隠れて見えなかったが、嬉しそう少しだけスキップしているように見えた。

しかし、ぬいぐるみが重いのか遅いので、薫はぬいぐるみをひょいっと持つと少女と手をつないで部屋に入り、彼女がぬいぐるみを抱っこしてスヤスヤと眠る姿を眺めていた。

「名前か・・・・あの店主なら知っているかも知れないな。」
薫は、顎に手を持っていき思案顔で、頷くとスッとベットから遠ざかったときのこと

「ん・・・サト兄さま・・・・やめて・・・」

「サト兄?・・・・・誰?」

しおりを挟む

処理中です...