かみさまという名の神様

RodMond

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カミサマという名の神様 2

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カミサマが住んでいる山のお社は、本当に小さくて不思議な子供が住むにしては小さすぎる建物でした。
その建物にある晩のこと、カミサマのクラスメイトの男の子の父親が、酔っぱらって火をつけました。
その火はやがて炎にかわり、明け方には山全体を包んでしまいました。

「カミサマが!!」

男の子は叫びました。

「死んじゃうよ!!」

女の子が叫びました。

二人は両親が止めるのも聞かずに、燃え盛る炎の海に飛び込んでいきました。
二人は炎の海となった長い階段の上のお社を目指しました。
大人が頂上につけば息切れのする階段を勢いよく走ってあがっていきました。
二人の服の端は少し炎が燃え移って焦げていました。
二人は、ただ、ただ、住めるはずのないお社に住んでいる。というカミサマが心配でなりませんでした。

ようやく頂上についた頃には、二人の服のほとんどは焦げていてボロボロになっていました。
さやは言いました。
「どこにいるんだろう?」
ゆうは言いました。
「どこにもいないね。」

そう、お社はもうとっくに焼け落ちていて何もありませんでした。

「ここって、何だっけ?」
ゆうはいいました。
「何だっけ?」
さやは首をかしげました。

大人達が何か下の方で叫んでいます。

『そこは誰も入っちゃいけない土地だよ!!』

二人の住む山の隣の山に住むおばあさんが叫んでいました。
でもさやは思いました。

(入っちゃいけない土地に入ったのは僕のおとうさんだ!!)

ゆうも思いました。

(もう先に入った人には何も言わないの?)

その時でした。まばゆい光とともにお社があった場所から額から、あの不思議な子供と同じように、小さな角をはやした白い服を着た男の人と女の人が出てきました。

「あ・・・・」

さやとゆうはびっくりしました。

そこには、家で鎖に繋がれているはずのおにいちゃんと、いつも母親にムチでめった打ちにされているおねえちゃんにそっくりな二人が、あの不思議な小さな子供を抱いていたからです。


「小さな子達よ、袋を持って願いなさい。自分がなりたくてなれなかったものを。」
彼らはそう言うと消えてしまいました。

二人はカミサマにもらった小さな袋を取り出しました。

貰ったときには何も入っていなかった袋から小さな箱が出てきました。
その箱を開けた途端、今までずっと夢見てきたことが次々と飛び出してきました。


気がついた時にはさやとゆうは家の自分の寝床に横たわっていました。

(あれは夢だったのかな・・・・)

二人はそれぞれそう思いました。

しかし、彼らが寝床からゴソゴソと這い出てきて、鏡をみるとそこには、

長い髪を二つに結んでいた男の子は、すっきりとした髪型になり黒い服を着ていました。
坊主頭だった女の子は、ずっと憧れていた長い髪を一つに束ねて白い服を着ていました。

「わあぁ!!」

二人はびっくりしました。昨日のことは夢じゃなかったんだと思いました。
彼らは朝食をそこそこ食べて、急いで家を飛び出しました。

(お礼を言わなきゃ!!)

二人は途中で合流すると顔を見合わせて抱き合って喜びました。

「挨拶に行こう!!」
さやは言いました。
「行こう!!」
ゆうは言いました。

二人はもう名前も気にならないぐらい嬉しくて、名前は変わらなくていいやと思いました。

彼らは走りました。
途中いつも裸で寒風摩擦しているはずのおばあさんは、クワを持って畑仕事をしていました。
いつもクワを持って畑仕事をしているはずのおじいさんは、裸で寒風摩擦をしていました。

「何だか今日は違うね。」
「うん」
走りながらいつもとは違う風景を見ながら、あの不思議な子供のいるお社へ急ぎました。


お社がある山は、山火事で全部燃えているはずでした。
しかし、二人がたどりつくと何もなかったようにいつもの長い階段と頂上には霧がかかっていました。

「あれ?」
「あれれ?」

二人は首をかしげました。

「何で!?」

二人はそろって叫びました。すると、昨日叫んでいたおばあさんはなぜかおじいさんの格好をして木の陰から出てきました。

「おまいさん達何を願った。」

おじいさんはものすごく怒った様子で杖を振りかざしながら二人に聞いた。

二人はことのあらましを説明した。
二人はまだ小さいので、言葉を巧く使えなかったが、理解してもらえたようだった。

「はぁ。」

おじいさんはため息をついてどっこいしょ。と切り株に腰を下ろすとまたため息をついて話しだした。

「おまいさん達が、出会ったその小さな角の生えた子供は、たぶんこの上のお社の主だの。」
「ぬし?」
「そう主。わしゃが小さい頃に友が出会うたことのあるぬしだの。その時はおまいさん達がもういやだと思った前の姿が、かの友が願った姿やっての。それからはずっと、わしゃ女としてすごしょっただい。」

はぁ。とため息を吐きつつ懐からタバコを取り出すと火をつけた。

「でも、主が現れたっつことは、願い時だったんだの。」
おじいさんは少し嬉しそうに煙を吐いた。
「さて、学校に行ってこい?そろそろ時間だの?」

「わぁ!!ゆう!!行こう!!」
「うん!!」

二人はおじいさんの指した腕時計の針を見て慌ててカバンをからうと大急ぎで学校の方へと向かった。

その日、あの小さくて不思議で、小さな角を額から生やした子供は現れなかった。
二人は先生にその子のことを聞いたが、覚えていなかった。
二人は開いている席をじっと見ながら、一生懸命両手で数を数えているあの不思議な子供を考えていた。

「あの子名前なんだっけ?」
さやは言った頭をかきながら。
「名前なんだっけ??」
ゆうは長い髪をクリクリ弄りながら言った。

二人は考えても考えても”カミサマ”という言葉しか出てこなかった。

「校長先生に聞こう。」

さやは言った。すくりとさやは立つとゆうの手を引いて校長室に急いだ。

「先生?”カミサマ”って何?」

「”カミサマ”?よく知っているねそんな昔の言葉。」

校長先生はクルリと丸いイスをまわしながらこちらを向いて言った。
「古い言葉??」

二人はきょとんとした。
確かにあの不思議な子供は自分を”カミサマ”と呼んだ。でも、それが名前だと信じて疑わなかったから、意味がよく分からなかった。

「カミサマってのはな、信仰すべきものだったんだよ。昔はね。でも今は信仰する物もないし、古い言葉はいらなくなったんだ。君らそれどこで聞いたんだい?禁止されている言葉だろう?」

少し校長先生の目の奥がこわばっていた。何か異端な物を見るような目をした。
何となく先生の態度が怖くなったゆうは、さやの腕を引くと逃げるようにその場を去り、
入っちゃいけないと言われた山の頂上まであがった。

「このことは二人の秘密だね。」
ゆうはしょんぼりしながら言った。
「うん。カミサマには会えないのかな。もう。」
さやは足下の小石を蹴りながら言った。


二人は手をつなぐとお社があった場所に生えている大きな木の下にちょこんと座った。
そして、さわさわと風で揺れ動く枝を見上げながら、そっと目をつむった。

(僕達が忘れなければいいんだ。カミサマ、ありがとう。)





白い服を着て長い髪を一つに束ねた女の人と、黒い服を着てタバコを吹かしている男の人の間で、赤い服をきて長い髪を二つに結んだ女の子が聞きました。
「ねぇママ。神様に会ったことある?」
「そうねぇ・・・・一度だけ。小さな不思議な子供に。」
「パパは?」
「そうだねぇ・・・・一度だけ。小さな角を額から生やした子供に。」
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