勇者の拳士様

星村直樹

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幕間 遥の場合

遥は、お姫様に転生

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 ・・・・・、・・・、・・。暗い

「生まれましたよ。元気な女の子です」

「ああ、私のハウルカ」

 ・・・、ハウルカ? 神様、ちゃんと私の名前を今度のお母さんに伝えてくれたのかな

「おお、マーガレットよ。でかした」
「あなた、ハウルカよ」
「あ、うー」
 なんか、お父さんに手を伸ばしたくなる。
「ハウルカ、父だぞ。口元は、我そっくりだな」
「目元は、わたくしです」

 お父さんが人差し指を私の手の平に置いた。私は、反射的にその指をキュッと握った。これって赤ちゃんの習性?

「おっおっ、我の指を握ったぞ。これは将来が楽しみだ。わははははは、スチュワード。祝賀の準備だ」

「はっ、陛下」

 それにしても、あの時のユウの驚いたかおったら無いわ。

「おい、笑ったぞ」
「ええ、あなた」
「天子の笑顔じゃないか」

 それに病室で、泣いて謝って、好きだって告白してくれた。嬉しかったな

「あ、ぶー」

「お、おっ。また笑った」
「ハウルカ様は、イスタル様の天使でいらっしゃる」
「アルフレッド世辞はよせ。貴様には、王国歴230年産のワインをやろう」
「ありがたき」

 私が、ずっと笑っているものだから、次から次へと、重鎮、家臣、将軍が、入れ代わり立ち代わり、私を褒める。お父様は、秘蔵のワインを散財することになってしまった。

 私は、生まれたばかりなのに、みんなからエンジェルスマイルという二つ名を貰った。



 私がまだ1歳の時、2階から落ちるという大事件を起こしてしまった。下に、庭師が、丹精込めて育てた分厚い芝草があったとしても、命に係わる事故。私は、その日も、ユウの事を考えて機嫌が良かった。しかし、いくら何でも二階から落っこちたのは怖かった。

「あーーー、ぎゃーーーー」

 ものすごい声で鳴いた。この時の担当メイドは、死罪になる。でも、私は、かすり傷一つ負っていなかった。お母様は、私に神の加護があるのを生まれた時から感じていたので、罪を一身に背負うことで、その時の担当メイドを助けた。メイドは、私に将来付き添わせようと子供から選んでいた。その時のメイドは、メイドを辞め。騎士の修行を始めたそうだ。彼女は、いざとなったら、命に代えて私を守ると、お妃であるお母様に誓った。


 三歳の時、宮廷魔術師のローレンス・ビショップが、私の神力を確かめにやって来た。王家の後継者は、男だろうと女だろうと、三歳の時に神力、五歳の時に剣の資質、七歳の時に民を統べる資質を問われる。

 七五三みたいなものかな?

 ローレンスは、お父様に、「自分では測り切れませんでした」と、謝っていた。計り切れないとは巨大な魔力量を秘めているということ。これを聞いたお父様が、上機嫌になり、久々に、秘蔵ワイン放出が、さく裂した。


 私が一歳の時に二階から落っこちた時のメイドは、まだ、剣士修行中。だけど、お母様の計らいで、側使えに戻っていた。

「ハウルカ様、今日もご機嫌ですね」

「そうかな?マリアがいてくれるからよ」

「また、下々のお言葉をお使いになるのですね。誰が教えたのかしら。不思議です」

 直そうと思うんだけど、17年も使っていたから。・・それに三歳なんて、こんなものよ

 宮廷の人達は、私の機嫌の良い顔を見て癒されているようで、ちょくちょく私を遠巻きにして、覗きに来る。

 私は、遠巻きにされるのは好きじゃない。
 生まれが高貴すぎるのよねー。

 遊び相手がいない。五歳になったら、剣を習いだすから、マリアを鍛えよう。

 王族の親戚に、バッハ公爵家というのがあって、そこの嫡子が私と同じ年。神力もそこそこあるので、私の遊び相手に序せられた。私はショタではないけれど、ナシリスが、あまりに引っ込み思案なので、声を掛けて仲良くすることにした。

「あなた、お名前は?」
「ナシリス」
「綺麗な金髪ね」
 そう言って髪を触ると真っ赤な顔。ちょっと萌が来たかもと思った。ナシリスの名前は、ナシリス・ホン・アウグスト・バッハ。この子にも剛毅琉(ごうきりゅう)を仕込む予定。ユウが輝玉流(きぎょくりゅう)を広めていたら、対抗するためだ。私はまだ、ユウに一度も負けたことが無いが、16年の差は大きい。

 勝負事は、恋愛と別
 これが、私のポリシーだ。


 そして、五歳の春。私は、初めて剣を握らせてもらった。

 普通、剣の指南役というと、私の近衛隊隊長の役割なのだが、剣の力量が図れるとされる王家の真剣を私が手にしたところ、ものすごく光っちゃって、それで、興味を持った、サンダー将軍が、事あるごとに王宮に訪ねてきて、私の指南をした。

 サンダー将軍は、私が女の子で5歳だというのを無視してくれちゃって、お母様がハラハラするぐらいの指南をする。

 まだ、剛毅琉は、使わないけど。なんかやり返したい。そこで、私の体をたたいてこないことをいいことに、剣に、宮廷魔術師のローレンスから教わった、プロテクトを掛けた。防御魔法だから、掛けた瞬間ちょっと剣圧が膨らむのよね。
 私は、その日、いつもの下段に構えて逃げ待つのを止めて、上段に構えて、サンダーと対峙した。

「姫様、今日は、いつもみたいに逃げ回らないのですか」

「サンダー覚悟しなさい。5歳の女の子にひどすぎるわ」

 側使えのマリアがハラハラしている。ナシリスも、物陰からこっそり覗いているし、お母様も二階から見ている。お母さまは、いざとなったら、扇子で自分の顔を隠す気だ。

 サンダーは、いつもの通り私の剣をたたき落として終わりにするつもり。今日は、そうさせないんだから。

 私は、プロテクトのイメージを居合に乗せることにした。打ち合った時にコツッと押して居合する。その瞬間プロテクトを乗せる。そうすれば、体格差や力差なんて関係ない。相手を切るわけじゃないけど、すっ飛ばす技に代わるはずよ。

「では、いざ」

「やー」

 コッ、ドバン

 ドオン

 子供の剣げきに合わせて、剣を落とす。姫の手がしびれないように、一瞬だけ力を入れる。そこに、信じられない合わせ技がさく裂した。サンダー将軍は、奥の壁にぶち当たって意識を失いそうになった。

「キャー、サンダー」
 自分でやっといて、自分で驚く。剣に魔法を乗せるのって危ない。

 慌てて駆け寄った。

 サンダーは、手を前に出して、近寄らなくていいというポーズをとった。

「大丈夫です。驚いただけです」

 そう言うが、後頭部から血が滴っている。気絶しなかったのが不思議なぐらい。五歳だと侮っていなかったら、こうは、ならなかっただろう。

「わしが受け身を取れないぐらい高速で吹き飛ばされましたぞ。いったいどうされた」

「剣にプロテクトを乗せただけよ。痛かった?」

「姫は、お優しい。これが敵であったら、とどめを刺しなされ」

 サンダーに頭を撫でられた。

 この後、宮廷内は、大騒ぎになったのだが、お父様の理不尽な機嫌の良さったらなかったわ。サンダー将軍は、夕食と、その後のワイン蔵へと。お父様から、大歓待を受けた。


 私は、この日から、剣と魔法と勉強の英才教育を受けるようになった。剣の稽古は楽しいけど、後は、調子に乗るんじゃなかったと反省した。

 うう・・休みがほしい

 それでも、ユウの思い出があれば乗り越えられる。こんな状態でも、周りから見れば、私は、機嫌のよいお姫様に見えた。それに息抜きもできる。唯一の味方のお母さまは、必ず茶に誘ってくれた。そこで、ナシリスと遊んだし、マリアと剣術の稽古もした。ナシリスと遊んでいる時私は、将来保母になれると確信した。それに私は、剛毅琉(ごうきりゅう)剣術の免許皆伝者だ。マリアに教えていて、師範を継げただろうなと思った。
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