勇者の拳士様

星村直樹

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冒険者学校編

ギガントアームと千手羅漢拳

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 冒険者学校コロシアム

 今日の合成魔法補習は、魔法学部長ジョナサン先生の魔法学会での公演が急きょ決まった為、お休みになった。

「ハアーーーーー」

 おれは、新しい技を練習することにした。バザールの長(おさ)兼ムーマ大陸のギルドの中のダークエルフの森のギルド長補佐のシンさんから、海獣だの恐竜だの、巨大生物の話を聞かされたので、それ対策だ。

 いつものようにギャラリーが来たが、おれ一人で、太極拳の様なゆっくりした動きを永遠とやっているのを見て、今日は、合成魔法の訓練がないんだとみんないなくなってしまった。残ったのは、リリーと、一番仲が良い同級生のレミー、ブライアン、ダニエルだけ。4人は、おれの練習を見ながらバザールの屋台に行こうという話をしていた。

 ちょっと、みんなを脅してやるか

「ダニエル、練習に付き合ってくれよ」

「いいけど、さっきから何やってんだ」

「風魔法の練習だよ。ダニエルを浮かせて見せる」

「面白い。おれ、結構重いぞ。それ、中級魔法じゃないのか」

「町中で、荷物をふわふわさせている人を見かけるだろ。あんなのを人でやりたくないか」

「思う思う。いいぞ、実験台になってやる」

「まずは、風圧やるからな。ハーーーーーー」

 実は、正拳突きを超スロウーでやっている。つまり、巨人の腕の再現だ。巨大生物に対して、普通に高威力のパンチを当てても、ピストルの弾が当たったようなことになって、小範囲で怪我をするだけ。それでは、殴り倒せない。拳を当てた瞬間、拳圧をあげて、衝撃範囲を広げるのもいいが、せっかく風魔法を覚えたので、その応用だ。

 フーーーーン「おりゃ」

 ボクサースタイルから、超ゆっくりの正拳突きを出す。風が見えるリリーには、巨大な正拳が、ずずずずずずっと伸びているように見えたことだろう。

「なんだこりゃ。後ろに押されるぞ。わーーー」

 ダニエルは、風の壁に、ずずずずずずっと押されて、コロシアムの壁まで押されてしまった。

「何やっているのよ。風圧ぐらい耐えなさいよ」

「これ風圧じゃないぞ。壁だったぞーー」

「そうなのか!ユウ、ぼくにもやってくれよ」
「私も体験したい」

 今度は3人並んだ。正拳なので、横並び3人ぐらい余裕だ。

「行くぞ」 フーーーーン「おりゃ」

「く、くそっ。やっぱり押される」
「何これ、面白い」
「これは、風の障壁じゃないか。上級者になると、これを足場して空にジャンプするんだろ」

「ブライアンは、分析力があるな。ちょっと違うけど正解!」

「ちょっと違うってなんだよ」

「次を体験したら分かるよ。じゃあ、次は、ブライアンが練習台になってくれ」

「いいよ」

「ハアーーーーーー、ふん!」

 ブライアンは、大きな風の手に握られて宙に浮きだした。

「すまん、高く掲げさせてくれ。リーチを確かめたい」

「お、おい。聞いてないぞ。降ろしてくれ」

 結局ブライアンを10メートルぐらい上空に持ち上げた。オレのギガントアームは、5階建てのビルぐらいのリーチがあるということだ。殴るだけなら、昇竜波と合わせればもっと行くと思う。

「もういいだろ。これは、風の障壁を手の形にしたものだろ」

「正解!」

 つまり、この、ギガントアームで、超巨体な敵をぶん殴ろうという話だ。水の中なら、これを水属性に変えるだけ。ただ、水中では、息をするために、ウインドシェルも同時に自分の周りに発生させないといけないから、2属性の魔法を同時に出来ないといけないので、難易度は水中の方が上。ここは、リリーと連携したいところだ。

「おれみたいに大きなものは無理だと思うけど、みんなもできると思うよ」

「そうだけど、おれたち適性属性じゃないからな」
「リリーやって見せて」

「私ですか!じゃあ、レミーさん、練習相手になってください」

「いいわよ」

 フーーーン「はい!」

「あっ、持ち上がった」

「これ、重いです」

「失礼ね」

「だって、私がレミーさんをぎゅっとやって持ち上げたのと一緒ですよ」

「じゃあそうか」
「ユウは、化け物だからな」

「酷いな」

「それで何の練習だ?」

「だから、荷物を持ち上げる練習だよ。出力を落とせば、手の大きさになって、荷物が運べるだろ」

「すごい魔法の練習なんだろうけど、なんなんだろうな」
「普通に、ホバーを使えないいんじゃないの。私、3つまでできるようになったよ」
「この魔法は、ホバーと違って重いものを持ち上げられるということだろ。がけ崩れの岩をどかすのにいいんじゃないか。本人の魔力によるだろうけど、ユウなら相当重いものまでいけそうだ」

「ブライアンが言うように、重いものが持てるよう練習するよ」

「脳筋ね」
「脳筋だな」
「それじゃあ脳筋だよ」

「ダニエルにだけは、言われたくない」
 でも、みんな正解。おれ、本職は、拳士だから。

 ちょっと思いついて、エアー千手羅漢拳をやろうと、風障壁の手をいっぱい出していたら、リリーの目が丸くなったので、途中で止めた。人間大の敵をボッコボコにするのに良さそうな技なので、後で、こっそり練習しようと思う。


 おれと違って実際は、みんな、魔法を使う時は、魔法詠唱で、魔法を発動している。脳筋魔法だと無詠唱でも、そんなに気にしないんだなと思った。まあ、あれだけゆっくりだったから、呟いていると思われたんだろうが。魔法詠唱すると、魔法陣が形成される。みんなこの魔法陣が見えないから、おれが何しているか分からないのだ。無属性だと、この魔法陣に干渉できる。魔法陣に手を突っ込むのもいいかなと思った。手のひら大だと、相当腕を長く伸ばせそうだ。無属性魔法は、リリーにも見えないので試すことにした。

 これは、自分のオーラを伸ばすような感じになる。

「ふん」

 おれの無属性の腕は、余裕で、コロシアムの観客席後方まで伸びた。席をつかめるし。この方が、万能だが、空気中だと、風属性の方か相性がいいので出力が上がる。やっぱり魔法は面白い。

「みんな、バザールで飯を食うか?」

「行きたい」
「その話をみんなで、していた所だよ」
「腹一杯食っても銅貨5枚なんだろ」

「皆さん服装は、庶民の軽い感じにして下さい」

「分かってる。そう言えば、明日は、5軒、謝って回るんでしょ」
「お嬢たちの親にお土産を持って行けよ」
「ユウが巻き込まれた方なのにな」

 そうなのだ。この間バザールに来た通いの女子たちの親が、娘たちが下品な所に行ったとカンカンなのだ。バザールのシンさんにそのことを相談すると、まだ試作品なのけど、お土産にしなさいと、ワインを5本用意してくれた。サザン王国でワインは、お酒のルビーと言われている高価なものだ。これをバザールの人が作り始めましたと渡せば、お嬢さんたちの親が、バザールに興味を持ってくれるだろうと言っていた。昨年は120本しか作れなかったが、今年は、300本作ると言っていた。それにしても、貴重なワインをありがとうと、バザールのメンバーに頭を下げた

「分かってる。お土産を用意していくよ。みんなは、バザールに行っていいのか」

「実家は遠いしね」
「この間の弁当旨かった」
「港のバザールだろ。ぼくは普通に通いたいよ」

「では、行きましょう」

 リリーを先頭に、バザールに向かう。今日もバザールで夕飯になった。


 いろいろ問題も起こるが、26歳にして、学校生活も悪く思い始めていた。しかし、それは、いきなり幕を閉じることになった。
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