勇者の拳士様

星村直樹

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遥救出編

決戦

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 シップウは、空気の層を偏光ガラスのようにして、見張り台に気づかれないよう砂浜に降り立った。しばらく前に、ここに来たばかりなので、サザンの国民に気を使ったのだ。

「リリー行くぞ」

「なんなんですか夜中に。ゲーーー、ご主人様が二人」

― 何をしておる。早く乗らんか


 シップウに乗って上空に上がると、北の空が明るい。リリーがそれを見て指さした。

「なんですか。あれ?」

― 光蟲(ひかりむし)や光クラゲの集合体じゃな。光柱と言う。光属性の弱い眷属たちで作った盾じゃ。酷いことをする。あれは、我を弱体化させる対策だ。あの範囲の光柱をドラゴンブレスで撃退したら、我の力が弱まる。その後、現れるモンスターは、強力な奴ばかりだということだ

「ご主人様の、ドラゴンブレスで倒れないんですか」

― そのための光柱だろ。あれは、狂騒状態にならないと起きん現象だ。眷属を消耗品のように使いおって。このまま放っておくと森を食いつぶされるから、全体攻撃するしかないが、殲滅はしない。少し光注を残して吹き飛ばす。後を任せてい良いか

「何体残りそうだ」

― 百と言ったところか。天使族(有翼族)が大半じゃが、雷族や光魔獣も少し残るだろう。そ奴らは、強力だぞ

「飛べる奴からやるか?。風障壁が使えるようになったんだ。空を走れる」

― 彼らを狂騒状態にした魔物がいるはずだ。その魔物からだ。他の魔物の攪乱と引きはがしは任せろ。狂乱は、術以上に脳を活性化させると克服できる

「加速すればいいってことだな」

「ご主人様、わたしは?」

「リリーは、風竜の背中に乗ってろ」

― リリー、天使の光属性攻撃の対策は、さっきわしが見せた偏光だ。それを実践で演習しておれ

「うーー、怖い」

「リリーならやれるさ。聖獣様を守ってくれるんだろ」

 リリーは、ほめて伸ばすタイプ。

― 練習じゃ

「頑張ります」

 ガオーーーーン 〈では行く〉


 光柱は、オーロラの様に夜を虹色に光りながら1.2Km四方にわたって揺らめいている。これが、全部ロトの眷属とは思えない。サザンの生き物も混ざっているだろう。これらに狂騒を掛けている魔物がいるのだ。

 我が領内の住人には悪いが、殲滅だ。

 コーーーーーーーー
 ゴギャガゴオーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 風竜のドラゴンブレスは広範囲攻撃。ものすごい勢いで、光柱の中にいる光蟲や浮遊クラゲたちが駆逐されていく。そして光っていない、狂騒に巻き込まれた動物や虫たちも。シップウは、怒りを覚えながら力を出し尽くした。

「風竜、もういい、十分だ。少しは虫たちを残して吹き飛ばすんだろ。後は、狂騒を起こしている魔物を退治すれば、飛散するさ」

― すまん

「見て、でっかいカメレオン」

― ラーレルトカメレオンだ。背中のヒレが虹色に光っているだろ。光属性のバットステータスは、狂騒、混乱だ。あのヒレをはぎ取るか、ラーレルトを倒さない限り、周りの生物が巻き込まれていく

「風竜、真上まで行ってくれ」

― まだ少し力が残っているが逃げ回ることにする。出来るだけ早く戻ってこい

「ユウ様、やっちゃえ」

「おう!」

 ラーレルトカメレオンは、防御の雑魚たちがいなくなって、より一層背中のヒレを立てて、強力な酩酊を起こすオーロラを出し続けていた。このチカチカする光を見ると前後不覚に陥って、狂乱状態になっていく。それが、集団化して狂騒に。ラーレルトカメレオンは、これら狂乱状態に陥った虫や浮遊クラゲに、こっちに来ると美味しいものがあるよと声をあげる。

 パーンパー、パーンパー、パーンパー、パーンパー、パーンパー。

 ユウは、このチカチカするオーロラの光の中で、加速した。ただシップウから落下しただけでなく。この加速の中で、風障壁を足元に張って、それを蹴って加速した。そして、風のギガントアーム。巨人族の拳がラーレルトカメレオンの脳天に炸裂。そのまま、地面にめり込ませた。

「身体活性、加速」フーーーワッ「ギガントアーム」

「お前、迷惑なんだよ」

 ドゴン
 しかし、ギガントアームは、まだ練習し始めたばかりの技。ラーレルトカメレオンを地面に押し付けて動けなくしただけだった。ユウは、そのまま、ラーレルトカメレオンの頭部に降り立って、振動系の拳をふるった。

「グランドインパクト」

 ドッ、ミシミシ。ボガン

 ラーレルトカメレオンの頭部は、ヒビを伴って割れた。それなのに、ヒレは、虹色の光を発し続ける。

 ユウは、手刀に光刃をまとって、その効果範囲を広げた。

「ヒレを落としてやる」

 たたたた、たたっと、ラーレルトカメレオンの背中を駆け上がり、ヒレを切り取っていく。

 ばぎっ、ぼぎゃ、どぎゃ

 ヒレには固い骨が付いており、スパッと切れるものではない。しかし、ユウの光刃は、それを無視するかのように切り裂いていく。

 ラーレルトカメレオンは、頭部の骨を砕かれたが、脳が無事だったため、気絶したまま、オーロラレインボウを光らせ続けている。しかし、脳内に大量の出血。絶命は、時間の問題だった。 

 上空では、天使軍団に囲まれたシップウが、集団攻撃をさせないように、天使軍団長にフェイントを掛け、偶々生き残った雑魚のアークエンジェル〈戦士天使〉を盾に、逃げ回っていた。

「ご主人様。あの赤い天使は、ヒエラルキーでは?」

― そうだが、その上位種だ。12宮天使か。あれは、サジタリウスだな。ニードルライトという、強力で細い、赤いレーザーを撃ってくるぞ。偏光版が貫かれる。空気レンズで方向をずらせ

「やってみます」

 サジタリウスから、ビーーーーと、収束された赤イレイザー光が、尾を引くように放たれた。

「玉風」

 空気レンズでは、敵の攻撃を大きく偏向できない。風竜のすぐ側に赤い光の光跡を見ることが出来た。

「ご主人様ごめんなさい。近すぎますよね」

― いや、よくやった。今の感じだ。弱い敵の攻撃は、偏光板でいいからな

「はい!」

 しかし、これぐらいのことで、のんびりしていられない。下から、パワーズ〈武闘派天使〉が、近接戦闘をしようと迫ってくる。
 上空にサジタリウス。下方からパワーズ。
 ここで、地上からのオーロラの光が、突然消えた。体が光っているのは、光属性の敵だけ。シップウは、この闇に紛れた。

 敵の天使たちの目が、月夜に慣れたころ、シップウは、サジタリウスより上空を飛翔していた。なぜなら、地上から、弾丸のような人間が飛び出していたからだ。シップウに気を取られていたパワーズの一人が、この弾丸に撃ち抜かれた。

「ユウ様!」
― よし、一匹

 今度は、12宮天使のサジタリウスが、ユウとシップウに囲まれる形になった。こうなったサジタリウスが向かう先の敵は、パワーズと挟み撃ちにしているユウだ。サジタリウスもパワーズも近接戦闘好きだ。一挙に距離を詰めてきた。

― ユウよ。大きな風障壁の足場を作れ。敵は、おぬしが飛べないとみて、バカにして、自分から攻撃を仕掛けて来るぞ。何より下方からの敵を牽制できる

「いいね」

 ユウは、ダンと、空中を足で蹴って、舞台のような風障壁を張った。下から攻めて来ていたパワーズは、この障壁に、激突した。

 シップウとリリーは、このままユウの戦いを見ていたいが、そうはいかない。左右からヒエラルキー〈精霊天使〉とプリンシパリティ〈顕現天使〉が迫って来ている。ヒエラルキーは、癒しが得意なのだが、その分、体が丈夫で、ロッドで殴ってくる。プリンシパリティは、ホーリーエンジェル〈魔法使い〉の上位天使。聖なる光の柱を立てて来る。

― リリー、右方から来ているプリンシパリティは、ホーリーを撃ってくるぞ。あれは当たるとわしでも傷つく。だが、反射できないことはない。やってみろ。そう言うわけで、ヒエラルキーに突っ込む

「どういうわけですか!!!」

― 反射だ

 プリンシパリティが、ホーリーを撃ってきた
「ホーリー!」

「もう、当たっても知りませんよ『鏡風』!」

 ホーリーは、上空から降ってくる光。リリーは、これをシップウが向かっているヒエラルキーに反射した。

 ぼぼぼぼぼぼぼ、ぼぼっ

「きーん」
「ふぁーん」

 2体のヒエラルキーが地上に落ちていく。

― やったなリリー、お手柄だ
「私が、2体も!」

 リリーは、ほめて伸ばすタイプ。


 風障壁の舞台の上では、ユウが、四方をパワーズに囲まれていた。天頂にサジタリウス。完全に囲まれた状態だ。

「我らが天使長を傷つけた罪。死んで償え」
「そうだ」
「しね」

「お前ら、意思を持っているのか。今回のことは、ロトのわがままだぞ。そんな奴の言うことを聴くんじゃない」

「黙れ」

 パワーズが、一挙に襲い掛かってきた。だが、この囲みは、地上戦闘と変わらない。

 ドガッ、バギッ、ズガッ

「すまん待たせた」

 ガツッ

 おれは、一度に3体倒すことが出来る。つまり、一体、かわさないといけない。

「なぜ、天使を殴っただけで倒せる」

「そんなの、気合に決まっているだろ。お前は、来ないのか」

「馬鹿め、パワーズは、ドミニオンズ〈天使軍団長〉の下ぞ。全軍、ドラゴンブレスに耐えたわ。人がパワーズと同じタイプとは珍しい。どれぐらい耐えられるか見てやろう」

「うーん、32。少なくないか。普通1〇〇だろ。いいけど」

「行けっ」

 ドガ、バギ、ズガ

 いいね。本当に向こうから向かってきてくれる。手間が省けるってもんだ

「何をしている。力試しではないぞ。一挙に畳み込め」

 ズガッ、ガガガガッ、ガガガガガガガガガガガ

「はーーーっ」
 剛気功をためる間を貰ってしまった。
「おれを休まさなくていいんだぜ。お前ら、おれの強さが分かるだろ。でも隙がないわけじゃない」

「そうだ。一度に5体で行け」

 バカなのか6体に遠距離攻撃だろ。こっちの方が好きだけど

 ガガガガガガガガガガガガガガ、ダン

 おれは、一挙にパワーズを倒し、サジタリウスの目と鼻の先に舞い上がった。

「お前だけになったぞ」
 
 ヒュー  スカッ

 今頃遠距離支援?

「武器は、使わないのか?」

「使っただろ」

 おれは、レッドニードルを食らっていた。光のスピードのニードルだ。さっきの支援が効いていたということだ。

「もしかして今のがお前最大の攻撃か?さっきのパワーズの方が手ごたえあったぞ」

 ガツッ

 おれは、今回の上位天使軍団長である12宮天使、サジタリウスの顔をつかんだ。

「は、放せ。ニードル、ニードル、ニードル、ニードル」

「まいったな。お前バカだろ。風障壁をあの範囲で張れるんだ。そんなの、おれに通るわけないだろ」

「なにを言っている属性が・・はっ」

「これでいいか。だいたい、おれは、ライトソードを体から出せるんだぜ。光属性が通るわけないだろ」

「や、止めろ、化け物」

 おれは五指に光属性の気を高めた。

 ボギャギャ

「綺麗な顔をすまん。でも、その方が、男らしいぞ。お前は、戦闘狂らしい。上にも逆らうタイプだ。そういうのを、なんか漫画で読んだことがある。助けてやろう。だから、戦線から離脱しな」

 ボギ、ボギ、ボギッ。ズガッ

「羽と左足を残してやる。‥‥、ありゃ、普通これぐらいじゃあ気絶しないぞ」

 ポイッとサジタリウスを捨てて、魔法系の天使を潰しに向かった。戦闘系と同じ数の天使がいる。思った通り逃げ回るので、骨が折れる。


「いたっ」
― 馬鹿もん、それはユウの風障壁の足後じゃ。すり抜けんでどうする

「でも、こんなにいっぱい」

― 逃げ惑うヒエラルキーとプリンシパリティを追い詰めるためじゃ。ユウの足跡をよく見ろ。迷路になっておろうが

「本当です、目が回ります」

― まいった。ユウ、我は、外から天使たちを追い込む

「了解!」


 実際は、昇竜波やソニック攻撃をすれば、すく倒せるけど、初めて魔物との実践だもんな。やっぱ拳だろ。

 最後に追い詰めたドミニオンが、変な命乞いをしてきた。

「我は、神の使いぞ。そ、それを罰当たりな」

「あのなあ、おれの故郷の神さんは、みんな元は人間だったんだよ。言っていいる意味わかるか。おれが、神の使いを倒せないわけないだろ」

 ボガッ

「さて、何だったっけ。ハーーーーーーーー『パオ』!」

 すべての風障壁が消えた。これは、シップウから教えてもらった消去魔法。それにしても、もっと、冒険者学校で学びたかったと思う。

 おれは、空気を蹴りながら地上に降りた。天使75体。カメレオン1体を倒した。それでも、まだまだ地上は、巨大な化け物や魔獣軍団で、埋め尽くされていた。
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