勇者の拳士様

星村直樹

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遥救出編

ユウ、転移者だとカミングアウトした

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 今日は、今朝から昼まで、バザールのギルド長の所に居て、自分の事情を話した。おれは、転生して勇者になる幼馴染に巻き込まれて、この世界に転移させられた。おれを転移した奴は、光の聖獣ロト。10年前に、本当に着の身着のままで、この世界に放り出された。おれは、ロトに囲われている幼馴染の遥を救出して、ムーマ大陸に行きたいと話した。

 シンさんは、「そうですか」と、言って、ムーマ大陸のギルドカードの説明をしてくれた。このギルドカードは、銀行のキャッシュカードと同じ役割をする。ムーマ大陸のどのギルドに行っても、ここに振り込んでいるお金を降ろすことが出来る。このカードが盗まれても、本人でないと使えない。しかし、再発行にはお金がかかる。そのお金分だけは、身につけておくようにと言われた。

「ギルドカードの再発行料は、金貨1枚です。靴の下でにでも入れておきなさい。それから、ユウさんに、仕事を発注しましょう。ユウさんの家には、大量の、砂粒のような魔石がありますね。あれ自体は、価値があるものではありません。ところが、リリーのような大妖精は、その砂粒のような魔石を1つの大きな魔石にすることが出来ます」

「リリーと初めて話した時見ました」

「大粒の魔石は、とても価値があります。水の国では、青い砂粒の魔石の値段が信じられないぐらい高価になります。なんせ、それを大粒の魔石に出来るのですから。ですから、かく国に行ったとき、その国の属性魔石をギルドに届けてほしいのです。元々ユウさんが持っている砂粒の魔石は、ユウさんが、私の娘から買ったものです。代金は、自分のものにしなさい。それが報酬です。それでも、売った先のギルドは、それ以上に潤います。どうです、引き受けてくれますか」

「ありがとうございます。助かります」

「では、バックを進呈します。これは、我が工房の作品です。丈夫ですよ」

 シンさんの親切が、身に染みる。

「ありがとうございます。大切にします」

「遥さんとお幸せに。気球の旅が成功したら、教えますね。また戻って来なさい」

 おれは、何度も頭を下げて、皮なめし工房を後にした。

 昼をバザールで取って、午後は王宮。ここで、バザールのギルドが経営している農場ででバイトをしているリリーと合流。いつものオークのトンテキ屋で、お昼となった。

「おら、大盛りだ。この味、忘れるんじゃねえぞ」

「向うだと、何処に姉妹店があるんだ」

「そんなもんねえよ。いや、あるか。ミュラン魔王国の西に行ってみな。おれの故郷がある。なに食ってもうまいぞ。ハイランドは、どこかって聞いてみろ。みんな教えてくれるから」

「いいね、そうするよ」

「あっ、ご主人様ずるい。一人だけで食べて」

「ごめんごめん」
「いやいや、何言ってる、もう出来ているぞ。そい、食えや」

「わーい、ありがとう。じゃあ、午後からは、豚さんを元気にするね」

「ぶひっ、頼んだぞ」

  バザールの美味いご飯を食べられるのも後わずか。

 ホント、旨いよな


 午後は、王宮に行って今後の打ち合わせをする。そこで、自分の事情を話そうと思う。


 ムーマ大陸の情報をサザン王国に送るには、やはり、セイドン王国の商船に手紙を乗せるしかない。セイドン王国の商船は、主に、海洋王国であるハフマンド王国との往復をする。ここまで、ムーマ大陸のギルドに頼んで手紙を届けてもらう。そこで、商船護衛をしているサザン王国のギルドメンバーに手紙を渡す。おれは、ムーマ大陸のギルドメンバーなので、ハフマンド王国のギルドに手紙を送るのは問題ない。それを個人の人が取りに来るのも問題ない。渡航先の港町で、これらのことをやればいいと打ち合わせした。その、受け渡しをしてくれる人物への手紙も預かった。

 打ち合わせが終わり、メアリー姫に誘われて、お茶になった。ここで、自分の話をした。転生して勇者になる幼馴染に巻き込まれて、この世界に転移させられたことを告白した。幼馴染の状況を聞いたメアリー姫が、ミハエル王とハリー元帥と、貴族院筆頭のヨゼフ・ラ・マクガイヤーを呼んだ。ヨゼフさんは、貴族院で一番偉い人。ハリー元帥は、軍事で一番偉い人。一応、お茶の席だけど、とんでもない人たちに囲まれることになった。

 ヨゼフさんには、ニコニコ顔で、握手を求められた。

「ジャックから聞いたぞ。この間の会議の発言は、聖獣様だったそうじゃあないか」

「すいません、おれ、風竜が、何言っているかわかりませんでした」

「わはは、愉快愉快。あれが全部、本当の話なのだろう。我が国の未来は明るい。所で、ハウルカ姫を連れ去る気だというのは、本気か」

「ヨゼフ様、先に、ユウの話を聞いてやってください。これは、わが国だけではなく、アストラル大陸、ひいては、ムーマ大陸に関わる話です。わたくしは、ユウを応援いたします」

 そこで、自分は、違う世界からの転移者だということ。幼馴染が、イスタル王国の姫として転生させられ、16才で勇者になり、魔王ゼゲイと戦わされると話した。自分は、遥をその牢獄のような状態から救い出して、一緒に、ムーマていこく大陸を旅しようと思っていると話した。

 ヨゼフさんは、王族だが、国を預かる重鎮でもある。

「ユウ君、すまんが、個人より先に、大局の話をさせてくれ。ハリーよ、今の話からすると、6年後、ゼゲイ魔王国より、大侵攻があるということではないか」

「そうなりますな。しかし6年ですぞ。我らが、ホームラ王国に食い込み、よしみを結べば、違う局面も見えてきますぞ」

「それは我らで話そう。それより不敬な物言いだが、イスタル王国から勇者が出ると、アストラル大陸の力関係が崩れ、我が国がもくろむ4国同盟が空中分解するのではないか」

「そうなるでしょうな。イスタル王国は、今でも強国。魔王侵攻に際して我ら人族は、イスタル王国を中心に、連合を組むことになる。序列がはっきりするのは、間違いないですな」

「ユウ君分かるかね。我らサザン王国が自立しよと思ったら、イスタル王国から勇者が出ない方が良い。これは、魔王軍に侵攻をゆるして、平和を崩したいから言っているのではない。我らなら違う道を選べるから、そう言っている」

「ワハハ、我らは、ユウの姫を連れ去るのに協力すると言っておるのだ」

「ありがとうございます」

「しかしユウよ。ハウルカ姫を我が国でかくまうことはできない。分かってくれるな」

 この中で一番まともに見えるのがミハエル王。

「ミハエル。わたくしが、寮長として使っていた偽名をハウルカ姫に差し上げてもよろしいですか」

「メアリー・ルーン・エルロックか?。あれは、メアリーが長年使っていたものだろう」

「年齢を書き換えるだけでいいのです。そうすれば、勇者は、我が国の国民です」

 とんでもない陰謀が話されているお茶会に、メアリー姫付きのメイドが、ニコニコと、お茶を配りだした。

「陛下、メダルにやらせましょう」

「ハリーのいいように」

「あの、皆さん、自分が、異世界人だということは、驚かないんですね」

「驚いておるよ」
「それより国事だ」
「それは、ハウルカ姫奪還の話をした後で、ゆっくり聞かせてもらいます」

「奪還ですか。転生では、誘拐ではないのですか」

「そうとも言いますな、陛下」
「では、亡命としましょう。わはは」

 ミハエル王は、困った連中だと。眉をしかめた。


 夕食は、リリーには悪いが、王宮で取ることになった。


 その日の深夜、風竜のシップウから緊急連絡があった。

― ユウ起きろ。北西の山中に、天使族の軍勢が押し寄せてきた。ノイエ法国との国境線だ。ロトの奴、弱っているくせに無茶をする。ひょっとして、今朝、遥と接触したのを見られたか

「本気で戦っていいのか?」

― 本気を出さんでどうする。今回は、二人でやろう。リリーも連れて行くぞ。練習だ。今、迎えに行く


 おれは、それを聞いて、剛気功で、ドンと息を吐いた。
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