勇者の拳士様

星村直樹

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遥救出編

風の巨人

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 黄金のライオンたちは、ドラコ族と雷狼が、おれと決着するのを待っている様子だった。彼らの、戦いに対するプライドは、半端ないと思う。

 黄金のライオンと共にいるのは、雷をまとった馬と牛。黄金のライオンには強い知性を感じるが、後の二体は、おれと同じ、脳筋だと思う。

「それにしてもでかいな」

― 雷をまとっているからだ。言葉が通じなくても、黄金のライオンを指さして、一騎打ちしろと言え。乗ってくるから

「それ、おれも乗った」

 風竜のシップウにとって、おれは、とても扱いやすい人間だと思う。まあ、嫌じゃないけど。


 黄金ライオンの目の前に行って、一騎打ちを挑むわけだけど、今回は、風障壁を張らない。相手を移動阻害しても面白くないからだ。つまり力でねじ伏せる。荷物を運ぶ風魔法、ホバーの応用で、黄金ライオンと同じ目線まで、舞い上がった。元々、空気を蹴る脚力で、空を歩けるが、習った魔法は、全部使いたい。

 そして黄金ライオンを指さして、一騎打ちを挑んだ。

「おい、お前。おれとタイマン勝負しろ。逃げるなよ」

 ガオーウン、ガオー

 黄金ライオンは頭を巡らせて吠えている。たぶん、牛と馬に手を出すなと言っているのだろう。よく見ると、雷帝と言われる黄金ライオンの部下がいっぱいいる。ただ、巨大なのは、この3体だけだ。

 シップウが言っていたが、思った通り、黄金ライオンが、金色の髪をなびかせて、ずいと前に出てきた。さっきおれが作った偽の金色の羽より、こっちの方がよっぽど立派だ。でも、ロトに負けたから、その下にいるんだろうなと思う。

 ガオーーー、ガオーーーン

「黄金ライオンは、呼びにくい。雷帝でいいか」

― 雷帝は4体いるぞ

「じゃあ雷獅子〈らいじし〉でいいや。こい」

 ガーーー

  あの巨体で、ものすごい勢いで突進してきた。やはり、ギガントアームで、殴りたい。

 フーンワッ「ギガントアーム」これに昇竜波を乗せた。

 ドゴン

 グガーーー

 あの巨体が吹っ飛んだ。
 元々シップウのドラゴンブレスで、山二つが、荒れ地になっている。黄金ライオンは、裸になった山肌に激突した。

 でも、そこからの展開が早い。雷をバリバリ発生させながら、何事もなかったかのようにジャンプして襲い掛かってきた。

 ガッ

 ??、グッ

 ユウは、黄金ライオンの前足にフックの様な打ちを食らい、反対の山肌に吹っ飛ばされた。
 山肌にぶつかる前に、風障壁を張り、体制を整えて、お返しとばかりに、黄金ライオンに突っ込んだ。

 これに相手は、雷爪(らいそう)で応戦。とんでもなく硬い爪に阻まれた。

 ユウは、これを受け流さないで受け止めたが、地面に叩きつけられた。

「かったい爪だな。地面がスポンジかと思ったぞ」

― バカ、まともにやり合うな。あれは、雷の塊だ。本体だけをたたけ

「いや、もうちょっとやる。ギガントアームのコツがつかめそうなんだ」

― ほどほどにしろ。森を癒すのは、我だぞ

 おれは、作戦を変更して上空高く舞い上がった。上空から、頭部や背中を狙う。

 バリバリバリ

 落雷攻撃だ。これはエアーバリヤーで、いなした。

 なんてやつだ。堅い爪に、吹き飛ばしスキルの前足攻撃。上空に上がると雷攻撃。隙が無い。強敵だ。

 ふっ、面白い

 やっぱり踏ん張れないと殴った気がしない。ギガントフットを出せないとな

 ユウは、地上に降りて集中した。まだ、ギガントフットを出したことが無い。その上アームも出さないといけない。いや、腰が無いと殴れないだろ。

 パンチというのは、足、腰、胴のひねり、肩の入れ込み、そしてパンチとなる。ユウは、黄金ライオンの正面で固まってしまった。

 ガオン 〈かんねんしたか〉 グオーーーーーン 〈止めだ〉

 黄金ライオンが突っ込んでくる。そこにユウの体が、ズズズズズズと浮き上がる。まともに正面衝突する位置だ。

 黄金ライオンは、潔しとニヤリと笑った。黄金の髪の毛が逆立ち、額が透明で固くなったように光り出した。これは、どんなものでも跳ね返す必殺の雷鏡(らいきょう)。これでユウを潰す気だ。
 その時、リリーには、風の巨人が見えていた。

 ふぁおーーーーん

 ユウの雄たけびがあたりに響き、風の巨人が、地を這うようなアッパーカットを繰り出した。輝玉流昇竜拳

 ドッゴーーーン

 黄金ライオンの巨体が、信じられないぐらい空に打ち上げられる。

「ご主人様、あれは?」
― 風の巨人だ。我も初めて見る

 ユウは、そのまま黄金ライオンを追って空中に飛んだ。ふっと、風の巨人は消え、そして、黄金ライオンの巨体も消えた。

 そして地上に戻ったときは。300Kgはありそうな大きなライオンを担いでいた。ライオンは気を失っており、したをだらしなく伸ばしている。

「お前らの親分は、倒したぞ。どうする」

 相手は、おれの言葉が分からないだろうが、言っていることは分かるようだ。2体の巨大な牛と馬は消え。ライオンの前に、牛と馬が膝間ずいた。まだ雷で、金色にチカチカ光っている。そして、多くの獣や獣人が、このライオンの周りに集まってきた。

― ユウ、よくやった。我に乗れ、奴らと話すのだ。リリー、驚いていないで、我がやる言葉の受け渡しを覚えろ
「ごめんなさい、ご主人様」

「お前ら、今回は見逃してやる。こいつを連れて帰れ」

 あれっ?誰も動かないぞ
「風竜、どうなってる」
― 奴らは、強いものに従う。ロトよりユウの方が強いと判断したのではないか。だが、頭領が気絶している。黄金ライオンが起き上がるまで、身動きできない。そんな所だろう

「仕方ない。お前ら、おれは、こいつに止めを刺すわけじゃないからな」

 そう言って、黄金ライオンに、カツを入れた。

 ガフッ
 黄金ライオンは、おれを見上げた。

「わしは、負けたのか」

「そうだ。お前、強かったぞ。またやろう。今日は、帰っていいぞ」

「お前は、聖獣様より強い。わしに、対等に戦って勝ったやつは、いない」

「ロトも、お前に勝ったんだろ」

「雷を吸われて、空から遠距離攻撃された。まともに戦っていない」

 ガオン

 黄金ライオンは立ち上げって、配下の獣を見回した。

「わしは負けた。今日から、この人間につく」

 グモォーー
 ヒヒン

 ドオン

 二匹のリーダー格の獣が吠え、それに続いて獣たちが一斉に雄たけびを上げた。

― 貴様ら聞け、ユウは、これから、ムーマ大陸に行く。貴様らは、ユウが帰るまでしばし待て

「おまえら、風竜に従え。風竜、なんか厄介そうなのが増えちゃってすまん」

― なに、森を再生するために、こき使ってやる

「お前名前は、なんと言う」

「雷帝、黄金ライオンだ」

「名前が長い。レオにしろ」

「我らを受け入れてくれるのか?」

「さっき、風竜に従えと言っただろ。お前たちも、おれの仲間だ。おれは、ユウだ。しばらくムーマ大陸に行く。風竜に従え」

「分かった。わしは、レオだ。皆のもの聞いたか。わしは、レオだ」

 グオーーーーー

 けっこう、名前が気に入ったのかな?

― ユウの話を聞いたな。我に従え

 ドオン

 一斉に獣達が雄たけびを上げた。シップウは、とりあえすドラゴと雷狼と同じく、東の山に住めと話していた。しかし、獣の群れの中にいた獣人たちが、ラーレルトカメレオンの解体を始めた。これ一匹で、当分、食いつなげるそうだ。オーロラレインボウを出していたヒレは、魔道具の高級素材だと言っていた。

 その間に、さっきレオがやっていた雷鏡を教えてもらった。それは、バリヤーの高出力版。天使族には出来ない強力な盾であり武器だった。

 もう、空が白み始めていた。

 シップウに途中まで送ってもらい、そのあと、リリーには悪いが、おれを抱えて飛んでもらった。リリーが飛ぶ分にはいいが、おれが飛び跳ねると、港が大騒ぎになる。

「ご主人様、凄かったですね」

 オレを抱えたリリーが、ものすごく嬉しそうな顔をしている。こいつ、さっきの戦いをバザールで言いふらす気満々だ。

「リリー、『マウア、ミナ、イーニ』!」

「イエス、マスター」

「この戦闘の話をするなよ。大騒ぎになるからな」

「あーん、ご主人様。私だって活躍したのに―」

 朝日の中で、サザンの港町と城下町を上空から一望できたのは、幸いだった。今日から新しい一日が始まる予感がした。
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