勇者の拳士様

星村直樹

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ムーマ大陸へ

魔力の源は気功

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 この日の翌々日に出発が決まった。その日は、冒険者学校が休み。ブライアンは、馬車で帰郷する。帰郷すると言っても馬車で3時間ほどの道のり。これに、遥とリリーを便乗させる。
 使い魔リリーは、おれからあまり離れられないのだが、最初の十分の一の魔力しかないときに、山3つぐらい離れていても問題ないとリリーに言われていた。それで、ここ数日どれぐらい離れても平気か確かめた。どうやら大陸の半分ぐらい離れていても平気なようだ。それって、殆ど自由だってことじゃないか。
 そこで、遥にリリーをつけることにした。荷物の中に一人というのは、寂しいだろう。幸い遥がリリーに懐いてくれたので、そうすることになった。おれは、高度を上げて空を走っていく。遥の馬車に何かあったら困る。鷹の目で馬車を観察しながら行く予定だ。

 馬車は何事もなくナンソウ領カモワ港に到着。そこの領主の屋敷に入った。空から見ていると追跡者がいたが、何もしない。たぶん、おれの友達は、ずっと監視されているのだろう。この追跡者を排除すると、向こうにハウルカの居場所を教えるようなものだ。そのままにして、自分も侯爵邸に入った。

「やあ、待っていたよ。例のものを見せてくれ」
「ごめんな、父上は、これを取得しようと30年も頑張っているんだ」
「そうだ、私やブライアンが、ギルドカードを手にできる条件が分かったら知らせてくれ。金1000枚出そう」
「父上!」
「そう言うなブライアン。金1000枚を30年で割ってみろ、一月金3枚無いのだぞ」
「仕方ない。そうしてくれ」

 こっちが会話に入るスキがない。仲の良い親子だ。

「ハウルカ姫は、アストラル大陸のギルドカードは、取らなかったのですね」

「そんなことをしたらすぐ足が付きますからね。ムーマ大陸のギルドカードは、取れれば取らせようと思っています」

「それは素晴らしい。ぜひ、仕事内容などをレポートしてください。ユウ君の取得した使い魔契約のランクも聞いてほしい。なんでもいいんだ情報を頼む」

「わかりました」
「それより、近隣諸国との4国同盟を成功させた方が近道ではないですか父上」

「それも一理ある。協力は、惜しまないさ」

 遥には、もう、軽装になってもらっている。外はフード付きの外套。驚いたことに、この十年、ズボンをはいたことが無いという。一応ズボンも準備しているのだが、長スカートを履いてもらった。

「じゃあ、馬はどうしていたんだ」
「乗ったことないよ。あっ、でも、戦車には乗った。ポニーのチャリオット」
「お嬢様に育ったな。飯は作れるか。キャンプすることもあるぞ」
「そんな、メイドはいないの」
「私が作れますよー」
「リリーに任せるわ」
「おいおい、味噌作れるの、遥だけだぞ」
「昔を思い出したらね」
「お前ん家、神事用のみそは自家製だっただろ」
「えへへ」
「遥は、その姫様癖を治すところから修行な」

「ユウいいのか、一国の姫だぞ」

「こいつは異世界の調味料を作れるんだ。異世界料理ができるのはこいつだけだ」

「ちょっと待ちなさい。未知の調味料が有るのかね」

「同じ場所で、のんびりできるのでしたら作れます。向こうで試してみます」
「当分無理ですよ。最初に訪問するのは、ジェライド王国ですよ。恐竜天国でのんびりできるとは思えません」
「なんでそんな所に行くの?」
「風竜の紹介で、闇魔法を教えてもらうんだよ。空飛びたいって言ってただろ。浮遊魔法を覚えたいだろ」
「覚えたい!」
「ジェライド王国の後は、ミュラン王国に行きます。そこでのんびりできると思うんで、その時レシピを送りますね。いいか、遥」
「うん」

「時間があったら、前の世界の話も聞きたいな」
「君たちが早く戻ってこれるよう、我々も頑張るよ」


 夕方、ブライアンは、馬車で王都に帰った。それに、追跡者もついて行った。今晩は、ジョンソン侯爵邸に泊まって、翌早朝に、ここ、カモワ港から、セイドン王国のレインライト港に向けて出港する。

 その前に、   コンコン

「二人共いいか」

「ご主人様!」
「明日早いよ」

「打ち合わせだよ。これから4週間もあるんだ。気功の修行にちょうどいいと思うんだ。リリーは、おれから自立するのを目標な」

「そんなことできません」

「遥は、気功をリリーに教えてやってくれ。オレの内陽功って、風属性もあるけど、主に光属性ぽいんだよね。風竜が言うには、遥の殻気功は、土属性っぽいんだ。ロトもそうだろうけど風竜も厳しいってさ」

「そう言えばそうかも。剛気功は良く分からないけど鋭気功は、センサーっぽいし。もっと光属性じゃない」

「そうなんだ、内陽功は、光、火、風って感じだろ。風要素もあるから、風竜が嫌がるほどじゃなかったんだ。だけど、殻気功は、違うだろ。でも、風と真逆属性の土属性だからこそ、風属性そのものに転嫁できると思うんだ。殻気功は、土属性なんだけど、守りを解いたら、生命循環系にできるはずだ。それだと。土の反対、風属性になるだろ」

「ご主人様、何言っているかわかりません」

「まあ、待て。これは、風竜の為でもあるんだ。剛毅琉剣術には、殻気功の先があるだろ。攻撃した後に出すやつ」

 拳法の「ヤー」とか。「ドリャー」とかいう掛け声(気合)は、技を出した後出すものだ。ヤーと言って気合を出した後に殴っても、その拳に気合は入っていない。剣術も同じこと。

「覇気功〈はっきこう〉のこと?。あれって気を吐き出すやつでしょう」
「そうそう、あの吐き出す気を体内で循環させてほしいんだ。それって風属性だから」
「う~ん。なんとなく言っていることは分かるんだけど、どういうこと?」
「息は吐くけど、丹田の気は、体内に巡らすってことさ。要するに腹で息しろってこと」
「分かった、いいわ。それをリリーに教えればいいのね」

「あのう、どうゆうことですか」

「遥かにそうしてもらうのは、風竜の為。リリーは自分の為だよ。リリーには、自立してほしいんだ。自分の魔力は自分で作る。覇気功ができると、風の魔力を息しているだけで作ることが出来る。おれが居なくても一人で生きて行けるようになるぞ」

「ご主人様ー、契約破棄ですか」

「ちがうちがう。おれの魔力貯蔵量は、常人の10倍だけど、1割以下になると、この世界の剣士クラスぐらいの力しか出せない。その時リリーに、サポートしてもらえたら嬉しいなって思うんだ。リリーとオレは、一蓮托生だろ。もしかしたら、リリーの魔力が、おれを助けたりして」
 リリーは、ほめて伸ばす子。

「そんな、ご主人様を助けるだなんて。やります、覇気功」フンスッ
「いいなーそれ」

「遥は、おれと剛気功を練習だ。剛気功も覚えてくれ。多分遥は、光属性の魔法はすぐ使えるようになると思うんだ。それに、覇気功ができると風属性だろ。この二つができるだけでも癒しと治癒ができるようになるから、おれと無茶な修行ができるようになると思うんだ」

「あー、うん。それで、剛気功って言うのは?」

「剛気功は、闇、水、土属性なんだ。水は、回復だろ。無茶な修行に耐えられるようになる」

「私って、料理とかやらないといけないんじゃないの?お味噌汁飲みたいんでしょ」

「それは、ミュラン王国にたどり着いてからだって言ったろ。遥もそうだと思うけど、おれとマジで練習できるのは、遥しかいないんだよ。光、風、水の超回復ができるようになると、日常の他のことも出来るようになるからさ。いいだろ」

「そっか、私しかいないんだ。それじゃあ、仕方ないわね」

「じゃあ遥は、まず、覇気功ができるようになって、リリーに教えてやってくれ。リリーは、遥に、治癒魔法な。無詠唱で、自分を治癒できるところまで頼む。どうだ、この航海で、出来そうか。出来たら、遥は、剛気功に進もう」

「う~ん」
「えーー」

 二人で、顔を見合わせているが、何とかなるだろう。急ぐ旅でもない。自分は、内陽功で吸って剛気功で息を吐く。これで、全属性が使える。遥も、エルフの国、ミュラン王国に行って落ち着いたら自分と同じ呼吸法にさせようと思う。今は、シップウとリリーの助けになってもらいたい。せっかく身近に最高の師匠がいるのだ。それが、風魔法を覚える近道だ。
 ちなみに鋭気功と言うのは、鼻で細く息をする呼吸法だ。戦闘中どんなに、大きく息を吸いたくても、口で息しないという苦しい呼吸法だが、センサー感度が上がる。

 女たちは、理論で覚えない。最初は、おれのを見て覚えるしかない。この夜は、ずっと風の魔力を作る覇気功〈はっきこう〉を3人で練習した。
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