勇者の拳士様

星村直樹

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水の王女シレーヌのゆうつ

恋愛って際限がない

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 シレーヌ王女は、コラグの島々に、朝日が入るのを眺めていた。海中は、独特の文明を築いている。魔法は、地上より海中の方に恩恵があった。それでも、魚人たちは、地上に出ることが出来なかった。魔法のおかげで発達した生活。しかし、地上のように文字は、周知されていない。地上と違って口伝では、地上に対して間違った認識を持つ者もいる。結局、力が支配する世界。海中の民が結束しようと思ったら、地上の知恵が必要だ。その橋渡しができるのがポーラ族。私達両棲の人魚だ。
 魚人たちは、地上に、水魔法で自分を守って、何もしなくても20分。戦闘をしたら、10分ぐらいしかいられない。それは地上の生き物も同じ。人間は海中で、風の魔法を使っても20分。戦闘で10分しかいられない。ここに、両者の溝がある。
 ビヨンド王子は、その魚人たちの王女である私を怖がらないで、気軽に声をかけてくれたお友達。ここに、海中と地上の懸け橋があると思う。

 お父様は、ビヨンド王子を試している。いいえ、人類を試している。私の部屋に、水と風の結界を張っているのがいい証拠。この二つを突破できると言う事は、海中にずっといられると言う事。海中では、私たちが先に進化した。でも、人類も魔法で進化して海中に入ることが出来る事を示せば、魚人たちの人を見る目が変わる。そう思っている。でも、たった3カ月じゃ無理よ。シャークは、お父様に、人ってすごいんだぞ―みたいなことを言っていたけど、お父様の意図をちゃんと汲んで言っていたのかしら。お父様もリリーナ姫のお父様と一緒で無理難題。お父様と喧嘩して2カ月。リリーナ姫みたいにスカッとしたことがしたいわ。

 シレーヌ王女は、海上で漁をしている人間と漁船と、それを手伝っている魚人を見るのが好きだ。昔からやっている漁だし、その仕事の対価にもらっている魚の干物は、魚人たちの好物。太陽の光で、魚は、2倍にも3倍にもおいしくなる。すぐ食べないとふやけちゃうけど、地上なら長持ちする。私も大好き。

「なんで、みんな、あんなふうに仲良くできないのかしら。漁師と魚人は仲いいのに変なの」

「えっ、魚人と漁師は仲いいんですか」

「へっ?」

「あっ、すみません。おはようございます。これ、ビヨンド王子から預かった物です。代わりに何かいただけたら、配達のご褒美貰えるんですが」

 見ると窓の下に、ふよふよと浮かんでいる男の子。まだ、学生と言ったその子は、ニコニコと、私がビヨンドにあげたペーパーナイフを差し出している。

「あなた、何で外に浮いて‥。そこにに居てはダメ。中に入りなさい」
 そう言って窓から離れた。

「お邪魔します。王女の部屋に、勝手に入って怒られないですか」

「私が認めます。朝食まで時間がありますから、人は入って来ません。あなた、お名前は?」

「シラサギ・ユウっていいます。ビヨンド様は、シレーヌ様を心配していました」
 王子が姫を心配していたと真っ先に言えと、シャーク船長が早朝押しかけて来た。すぐ行け、やれ行けとうるさい。こんな、朝っぱらから行って、姫様に失礼じゃないかと言っても聞かない。

「本当に!」

「昨日本人から聞きました。これが証拠です。どうぞ」

 海露魔石がコーティングされたペ-パーナイフなど誰もが持てるものではない。それにこの模様、世に2つとない品だ。私は、嬉しくて息が詰まった。お父様と喧嘩して2カ月。もう、ダメかと思っていたけど、結果が出た。人は魚人と仲良くできる。
 シレーヌは渡されたペーパーナイフを胸の前で、ぎゅっと握った。

「ビヨンドは、他に何か言っていましたか?」

「すみません。おれが、安全にここに来れるよう、クリスタルシールドって言う魔法を教えてもらってましたから、それ以上話していません」

「どうやって、ここに来たのです?。海は魚人たちでいっぱいです」

「空を走って来ました。まだ飛べないんです」

「それは風魔法ね」

「そうです」

 じゃないと、風の結界をすり抜けられない。人は、エルフほど、風魔法を操ることが出来ない。それなのにこの子は、すばらしい逸材だわ。ビヨンドありがとう。

 おぜん立てしたのは、全部シャーク船長。ハフマンド王国の人間は、みんな水属性なので、風魔法が扱えるのは希少。逆に水魔法が使えるのは当たり前だと思っている。つまりシレーヌは、ユウが水と風の2属性を扱えると直感した。

「あのう、何か品物を」
 早く帰らないと遥とリリーが朝食出来ないんだよな。ザンクトベルグの市には、朝食の屋台も立っている。おれとリリーは、いつものサザンのバザールで朝食していた。遥は一度もない。だから二人で慰めて、食べに行こうと話していた矢先にシャーク船長が押しかけて来た。二人がアパートで待っている。

「そうでしたね。それでは手紙を書きます。少しそこに座って待っていてください」

「はい」
 そうだよな、2カ月も待っていたんだから仕方ないか。

 シレーヌ姫から預かった手紙は、蝋で封印されていた。そして、ハフマンド家の刻印。すぐ届けないとまずいんだろうなと思う。ごめんな、遥、リリー。

 急いでビヨンド王子に手紙を持って行くと、金貨を5枚もくれた。大儲けなんだけど、返信をしたいと言い出した。手紙を持って行ってくれたら、金貨1枚出すという。話は美味しいが、こっちも遥とリリーと屋台で朝食をとる約束がある。恋愛って際限がない。結局、熱意に根負けして往復してしまった。行くとシレーヌ王女は食事中。それを待って、えーっと、また手紙を書くのを待って。。。。すまん遙、リリー。結局この日金貨をぜんぶで8枚も儲けてしまった。
 ※金貨1枚は10万円。銀貨100枚で金貨1枚。銅貨10枚で銀貨1枚。


 アパートに帰ると、二人がカンカンで待っていた。もう、朝市を楽しむことはできない。事情を話すと、納得してくれたが、今日は、全部おれのおごりだそうだ。さっき儲けた金を散財させられそうな予感。ここからジェライド王国まで、大きな都市がないから仕方ないか。そんなわけで、言う事を聞くことにした。

「よかったー、まだ屋台やってる」
「もう、お腹ペコペコです」
「もう少し待つと、普通の店も開くから」
「屋台がいいの」
「そうでした」
 今、ちょっとでも逆らうのは危険だ。シレーヌとビヨンドの話を聞いていたから、市場につくと10時近い。お昼から遥は水魔法。おれとリリーは、海中でどれだけやれるか試す。


 ビヨンド王子とシレーヌ王女の話は分かったし、金貨8枚も儲けたのも、分かったけど、私たちは置いてけぼり。今度から、私たちも連れて行けって思った。だって、リリーが私を抱えて飛べばいいだけ。水の結界も大魔石があるからリリーでも何とかなる。そうユウに訴えると、ため息つかれた。

「お前なー、頼り癖がついていないか。お父さんは、そんな風に育てた覚えはないぞって、怒られるぞ」
「そんなこと言わないもん」
「前世のだ!本当に言わないか?」
「言う」
「そうだな、水の結界を大魔石を使ってもいいから、リリーと一緒にすり抜けたら、リリーと一緒について来てもいいぞ。リリーの実力だったら、隠密におれに付いて来れるさ」
「本当ですかマスター」
「もう、おれが試したからな、間違いない。シレーヌ姫の話し相手になってやれよ。殆ど、本を読んでいるか歌ってるかぐらいしかないんだってさ」
「わかりました」フンス
「歌!」
「歌姫なんだと」
「有名ですよー。シレーヌ姫の歌を聞くと癒されるそうです」
「傷が治るってことか?」
「バカじゃないの。心が落ち着くってことよね」
「う~ん、アイテムがどうとか、ごめんなさい」
「えっ、癒し効果が有るの」
「えへへ、眉唾ですよね」
「すっごくシレーヌと話がしたい」

 驚いたことに遥は、食事が終わるまで、大人しくしていた。その反動で、今、物凄くおしゃべりしている。遥は、王女として随分、躾けられているようだ。

「じゃあ、買い物に行くか。何が欲しいんだ」
「服、夏服がほしい。だって暑くない?」
「お姫さま、肌を出してよろしいのですか」
「うっ」
 おっ、効いてる効いてる
「私に、凄いの着せようとしているんですよ。無理ですあんなの」
「そんなことない。シースルーにすればいいのよ」
「シースルー?ですか」
「遥なー、自分ができないことを他人に勧めるなよ」
「うっ、だって、可愛いと思ったんだもん」
「そうだな、長スカートは、暑いし、これからの旅に大変だ。ズボンをはけるようになれよ」
「いやよ」
「じゃあ袴か。異世界にそんなの有るか?」
「オーダーメイド!。金貨8枚なんでしょ」
「そう来たか。作ってもいいけど、ジェライド王国までは、穿けないかな。目立ちすぎだ」
「じゃあ、ロングキュロットスカートで我慢する。半ズボンのスカート版の長いの」
「??、ごめん、想像つかない。服屋さんで頼んでくれ」

 朝の残った時間は、街の服屋で過ごすことになった。
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