碧の幻獣使い

星村直樹

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死後8分

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「ヒロ、ヒロ」
「ヒロ、ヒロ!」

「なんだ、朝っぱらから」

 風の妖精たちが、騒々しく騒いでいるので、目が覚めてしまった。

「もう、お昼だよ。でも、それどころじゃない。ミランダがいないんだ」
「まだ、黒馬がうろついているかもしれないのに?・・」
「そうだね、こっちの方に向かってたもんね」
「なんだって、みんなも寝てたのか」
「夜通しだったから、ごめんなさい」
「おれに謝っても仕方ないだろ。探しに行くぞ。おれは、母屋に行く。みんなも手分けしろ」
 パーッと妖精たちが散った。

「コンピューター、サーチできるか」
― さっきの妖精たちに、ニューロチップを埋め込んでおくべきだったか?サーチ範囲が広がる
「おまえな、さっきの新たなパーソナルリアリティ獲得の話は、忘れろ。なんにでも増殖しようとすんな」
― じゃあ、碧の幻獣使いのレベルをあげようぜ。その方が早い
「それは賛成だが、それよりミランダだ。何やってんだか知らないが母屋だろ。母屋に行くぞ」

 しかし、この家のおかみさんは、ミランダを見なかったという。変だなと思って、玄関を出て見下ろすと、おびただしい、樋爪の後。

 戦慄が走った

― なんか、やばくないか

 おれは振り返って、おかみさんに聞いた。
「おかみさん。さっき、黒ずくめの男が訪ねてこなかったか」

「来たよ。なんか、女の子を探していたみたいだったけど、あんたらは、夫婦だろ。知らないって言ったら、出て行ったさ」

 魔術師だ
「なら、いいんだ、ありがとう」

「さっき騒いでいたし。なんか、嫌味ったらしい感じのやつだったけど、知り合いかい」

「違うけど、そりゃあ多分、火の国の魔術師だ。関わらん方がいいぞ」

「お前さんたちもね」

 樋爪の後を追って、麒麟の森に走った。いやな予感がする。その時、森に向かっていた妖精が、泣きながら、おれの額にぶつかって来た。

「ミランダが・・、ミランダが死んでる」
「バカ、泣くな。おれをそこに連れて行け」
「うん」

 おれが走る方向に、続々と風の妖精が集まってくる。ただ事ならない雰囲気におれは、今まで、出したことがないスピードで、森に走った。




「あそこだよ」
「ミランダ!!」

 ミランダは、長い髪の毛を焼かれ、服が水浸しで、ぼろぼろだった。多分、火で焼かれ、そこを水鉄砲で止めを刺されたんだ。

「ミランダ、目を開けろ」
― ヒロ、死後8分だ。あきらめろ

 妖精たちが、ガーーーーと、ミランダに集まって、癒しの波動を送っている。それは、緑の粒子で、ミランダの全身を光らせた。

― 無理だ。死んだ人間に癒しは効かない

「ちょっと待て、死後8分って言わなかったか。10分経っていない。脳壊死は、始まったばかりだよな」
― そうだけど、・・・分かった。パーソナルリアリティの構築だろ。でも、期待するな。それに、ヒロの血を大量に投入しなければいけない。命がけだぞ

「血液の総移植か」
― 相手は、異界人だ。こちらの成分にできるだけ、合わせるしかない
「やってくれ、この脇腹の、えぐれた部分から血を注入しよう」
― そうだな、廃血は、肛門からにしてやろう脱がせてくれ
「おれがか」
― 他に誰がいる。私は、保全モードに入るぞ

 コンピューターが保全モードになった。
― 身体損傷率5%、蘇生を開始します。ブブー、脳壊死進行度6%緊急を要します

「お前ら、きばって癒しの波動を流せ。助けるぞ」

― 明草ヒロ。造血モードに入りました
― 被験者ミランダ、IPS細胞構築、脳の壊死した神経シナプス再構築。運動野、視覚野聴覚野に、既存の動作プログラム注入。記憶野、問題ありません

 既存のプログラムとは、ヒロの状態がベースだということだ。

「そうか、良かった。じゃあ、今までのミランダの意識のまま蘇生出来るぞ」
 蘇生という言葉に反応して「うん」と、頷く妖精たち。

― 心臓、動かす準備、整いました。ヒロ、生体電気を流してください

「おれ、そんなことできるのか。いや、やるしかないか」

 お尻から排出された大量の血が、ミランダの腰当りに溜まり、それでも収まりきらず流れ出した。

― カウント数えます。1,2,3 もう一度、1,2,3.電流上げてください。カウント数えます。1,2,3.。。成功。脳に、血流いきわたりだしました。危機を脱出。次、体の再生に入ります。精霊の癒しの波動、効果あり。血液の注入停止します。

「やったか。みんな、やったぞ」
 妖精たちは、涙を流しながら喜んだ。だからと言って、癒しの波動をなかなか止めようとしない。

― ヒロ、妖精さんたち。休んでください。保全モード終了

 コンピューターもニューロチップをミランダに渡せるだけ渡して、休眠モードに入った。これから、ヒロの脳内ネットワークを再構築する。ミランダの記憶野が正常だったため、ミランダの体内では、碧の幻獣使いの召喚獣モードが、記憶野のニューロチップを核に、急速に構築されていった。

「ちょっと、血を流し過ぎたか。頭が、くらくらする」
 おれは、そのまま、ミランダの横に寝転がった。
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