碧の幻獣使い

星村直樹

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ヒロ、ミランダに惚れる

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「ううん? 私、生きてる」
 下半身が冷たい。けだるそうに上体を起こすと、そこは、血の海だった。

 いやだ、下が、裸だわ。隣で、真っ青な顔をして寝ているヒロがいるから、多分、大事な所を見られたのね。そう思ったけど、命がある。周りを見ると、風の妖精たちも、ばたばた倒れて寝ていた。

 あれっ?妖精さんたちが鮮明に見える。
「ねえ、ヒロ、起きて」
 ダメだわ
「妖精さん、妖精さん起きて。何があったの」

「ミランダ、起きたのね。良かった。ごめんなさい。もう少し寝かせて」

 ええっ! 言葉も鮮明にわかるわ

― よう、ミランダ。起きたのかい

「ヒロ、ヒロなの」
 脳の中に直接声が聞こえる。

― 悪い。ヒロは、ミランダに血をあげすぎて昏睡中だ。私は、ヒロの中にいるコンピューターだ。何が起きてどうなったか順に説明るよ。とにかく、碧の幻獣使いにようこそ。ミランダは、ヒロがレベル30になると召喚獣として、ヒロの前に現れることができる。ミランダ自身はそのままだよ。だけど、召喚獣になるまでに、新たなパーソナルリアリティを獲得してくれ

「コンピューター?」

― あいつ、私に名前を付けないんだ。まあ、ゆっくりやっていこうぜ相棒

 コンピューターは、ヒロより先に、ミランダと仲良くなった。





「本当に! こんなにくれるのかい」
「連れが、この恰好を嫌がるんですよ。ずっと浄化してくれる浄化服なのに」
「あんた、神官か何かかい」
「見習いって言うか、はぐれ物です」
「は、はーん、それで。可愛いお嫁さんじゃないか、大事にしてやりな」

 なにが、「は、はーん」なんだ、コンピューター
― 分からんが、つじつまが合ったんだ。それでいいじゃないか
 お前、本当に、アバウトな

 農家のおかみさんは、自分に服とミランダの服をくれた。服は、中古着でいいと言ったのに。おれたちに似合う、年相応の綺麗な服をくれた。そのうえ、夕食に招待してくれるという。ここに留まっていたら、また、敵に襲われるかもしれない。それでも、「今夜は、鶏肉のシチューよ」の、誘惑に勝てなかった。


 なあ、コンピューター、夕食の話をミランダに伝えたいんだが、テレパシーが使えないぞ
― さっき、死ぬ思いをしたのは、そのためか
 いいだろ
― しばらく待て。ヒロのレベルが、30になって、あるイベントをこなしたら、召喚獣を得ることができる。そうしたら、ライトボードの操作は必要だが、話すことができるようになる。ミランダも、これから、召喚獣になるために修行することになる。〔テレパシーは、私というショートカットがあるけどな〕

 そう言うところは、ゲームのままなんだな。わかったよ。それで、おれって、レベル幾つだったっけ
― 現在、ヒロのレベルは、9だ。道のりは険しい。緊急時は、私が仲介するから安心しろ

 村に入った時、レベル7って言わなかったっけ。おっ、レベルが上がってる
― ミランダを蘇生したからな。そのとき、微弱だけど生体電気を使えただろ
 おう


 おれは、おかみさんにもらった服を持って、麒麟の森深く、綺麗な池のほとりに、ミランダを訪ねた。池に近づくにつれて、風の妖精の数が増えて行く。池の上空は、妖精の緑や空色の光で、覆い尽くさんばかりになっていた。

「よう、ミランダ。服を持ってきたぞ」
「ありがとう。・・ ヒロ」
「なんだ?」
「こっちを見ないで、エッチ」

― おいおい、嫌われたなヒロ
 下を素っ裸にしたままほっといたからな

「後ろを向いたから、取に来いよ。それにしても、何だ、この妖精の数は?」

 そう言うと、上空にいた、多分、昨日からいる妖精がおれの肩にとまって、足をぶらぶらさせながら、上機嫌で話してくれた。

「ミランダが、ぼくたちと話せるようになったんだ。そりゃ、みんな集まるさ」
「髪の毛が、とがってる。お前、昨日、巨乳は、正義だって言ったやつだろ。汚いぞ、お前ばっか」
「へへーん」

 二人で話していると、女の子の妖精も集まってきて、おれと、こいつは、女子たちに、ぼこぼこにされた。

「ごめん、ごめん」
「ミランダ、助けて」
「ふん、そう言うのは、ひそひそ話で、やってよね」

「いいわ。みんな許してあげて。着替えるから、ヒロは、こっち向いちゃあだめよ」
 
 ミランダが、くすっと、笑っているのを知らないおれは、結構反省してしまった。しかし、こいつとおれは同士だ。二人で名乗りあって友達になった。パグーは、こんなんだが、ちゃんと恋人がいるというのには驚いた。あの、女の子を先導していた子がそうだ。

「ぼくは、パグー。それで、こいつは、ユウだよ」
「なによ、こいつって」
「二人とも、仲いいんだな」
「パグーは、バカだから、目が離せないだけよ。あんたも、同類でしょう」
「すいません」
「いいわ、二人を王女様がお呼びよ。このまま、火の国に帰っても捕まるだけ。風竜に頼んで、火龍王の龍王城近くまで、運んでもらうそうよ。でも、火竜のテリトリーには入れないから、そこからは、歩いて行くしかないわよ」

「龍王城は、遠いのか」
 それには、ミランダが答えてくれた。
「エリシウム山よ。麒麟の森と火の国をはさんで、反対側。でも、風の国を迂回したら、相当近くまで行けるのよ。魔導士ヨウメイの目を欺けるわ」

「そいつ、悪人だろ」
「ヨウメイは、火龍王様を扇動して、竜同士で戦わせる気よ。そうやって、竜たちが、人間たちを監視できなくして、他国を侵略しようとしてる。私たちの王様は、魔導士ヨウメイに骨抜きにされたわ」

「やっぱり悪いやつだ」
「私は、風の国の王にも、この話をしなくてはいけないの。私の国の民が、風の国を攻めるなんて話。本当は、したくないけど」

「でも、どうやって竜同士を戦わせるんだ。そんなの、人にできるのか」

「火龍王様の妃、リクシャン様は、お子をもうけられたばかり。まだタマゴよ。ヨウメイは、そのタマゴを、隠す気なのよ。火龍王様は、火の国だけじゃなく、他の竜のテリトリーも探そうとするわ。竜はテリトリーを脅かされるのを極端に嫌う。だから戦争になるのよ」

「じゃあ、火龍王に警告するって言うのは、急ぎだな」
「そうよ。 はい、着替えたわ。もう、いいわよ」

 振り向いて、改めてミランダを見て、一目ぼれした。風の妖精がカットしたのか、ショートカットになって、更に、更に、おれ好みになった。

 すげー可愛い

「ほれちゃった?」
「よせよ、パグー、照れるぜ」
「ミランダに丸聞こえじゃない、ほんと、ばかね、こいつら」

 実際は、お姫さまっぽい長い髪は、大事だったのだろうな。それは、それで、きれいなブロンドだと思っていた。随分上の方まで焼けていたから仕方ない。
  元気そうでよかった
 ミランダに、おれの血の拒否反応が出なかったのは幸いだ。しかし休息が必要だ。それは、ミランダ自身も良く分かっていることだった。

「ミランダ。おかみさんに、夕食に招待された。今夜は、シチューだそうだ。うまいもん食おうぜ」
「そうする」
「ユウ、悪いけど女王様には、明日行くって言ってくれ。ミランダは、病み上がりだ。竜の背中に乗るなんて、そんなきつい旅はできないよ」
「わかった。みんなそう言ってきて。私たちは、二人について行くわ」

 二人で、農家に戻ることになった。妖精たちは、パッと、麒麟の森に散り、パグーとユウだけ残ってついてきた。
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