碧の幻獣使い

星村直樹

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火龍王と魔導士ヨウメイ

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 地上に降りて、落ち着いたミランダが、ショウギ将軍に、火龍王への謁見を申し込んだ。

「おじさま、至急、火龍王様にお知らせたいことがあります。緊急を要します。至急お取次ぎください」

「宰相殿が来ておるでな。いろいろ面倒だ。非公式でよいか」

「ヨウメイがいるのですか? 余計急ぎます」

「あれが、居ってもよいのか」

「はい」

 先ほどまで泣きじゃくっていた人とは思えないほどの意志を見せつけられ、ショウギ将軍がおれた。

 魔導士ヨウメイが、今、ここにいるんだ。こりゃあ
― 不測の事態だな。鵺の言う通りだ

 おれは、ミランダに従って王の間に向かうことになった。 


 おれたちは、王の間の扉から入るのではなく、王の座がある後ろ側、近侍の者しか通れない通路から、王の間に通された。ショウギ将軍は、周りに、いちいちミランダについて質問されるのを嫌い、作法にのっとって自分の後ろにゲストを歩かせるのではなく、ミランダを抱えて王の間に入った。おれは、普通にショウギ将軍の後ろを歩いているにもかかわらず、咎めだても、質問もなかった。だが、それでも、いちいち、どういった要件かとか、侍従長に通したのかと、将軍につっかって行く。将軍が、「火急の要件だ」と、睨みを利かせての入場となった。

 なんだこれ、おかしくないか
― こりゃあ、魅了されているとは言わないが、情報操作されているのは間違いないな
 竜なのにか。だったとしたら、ヨウメイは、化け者だ



 王の間に入ると、黒いローブを着た人間が、近衛兵より先に、ショウギ将軍を咎めた。

「何事です。今は、火龍王様と、火の国の将来について語り合っている最中。将軍と言えど、急の入場は、控えていただきたい」

「まあ、良いではないか。どうした、ショウギ。珍しいな」

「王よ、我が家の至宝が訪ねてきたのです。急ぎの挨拶があるとか、聞いてやってくだされ」

 ショウギ将軍の名前は、ショウギ・ホン・サラマンダー。ミランダは、ミランダ・ホン・サラマンダー。龍と、人の家名が一緒。

「サラマンダー家の至宝だと」

 火龍王は、それを聞いて大いに喜んだ。しかし、ヨウメイは、ショウギ将軍の手の中に垣間見える人の姿を見て、驚いた。

 まさか!!! ありえん

 ヨウメイは、まだ40歳そこそこで、普通なら、全身を、黒のローブで覆うようなことをする年ではない。しかし、顔は、ただれ、頭髪は抜けおち、まるで、70歳ではないかという容姿をしている。そのため、人の国の宰相と言われれば、そうだろうなと、皆がおもう。その黒のローブに顔を隠して、苦虫を潰したような顔をした。

「火龍王様」

「ミランダではないか。私の宝。城に来たのなら、そう言いなさい」

「火龍王様、リクシャン様は、王子は、ご無事であられますか」

「後宮に居るぞ。リクシャンと交代でタマゴを温めに来たのであろう。だが、ここは、世辞でも、わしに会いに来たと言え。それに、黄金の髪はどうした。姫が、そのような短髪でどうする」

 ミランダのできる火の魔法は、物を温める魔法のみ。しかし、人に王子を任せられる唯一の人。

 まずい。火龍王に力を使っている時ではない
 ヨウメイは、力の矛先をミランダに向けた。


 サラマンダー将軍は、火龍王の横にいて、ミランダを王に見えるよう手から降ろさないでいた。ミランダを下に降ろすと、火龍王が、がっかりするので、そのままだ。対して、ヨウメイは、火龍王の正面。近侍の者もさがらせて、二人だけで話をしていた。

 火龍王は、とても硬い暗緑色の緑の鱗を持っている。胸には赤い模様があり。額には、王の証である、第三の目、赤い龍玉が光っている。龍玉は、遠方から、とても近いものまでを見通せる目だ。詳細にミランダを見ることができる。ミランダには、泣いた跡があり、体も、心なしか震えている。ただ事ではないと思った。

「急ぎの挨拶とは何だ。申してみよ」

「恐れながら申し上げます。そこにいるヨウメイは、王子を隠そうとしています。なにとぞ、警護を硬くしてください」

「隠そうとはどういうことだ」

「王よ、なぜ私がそのようなことをしなければならないのですか。ミランダ姫。乱心したか」

「この男は、タマゴを盗む気です。それも他国にタマゴを隠そうとしています。火龍王様は、必ず王子をお探しになる。そうなれば、龍族に不和が生じます。何卒、ご配慮を」

 なぜだ、なぜ黙らん、この小娘
「この乱心者を処分をさせてくだされ。王の御前で、妄言を吐きよって。火の国は、火龍王様を中心にまとまっている。なぜ私が、そのようなことをしなければならん」

「待て、警護を堅くせよと言っているだけではないか。人の間の無礼は、後で話し合え」

「火龍王様、わたくしは、この話を火龍王様に伝えるために麒麟の森に入って、風の国から、龍王城に向かおうとしました。しかし、私の守護精霊サミルは、この男に監禁され。ここに来ることができませんでした。それが証拠です」

 ええい、黙れ、黙れ、黙れ



 ミランダと、魔導士ヨウメイが対峙しているとき、ヒロは、変な電磁波を感じて、コンピューターに、聞いていた。

 コンピューター、この世界は、魔法で発展した世界だろ。なんかずっと、電磁波を感じているんだけど、なんだ、これ?
― 精神波の一種じゃないか。テレパシーだよ、テレパシー

 それにしても強いな。昨日ミランダを助けるために、電気人間になっちゃっただろ。そのせいかな
― そんなことないだろ。この電磁波が異常なんだ。分かった、解析してみる。・・発信源は、魔導士ヨウメイだ。強力なアイテムを持っているんだろうな

 内容は、わからないか?
― 難しいな、なんかミランダを魔法で攻撃しているから、ノイズがひどい。リシとか言っているのかな。多分同じアイテムでやっている。精神?魔法増幅器か。すごいな

 まずいじゃないか。 じゃあ、あいつ、手に抱えているんだ。これだけ強いんだ、相当の大きさじゃないと無理だろ

― 違いない。魔法は、多分チャームだろ。ミランダも、ヒロの、闇の因子を持ってるから問題ない。チャームは、魔法と言うよりスキルに近い。それで、火龍王に分からないんじゃないか。あの額に有る龍玉も同じようなものだと思うが、チャンネルが違うと聞けないだろ。火龍王に伝えるか?

 どうかな じゃあ、あいつ、手に抱えているんだ。これだけ強いんだ、相当の大きさじゃないと無理だろ。でも、やってみるか



「私は、麒麟の森で、風の妖精たちと、ここにいるヒロに救われ、九死に一生を得たのです。風の妖精フローラ女王は、私の使命を知り、風竜に頼んで、ここまで、私を運んでくれました。何卒、早い守りの陣をお築きください」

「あの、火龍王」

「ヒロ?」

「お前は、黙っておれ」
 なぜ、こいつにも私の魔法が効かない

「どうした騎士殿」

「サラマンダー将軍。火龍王と話をさせてください」

「サラマンダー、かまわんぞ。ミランダの命の恩人なのだろ」


 ヒロは、やおら、この場で服を脱ぎ始めた。



― お、おい、ヒロ
 おれの防護服って、青線が入っているだろ。自分を紹介するのは面倒じゃなか
― 無心でやるなよ、ミランダに説明できないじゃないか
 悪いわるい

「無礼な。火龍王の御前である」
 リシ、なんだ、あの体に密着した服は?
>あれは、・・しかし模様が少し、しばしお待ちを

「このいで立ちは! サラマンダーどういうことだ」

「私にも、何が何やら。古の神官服など、初めて見ました」

「神官服だと。なんだあの小僧は」

 これを聞いたサラマンダー将軍が怒った。
「きさま、神官服を知らんのか。よく宰相をやっとる」

 リシ、なんのことだ。
>はっ、太古、この星にて、祭りごとをしていた宮司の事であります。星全土に、神様の決めた政策を伝えていた者です
「宮司の事でしょう。ですが、こ奴は違うでしょう」

「ほほん。では、誰が宮司だった」

 リシ、どの種族だ
>エルフです。今はいない種族です。
「え、エルフだ」

― ヒロ、ちゃんと解析できないが、ずっと、リシ、リシと呼んでいるぞ。

「こいつ、リシ、リシってうるさいな。火龍王、この場で、魔法が使われています。王の間にはふさわしくない。おれが、それを止めて見せます」

 魔導士ヨウメイは、真っ青になって、慌てて、リシとの精神感応を切った。ヒロに強い魔力は感じない。大体、今まで、これが、ばれたことがない。これは、精神増幅器だ。魔法と言ってもスキルに近い。チャンネルさえ違えば、火龍王にだってばれない。戯言だと自分に言い聞かせた。

「なんだと。わしは、そんなもの感じんぞ」
「おじさま、火龍王様」
 そう言ってミランダが、サラマンダー将軍と火龍王に、嘆願の視線を送った。

「まあ良いではないか。わしと、おぬしがおれば、問題など起きないであろう。ミランダが、ヒロと呼んでいたな。ヒロよ、試してみよ」

「ありがとうございます。ホンじゃあ、失礼して。アンチグラビティ、で、ほい」

 そう唱えると、魔導士ヨウメイが空中に浮き、逆さまになった。

「無礼な。許さんぞ」

 その時、火龍王と、サラマンダー将軍は、ヨウメイの持ち物に釘付けになった。

「貴様、なんて物を、ここに持ち込んでいる」
「人が持てる竜玉などありえない」

「おじさま?火龍王様?」

「ヒロ。ヨウメイなどどうでもいい。その竜玉をわしの元へも持ってこい」

「了解」
 元々その気だったけど?

 ヒロは、逆さにしたまま、魔導士ヨウメイを床にたたきつけ、手から離れた竜玉に、アンチグラビティをかけた。そして、掛けよってこの玉を受け取った。

― スキル、ベクトル変化を習得。レベル10になりました。
 ありがとう。まだ、移動までは、できないんだけどな
「火龍王」
「ヒロ、様よ」
「火龍王様」
 火龍王に竜玉が渡った。

「ヒッ」
 ヨウメイは逃走しようとしたが、脳震盪が収まらない。

「サラマンダー、彼奴を捕まえろ」
「貴様、ずっとおかしいやつだと思っていたが、とんだ大罪人ではないか」
 サラマンダー将軍は、ミランダを火龍王に預け、握りつぶさんばかりに、ヨウメイを握った。
「グ、ギャーー」

 ミランダには、好ましい展開なのだが、急転直下な展開に、何が起きているのか理解できない。それで、龍王を見上げた。
 おれも、訳わからない。

「火龍王様?」

「うむ、これは、水竜の竜玉だ。わしの額に埋まっている龍玉と同じ王の証だ。ヨウメイ、これをどこで手に入れた」

「シ、知らない」

「嘘を申せ。チャーム」
 火龍王の強力なチャームがヨウメイにかかった。ヨウメイは、従順に話し出した。

「私の故郷に有るミラ湖です。魔法学校に上がる前、浜に打ち上げられていた小さな水竜から、奪いました」

「その水龍はどうした」

「まだ生きていたのですが、気味が悪いので、湖に沈めました」

「殺さなかったのだな」

「はい・・・」

「これは、・・火龍王様」

「まずいことになった。これが、海の水竜に知れれば、戦争だ」

「火龍王様。ミラ湖の水龍が生きているのでしたら、持ち主に返しましょう」
 ミランダが、訴える。

「もし、その水竜が生きているとしてもだ。火の国の者が返したのでは、やはり、出何処を問われ、ゆくゆくは戦争になるぞ。ヨウメイ一人の罪では済むまい」

「火龍王様、ここに居ますヒロは、この星の者ではありません。使っている魔法も、光と闇の魔法。ヒロは、エルフの魔法、パトーナムを打つことができます。ヒロに返させてはいかがでしょう」

「おれ?」

 その時、更なる事態が起こった。
 ヨウメイが持っていた竜玉に、別の腹心から連絡が来た。

>ヨウメイさま、ヨウメイさま

「この竜玉に何か、連絡が入った。皆の者も聞け」
 火龍王は、この水竜の竜玉を理解し使いこなしていた。

 話せ

>ヨウメイさま。首尾よくタマゴは、地下の暗河に流しました。ヨウメイさま?

 火龍王は、ヨウメイの悪事を暴かんと、ヨウメイのふりをして、話を聞こうと思っていたが、たまらず怒鳴ってしまった。

ギャオーーーン「きさま、誰だ。タマゴをどうした」

>ヒッ、火龍王?
 その腹心は、ぷつんと意識を切った。多分、気絶したと考えられる。

「衛兵、至急王子の様子を見に行け」
「はっ」
「はっ」


 くそっ、間に合わなかったか。ヌエの言った通りになった
― ヒロ、諦めるな。ミランダが付いて来てと言っている

「ヨウメイ、王子をどうした」

「う、ふぁふぁふぁ。今頃、地中深くを進んでいる。もう、火の国のテリトリーではないぞ。地の者がこれを拾わなくとも、最後は海に流れる。王子は、他国だ」

「貴様ー」
「ぐゎっ」
「サラマンダー、殺すな。こ奴からは、聞きたいことが山ほどある」
「残念です」

「火龍王様、降ろして。私と、ヒロならまだ追えます」

「すまん、そうしてくれ。リザード陸戦隊を呼べ。ミランダ、指示してやれ」

「ヒロ、行くわよ」
「お、おう」
 やっぱ、この世界も、女の方が強いや

「ヒロ、頼むぞ」
「ミランダ、騎士殿、ご武運を」

 ヒロは慌てて、風の国のボイルから貰った剣をつかんで、ミランダの後を追った。
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