残業は熱砂の国で

芳一

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【4】

ばつばつと尻に打ち付けられるたび、ぶちゅ、ぱちゅ、と中で泡立ったような恥ずかしい水音が青空の下に響く。
立ったまま柵に手をつき、腰を突き出した格好はまるで媚びた雌の獣のようだった。
「ぁ、…っン、ふっ…ぅ、ん…っ」
声を出さないように唇を噛み締め俯けば、額から顎へと伝った汗が揺さぶられた拍子にぽたりと落ちた。
その僅かな刺激にも思わずはあッと熱い息を吐きたくなるが、いま口を開けてしまえば自分のものとは思いたくもない声が漏れてしまいそうでどうしても嫌だった。

「どうしたトーゴ昨夜のように乱れてくれていいのだぞ?俺の前で我慢はするな」

ほんと馬鹿なんじゃないの、この人。
こんな朝っぱらから、近くに誰もいないとは言え屋外でズコズコと。というか今この状況を我慢しているんですがそれについてはどうお思いでしょうか。
「ん、んッ、ぅ、ン…~~ッ!」
そうしている間にもヴァシムの熱棒がぐにゅりと奥へ入り込んでくる。
気持ちのいいところをゴリゴリと強いくらいに擦り付けてきたかと思えばずるりと入り口まで引いていき、またぐぬうっと物凄い質量で以って押し入ってくる。その繰り返し。
たっぷり隙間なく、全てを味わうような雄の動きに足の力が抜けてしまいそうだ。
いつへたり込んでしまうかもわからず柵に凭れるように上半身を預けたのだが、ヴァシムはそれを何か勘違いしたのか、腹に腕を回し離れないようにぴたりと密着してきた。
「ッ、…ぁあっ!」
中のモノの角度が変わり善いところを押し潰される。
その衝撃に顎を上向かせて背を逸らせば、突き出された胸の頂をここぞとばかりに摘まれた。
親指と中指でこりこりと捏ねられるのがどうにも駄目で、声を抑えていたのも忘れて「あっ、あ」と善がってしまう。我慢せずに出せて偉いなとでも言うように今度は指の腹ですりすりと撫でられ、その刺激にじん、と股間が疼いた。
ヴァシムに弄られるまで自分がこんなに胸に弱いなんて知らなかった。知りたくも、なかったけど。
「トーゴ、欲しければもっとやろう」
「んんッあっ…!欲しく、なん…か、ッぁ あ…っ」
「強情だな」
後ろで苦笑いする気配がする。
ヴァシムのその顔が見えないことに、何となく腹が立った。


「…っあ、ぅ、あッ……」
見上げれば青い空は自分たちを見下ろしている。
今頃出社しているだろう時間にこんなはしたない事をしている自分が信じられない。頭がおかしくなりそうなくらい恥ずかしくて、やるせなくて────…でも気持ちが良い。
そう思ってしまうのも嫌だったが、ヴァシムに腰を強く掴まれてたんたんたんッと激しく腰を打ち付けられるともう何も考えられなかった。
「ッぁ、!あ、ん、ンンッぅ、あッだ、だめ、そこ…っ!」
がくがくと揺さぶられながら振り向けば、ヴァシムの顔が思いの外近くにあって驚く。
そのまま唇が触れ、ぬるりと分厚い舌が入り込んでくる事に何故か妙な安堵を覚えてしまう。
昨夜この舌で口内も身体も、記憶が若干曖昧ではあるがとんでもないところまで、褒めるように愛撫されたのだ。
そのせいで身体は悦びというものをしっかりと学習してしまっている。
「ん、ん…っ、んー…」
眉尻を下げながら思わず感じ入るように目を瞑ってヴァシムの舌を堪能した。
分厚くて、苦しくて、でも優しくて気持ちがいい。
自ら絡めれば必ず、上手だと褒めてくれる。
先ほどの腹立たしさも晴れていくようだった。
「はッ…ぁ、!」
にゅるにゅると絡み合っていた舌が離れるのが惜しくて、口を開いたまま次の口付けを待ってしまう。

だが訪れたのはとろとろと微睡むような刺激ではなく、グンッと突き上げられる衝撃だった。

「ああ、っァ!?」
入ってはいけない奥の奥をこちゅこちゅと叩かれる。
ひ、と悲鳴を上げれば腹に回されていた掌にするりと下腹部を撫でられた。
どうかここに入らせてはくれないか、と無言の訴えをしているかのようだ。
当然そんなもの許せる筈がない──筈なのに、歓迎するように中が蠢いてしまうのは何故なのか。
「あっ、ぁ、んッ、おく…ッだめ、おなか、ッなでなで、しな…っ、で…ッ!」
「どうしてだ?ここは待ち望んでくれているようだがなあ」
「ち、ちが…っ、あッ…くる、くるッ、すごいの、くる、ぁ、あ、あッ、ぁんッ」
ぞくぞくぞくッと背中が震える。

「大丈夫だ。全部吐き出してしまえば軽くなる」

ヴァシムの言葉と同時にぐぽんっと勢いよく熱の塊がねじ込まれる。
「あ、ぁ、あッ、あ、あッぃ、くぅ────ッ!」

それと同時、プシュッと前から透明の何かが激しく吹き出した。
暑さと快感と恐怖で酸欠になりそうになりながら、後ろにいるヴァシムの首元に頭を擦り付けぐったりと身体を預ける。そうすれば指でつい、と顎を掬い取られ再び口付けられた。
「っ、んぅ…ッ──!」
ぶるぶるっと身体が震えて、最後の駄目押しとばかりに前から全てが吐き出される。
粗相をした時のように股座がびちゃびちゃに濡れているが、今はそれを気にする余裕もない。当然足元も酷い有様にになっていたが、この水溜りが自分の物だとは暫く理解ができなかった。


深い口付けから解放された唇に銀の糸がつうと伝う。
「ぁ…、」
余韻に浸るように小さく息を吐いたと同時。
───ぐう、と。
どこから、と考えるまでもなく薄っぺらい自身の腹から聞いたこともないような腹の音が聞こえる。
そう言えば昨夜から今まで食べ物を口にしていない。
流石に腹が減って当然とも思うが、実のところ一日一食か二食の生活が長かったせいですっかり食が細くなり、腹の虫が鳴るほど「何かを食べたい」と思った事はあまりなかったのだ。
極端に言えば意識が朦朧とした時に食えば良いか、程度にしか食に興味がない。
「トーゴ」
そんな事をぼんやり思っていれば、すり、と後ろから首元に顔を埋められる。
ヴァシムの艶やかな髪が肩に垂れて擽ったい。
そう言えば、ヴァシムにこうやって抱きしめられるのはあまり好きじゃなかったな、と思い出す。まるで、鳥籠に入れられたようだと思ってしまうからなのだが、どうしてだか先ほどまで気にもしなかった。
今も苦しくはあるが、会社に身を捧げていた時のように「息ができない」とは感じない。

「お前はもっと欲しい、と言って良いんだ」

すぐ近くで聞こえてきたヴァシムの声に振り返る。
顔を埋めているせいでヴァシムがどんな表情をしているのかわからない。だが、何もかもを諦めてきた心に水を与えていいのだと、そう祈っているかのように思えた。
(欲しいものなんて)
求めた事もないし、求めようとも思わなかった。
お金、休日、睡眠時間、友達、彼女、優しさ、温もり──

「……ごはん」

と、お風呂。それは初めて誰かに訴えた我儘だったのかもしれない。
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