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第五章 田中天狼のシリアスな日常・怪奇?編
行方彩女のシリアスな体験談
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行方会長は、お茶を一啜りすると、重い口を開いた。
「あの日――、私は残務があった関係で、一人この部屋に残って作業をしていた。大体――午後9時を回ったくらいかな……。やっと作業が終わって、下校しようとして、部活棟の前を通りかかったんだ」
生徒会室にいる者全員、咳ひとつせず、会長の言葉に耳を傾けている。
「ふと、部活棟を見上げたら、全生徒が下校していて、誰も居ないはずの部活棟の窓に、丸くて黄色い、ぼんやりしたひとつの光が見えたんだ。――2階の……213号室の窓だった」
誰かが、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。
「私は、生徒の誰かが残って、部室棟で遊んでいるのか、或いは、良からぬ輩が校内に潜んで、悪事を働こうとしているのかと考えたんだ」
「――で、ひとりで見に行ったんですか、会長?」
「ああ――。もっとも、今考え直すと、無謀極まる愚挙だったと反省しているがね」
「まったくですよ、会長! いくらご自身がお強いからといって、たった一人で――」
武杉副会長が、憤然と言う。
「そう。武杉くんの言う通り、本当に愚かよ、彩女さん」
「君もか……手厳しいね」
「手厳しい事も言います。武道を嗜む者として、ね」
撫子先輩は、行方会長の目をジッと見据えて、蕩々と言い聞かせる。
「いくら腕が立つからといって、それに慢心して、危険な状況へ自ら飛び込むような真似をするのは、ただの蛮勇です。本当に“強い”者は、その境を見極めて、決して危地へは立ち入らないものなのですよ。――ましてや、貴女は女の子ではありませんか、彩女さん」
「女の子……いや、確かにそうだな」
会長は、苦笑した。
「いやあ、最近ではとんと女子扱いされなさ過ぎたせいで、自分でも忘れていたよ――」
「彩女さん! 常々思ってましたが、貴女には色々と自覚が足りません。貴女は、唯の17歳の女の子ですし、万が一貴女の身に何かあった時に心配する人も、悲しむ人も、沢山居るんです! 現に、ここ――!」
「いや、お小言は後にしてくれ、撫子。……これでも、散々武杉にお灸を据えられて、結構参っているんだ、今回の件でな」
会長は、立ち上がって言葉を荒げる撫子先輩を、手を上げて制する。
撫子先輩は、大きなため息を吐くと、不承不承ソファに腰を下ろした。
「――では、話を続けさせて貰うよ。と、ドコまで話したか……そうそう。――私は、その光の正体を確かめようと部活棟の中に入ったんだ。213号室のドアの前まで来たが、鍵は閉まっていた」
と、俺は、着ている制服の感触に違和感を感じた。ちらっと見ると、隣の春夏秋冬が、顔を強張らせながら、俺の制服の裾をしっかりと握っていた。
……俺は、さりげなく目を前に戻して、気付かないフリ。
――心臓はバクバク派手な音を立てていたけど……。
行方会長の話は続く。
「私は、部活棟に入る前に、生徒会室から部活棟の鍵束を持ち出していたから、213号室のキーを探してドアを開けた……。で、部屋の中に入ったのだが、さっき言ったように、室内は雑多な物でいっぱいで、中に進むのも一苦労といった感じだった」
「鍵は――かかっていました?」
「ああ。この生徒会室や、通常の教室と同じ引き戸タイプだが、鍵は――うん、しっかりと掛かっていたよ」
矢的先輩の問いに、行方会長は、思い出しながら答える。
「――私は、スマホのカメラライトを点けて、内部を照らしてみた。……室内の電気は、蛍光灯を取り外していた為に、点けられなかったからな。――と、突然、キラリと、光の玉が二つきらめいたかと思うと、フーッという、空気が吹き出すような音がして……」
「何かが私に飛びかかってきた!」
「キャ――ッ!」
「!」
突然、大声を上げた会長の声に、春夏秋冬が悲鳴を上げ、俺の腕にしがみついた! 会長の声と、左腕の柔らかい感触に、俺の心臓も跳ね上がった。
「…………で、その、何か、とは?」
ゴクリと生唾を飲みながら、矢的先輩が問う。その傍らでは、撫子先輩が――目をギュッと閉じ、耳を両手で固く塞いで、背中を丸めている……意外と恐がりだったんだ、撫子先輩……。
行方会長は、また一啜りお茶を飲むと、ブレザーのポケットからピンク色のスマホを取り出し、画面を表示させると、こちら側へ向けて差し出した。
「――その時、偶然シャッターを押していたようで、撮影された画像が――これだ」
俺と春夏秋冬、そして矢的先輩は、顔を見合わせると、行方先輩から受け取ったスマホを恐る恐る覗き込む。
「――――!」
画面いっぱいに、爛々と金色に光る目を飛び出さんばかりに見開き、牙を剥きだして飛びかかろうとしている、一匹の獣の顔が映っていたぁっ!
「こ……………………これって――――!?」
俺たちは、スマホから顔を上げると、行方会長に向かって一斉に叫んだ。
「「「ネコじゃんっ!!」」」
「あの日――、私は残務があった関係で、一人この部屋に残って作業をしていた。大体――午後9時を回ったくらいかな……。やっと作業が終わって、下校しようとして、部活棟の前を通りかかったんだ」
生徒会室にいる者全員、咳ひとつせず、会長の言葉に耳を傾けている。
「ふと、部活棟を見上げたら、全生徒が下校していて、誰も居ないはずの部活棟の窓に、丸くて黄色い、ぼんやりしたひとつの光が見えたんだ。――2階の……213号室の窓だった」
誰かが、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。
「私は、生徒の誰かが残って、部室棟で遊んでいるのか、或いは、良からぬ輩が校内に潜んで、悪事を働こうとしているのかと考えたんだ」
「――で、ひとりで見に行ったんですか、会長?」
「ああ――。もっとも、今考え直すと、無謀極まる愚挙だったと反省しているがね」
「まったくですよ、会長! いくらご自身がお強いからといって、たった一人で――」
武杉副会長が、憤然と言う。
「そう。武杉くんの言う通り、本当に愚かよ、彩女さん」
「君もか……手厳しいね」
「手厳しい事も言います。武道を嗜む者として、ね」
撫子先輩は、行方会長の目をジッと見据えて、蕩々と言い聞かせる。
「いくら腕が立つからといって、それに慢心して、危険な状況へ自ら飛び込むような真似をするのは、ただの蛮勇です。本当に“強い”者は、その境を見極めて、決して危地へは立ち入らないものなのですよ。――ましてや、貴女は女の子ではありませんか、彩女さん」
「女の子……いや、確かにそうだな」
会長は、苦笑した。
「いやあ、最近ではとんと女子扱いされなさ過ぎたせいで、自分でも忘れていたよ――」
「彩女さん! 常々思ってましたが、貴女には色々と自覚が足りません。貴女は、唯の17歳の女の子ですし、万が一貴女の身に何かあった時に心配する人も、悲しむ人も、沢山居るんです! 現に、ここ――!」
「いや、お小言は後にしてくれ、撫子。……これでも、散々武杉にお灸を据えられて、結構参っているんだ、今回の件でな」
会長は、立ち上がって言葉を荒げる撫子先輩を、手を上げて制する。
撫子先輩は、大きなため息を吐くと、不承不承ソファに腰を下ろした。
「――では、話を続けさせて貰うよ。と、ドコまで話したか……そうそう。――私は、その光の正体を確かめようと部活棟の中に入ったんだ。213号室のドアの前まで来たが、鍵は閉まっていた」
と、俺は、着ている制服の感触に違和感を感じた。ちらっと見ると、隣の春夏秋冬が、顔を強張らせながら、俺の制服の裾をしっかりと握っていた。
……俺は、さりげなく目を前に戻して、気付かないフリ。
――心臓はバクバク派手な音を立てていたけど……。
行方会長の話は続く。
「私は、部活棟に入る前に、生徒会室から部活棟の鍵束を持ち出していたから、213号室のキーを探してドアを開けた……。で、部屋の中に入ったのだが、さっき言ったように、室内は雑多な物でいっぱいで、中に進むのも一苦労といった感じだった」
「鍵は――かかっていました?」
「ああ。この生徒会室や、通常の教室と同じ引き戸タイプだが、鍵は――うん、しっかりと掛かっていたよ」
矢的先輩の問いに、行方会長は、思い出しながら答える。
「――私は、スマホのカメラライトを点けて、内部を照らしてみた。……室内の電気は、蛍光灯を取り外していた為に、点けられなかったからな。――と、突然、キラリと、光の玉が二つきらめいたかと思うと、フーッという、空気が吹き出すような音がして……」
「何かが私に飛びかかってきた!」
「キャ――ッ!」
「!」
突然、大声を上げた会長の声に、春夏秋冬が悲鳴を上げ、俺の腕にしがみついた! 会長の声と、左腕の柔らかい感触に、俺の心臓も跳ね上がった。
「…………で、その、何か、とは?」
ゴクリと生唾を飲みながら、矢的先輩が問う。その傍らでは、撫子先輩が――目をギュッと閉じ、耳を両手で固く塞いで、背中を丸めている……意外と恐がりだったんだ、撫子先輩……。
行方会長は、また一啜りお茶を飲むと、ブレザーのポケットからピンク色のスマホを取り出し、画面を表示させると、こちら側へ向けて差し出した。
「――その時、偶然シャッターを押していたようで、撮影された画像が――これだ」
俺と春夏秋冬、そして矢的先輩は、顔を見合わせると、行方先輩から受け取ったスマホを恐る恐る覗き込む。
「――――!」
画面いっぱいに、爛々と金色に光る目を飛び出さんばかりに見開き、牙を剥きだして飛びかかろうとしている、一匹の獣の顔が映っていたぁっ!
「こ……………………これって――――!?」
俺たちは、スマホから顔を上げると、行方会長に向かって一斉に叫んだ。
「「「ネコじゃんっ!!」」」
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