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第九章 Lakeside Woman Blues
水と炎
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「火を統べし フェイムの息吹 命の炎! 我が手に宿り 全てを燃やせッ!」
咄嗟に横に跳んで、水龍の奇襲を避けたアザレアが、長鞭をしごいて聖句を唱える。黒い鞭が炎を纏った炎鞭と化し、唸りを上げて水龍の顔面を打ち据えんとする。
が、水龍はその口を大きく開き、
「シャアアアアアア――ッ!」
と、奇声と共に、喉の奥から猛烈な勢いの水流を吐き出した。
アザレアと水龍の中間で、炎と水が激しく衝突し、辺りは夥しい水蒸気で覆い尽くされる。アザレアは、歯を食いしばって、鞭を握る手に力を込める。
が、水と炎の勝負は、水に軍配が上がった。炎鞭の炎を、圧倒的な水量で消し切った白い水流が、勢いを増して、アザレアに向かって迫る。
「――――クッ!」
アザレアは、必死で身を捩り、水流の直撃を避ける。彼女を仕留め損なった水流は、彼女の背後の壁に当たり、壁を大きく穿った。
「噛み付きだけじゃ無くて、飛び道具まで持ってんのかよ!」
という、驚愕したジャスミンの声に反応した水龍が一頭、ギロリと目を動かす。
「あら……気付かれちった感じ――?」
冷や汗を垂らして苦笑いするジャスミン目がけて、やや小ぶりな水龍が水流を吐き出す。
「あっぶな!」
ジャスミンは、無ジンノヤイバの光の剣身を傘に変えて、水流に向かって差した。激しい水流のビームが、マゼンタ色に輝く光の傘に当たり、ジャスミンはその凄まじい水圧に押されて、二・三歩後ずさる。
「ぐ……こ――なクソぉっ!」
ジャスミンは、歯を食いしばりながら、必死で傘の角度をずらし、正面で受け止める水流の勢いをいなした。水流の軌道を逸らしたジャスミンは、低い姿勢で水龍の側面に自身の身体をグルグル回転させながら回り込み、戦槌型へ形態変化させた無ジンノヤイバを大きく振りかぶる。
「どっっっせええええーいっ!」
回転によって生じた遠心力を上乗せして、渾身の力を込めたジャスミンの一撃がこめかみに炸裂し、水龍の黄色い目がぐるんと裏返り、ドウッと大きな音を立てて倒れ臥す。
「パ――――ムッ!」
「は――ハイッ!」
ジャスミンは、肩で息をしながら、大声でパームを呼びつける。慌てふためいて、這いずりながらパームがジャスミンの傍らへ来る。
「コイツにミソギを! ――早くッ!」
「あ――は、ハイッ!」
パームは、ジャスミンの意図を即座に汲み取ると、昏倒している水龍の眉間に右手を翳し、目を瞑って聖句を唱える。
「ブシャムの聖眼 宿る右の掌 紅き月 集いし雄氣《ゆうき》 邪気を滅する!」
一瞬、右掌が赤く瞬き、水龍はビクンッと身体を大きく痙攣させた後、ピクリとも動かなくなった。
「……これで、当分は大丈夫だと……思います」
「おっけー……って、やっと一匹か……」
しかも、仕留めたのは、この場で暴れる四匹の水龍の内でもっとも小柄な個体だ。
ジャスミンとパームは、ウンザリした顔を見合わせ――
「――何ボサッとしてんのよ、二人ともっ!」
「「――!」」
アザレアの絶叫に、ハッとして顔を上げたふたりの視界に、口を大きく広げ、今まさに水撃流を放たんとする、水龍の巨大な顔が飛び込んできた。
「や――やばっ!」
慌てて体勢を整えようとするが、間に合わない――!
ふたりを見据えた水龍の目が、ニヤリと嘲笑った気がした。
終わった――
「地を奔る フェイムの息吹 命の火! 我が手を離れ 壁を成せッ!」
アザレアの詠唱がふたりの耳に届いた瞬間、彼らと水龍の間に、紅蓮の炎の巨大な壁が屹立した。
「キアアアアアアアッ!」
突然眼前に現れ、身を焦がす炎の障壁に、水龍は怯み、悲鳴のような咆哮を上げる。
「火を統べし フェイムの息吹 命の炎! 我が手に宿り 全てを燃やせッ!」
すかさず、次の聖句を唱え、アザレアが振るった炎鞭が、水龍の太い首に巻き付く。
「ギャアアアアアアアアアッ!」
炎鞭に皮膚を焼かれ、水龍は苦悶の咆哮を上げる。
アザレアは、その隙を逃さず、一気に水龍に接近すると長鞭の柄を手放し、真紅の前髪を一房左手で掴むと、胸元から取り出したナイフで切り取った。
「火の女神 フェイムの魂 猛る火炎……」
アザレアは、切り取った一房の髪の毛を高々と掲げ、新たな聖句を唱え始める。
「我が身に宿り 千々に爆ぜ散れッ!」
叫ぶやいなや、彼女は手にした髪を、悶絶する水龍の口の中に向けて投げ込んだ。
紅い髪は、水龍の口中に入る寸前に、燃え上がる炎に包まれ、水龍の喉奥で目映く光り、大爆発を起こした!
「ガ……ガア…………ガアア――!」
爆発に喉と口を灼き尽くされた水龍は、口からブスブスと黒い煙を上げながら、力なく首を項垂れる。
「……これで、二匹ね」
アザレアは、ふーっと息を吐いて、茫然としているジャスミンとパームに向かってウインクをした。
「……つか、そんなヤバい技を隠してたのかよ、アザリー……」
……もう、下手な事を言って、彼女の逆鱗に触れるのは止そう……。ジャスミンは、心中密かにそう誓うのだった――。
咄嗟に横に跳んで、水龍の奇襲を避けたアザレアが、長鞭をしごいて聖句を唱える。黒い鞭が炎を纏った炎鞭と化し、唸りを上げて水龍の顔面を打ち据えんとする。
が、水龍はその口を大きく開き、
「シャアアアアアア――ッ!」
と、奇声と共に、喉の奥から猛烈な勢いの水流を吐き出した。
アザレアと水龍の中間で、炎と水が激しく衝突し、辺りは夥しい水蒸気で覆い尽くされる。アザレアは、歯を食いしばって、鞭を握る手に力を込める。
が、水と炎の勝負は、水に軍配が上がった。炎鞭の炎を、圧倒的な水量で消し切った白い水流が、勢いを増して、アザレアに向かって迫る。
「――――クッ!」
アザレアは、必死で身を捩り、水流の直撃を避ける。彼女を仕留め損なった水流は、彼女の背後の壁に当たり、壁を大きく穿った。
「噛み付きだけじゃ無くて、飛び道具まで持ってんのかよ!」
という、驚愕したジャスミンの声に反応した水龍が一頭、ギロリと目を動かす。
「あら……気付かれちった感じ――?」
冷や汗を垂らして苦笑いするジャスミン目がけて、やや小ぶりな水龍が水流を吐き出す。
「あっぶな!」
ジャスミンは、無ジンノヤイバの光の剣身を傘に変えて、水流に向かって差した。激しい水流のビームが、マゼンタ色に輝く光の傘に当たり、ジャスミンはその凄まじい水圧に押されて、二・三歩後ずさる。
「ぐ……こ――なクソぉっ!」
ジャスミンは、歯を食いしばりながら、必死で傘の角度をずらし、正面で受け止める水流の勢いをいなした。水流の軌道を逸らしたジャスミンは、低い姿勢で水龍の側面に自身の身体をグルグル回転させながら回り込み、戦槌型へ形態変化させた無ジンノヤイバを大きく振りかぶる。
「どっっっせええええーいっ!」
回転によって生じた遠心力を上乗せして、渾身の力を込めたジャスミンの一撃がこめかみに炸裂し、水龍の黄色い目がぐるんと裏返り、ドウッと大きな音を立てて倒れ臥す。
「パ――――ムッ!」
「は――ハイッ!」
ジャスミンは、肩で息をしながら、大声でパームを呼びつける。慌てふためいて、這いずりながらパームがジャスミンの傍らへ来る。
「コイツにミソギを! ――早くッ!」
「あ――は、ハイッ!」
パームは、ジャスミンの意図を即座に汲み取ると、昏倒している水龍の眉間に右手を翳し、目を瞑って聖句を唱える。
「ブシャムの聖眼 宿る右の掌 紅き月 集いし雄氣《ゆうき》 邪気を滅する!」
一瞬、右掌が赤く瞬き、水龍はビクンッと身体を大きく痙攣させた後、ピクリとも動かなくなった。
「……これで、当分は大丈夫だと……思います」
「おっけー……って、やっと一匹か……」
しかも、仕留めたのは、この場で暴れる四匹の水龍の内でもっとも小柄な個体だ。
ジャスミンとパームは、ウンザリした顔を見合わせ――
「――何ボサッとしてんのよ、二人ともっ!」
「「――!」」
アザレアの絶叫に、ハッとして顔を上げたふたりの視界に、口を大きく広げ、今まさに水撃流を放たんとする、水龍の巨大な顔が飛び込んできた。
「や――やばっ!」
慌てて体勢を整えようとするが、間に合わない――!
ふたりを見据えた水龍の目が、ニヤリと嘲笑った気がした。
終わった――
「地を奔る フェイムの息吹 命の火! 我が手を離れ 壁を成せッ!」
アザレアの詠唱がふたりの耳に届いた瞬間、彼らと水龍の間に、紅蓮の炎の巨大な壁が屹立した。
「キアアアアアアアッ!」
突然眼前に現れ、身を焦がす炎の障壁に、水龍は怯み、悲鳴のような咆哮を上げる。
「火を統べし フェイムの息吹 命の炎! 我が手に宿り 全てを燃やせッ!」
すかさず、次の聖句を唱え、アザレアが振るった炎鞭が、水龍の太い首に巻き付く。
「ギャアアアアアアアアアッ!」
炎鞭に皮膚を焼かれ、水龍は苦悶の咆哮を上げる。
アザレアは、その隙を逃さず、一気に水龍に接近すると長鞭の柄を手放し、真紅の前髪を一房左手で掴むと、胸元から取り出したナイフで切り取った。
「火の女神 フェイムの魂 猛る火炎……」
アザレアは、切り取った一房の髪の毛を高々と掲げ、新たな聖句を唱え始める。
「我が身に宿り 千々に爆ぜ散れッ!」
叫ぶやいなや、彼女は手にした髪を、悶絶する水龍の口の中に向けて投げ込んだ。
紅い髪は、水龍の口中に入る寸前に、燃え上がる炎に包まれ、水龍の喉奥で目映く光り、大爆発を起こした!
「ガ……ガア…………ガアア――!」
爆発に喉と口を灼き尽くされた水龍は、口からブスブスと黒い煙を上げながら、力なく首を項垂れる。
「……これで、二匹ね」
アザレアは、ふーっと息を吐いて、茫然としているジャスミンとパームに向かってウインクをした。
「……つか、そんなヤバい技を隠してたのかよ、アザリー……」
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