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第十二章 アザレアBABY
決着と接吻
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夥しいマゼンタ色の光の奔流は、仮面の者の腹に食い込み、その身体を宙に浮かし、後方の壁に押し付けた。
「ガ――はぁッ!」
無ジンノヤイバの光の刀身と漆喰の壁との間に挟まれて、仮面の下の表情が苦悶で歪む。胃を圧迫され、夥しい胃液を吐き出した。
背後の壁がミシミシと嫌な音を立てる。仮面の男の身体を壁に押し付けてなお、無ジンノヤイバは、一向にその勢いを緩めないのだ。
(こ――このままでは……某の腹が……潰れる!)
仮面の者の目が、恐怖で飛び出さんばかりに見開かれた。
「――た――たす――!」
その口から、遂に懇願の言葉が漏れ出る。
「……た、すけ……たすけ……」
――と、仮面の者を壁に、文字通り“釘付け”にしていたマゼンタ色の光が、フッと掻き消えた。
あっ、と思う間もなく、自由になった仮面の者の身体は重力に引かれる。
仮面の者が張り付けられていた壁は、床から2階程度の高さだったが、恐怖で身体が硬直していた為、受け身をとる事もできず、無防備な状態で床へ叩きつけられる。
「ぐっ! ……ふう……ふう……」
激しい衝撃と同時に、目の前が真っ白になり、その後真っ黒になった。――どうやら、落下の際に顔面を強打してしまったようだ……と、その後に訪れた激しい鼻頭の痛みに悶絶しながらも、頭の片隅の冷えた部分で、自身の置かれた状況を分析する。
――と、
「――ッ?」
突然――仮面の者は立ち上がった。……自分でではない。襟首を掴まれて、強引に立ち上がらされたのだ。
「勝負あり、って事で良いかな?」
「……ああ……そのよう――だ……」
至近距離でギラギラと輝く、二つ並んだ黒曜石の輝きを歪んだ視界で認めながら、朦朧とした意識の中で仮面の者は小さく頷いた。
「……見事……だ。す、すっかり……騙された。――貴様の光の刃が出ないというのは――全部、芝居だった……のか?」
「……まあ、ね。もっとも、底に近かったのは確かだけど。だから、最後の一撃の途中で、魂切れしちゃった」
仮面の者の襟首を左手で掴み、右手でクナイをその首筋に擬しながら、ジャスミンはニヘラアと、締まりのない微笑みを浮かべる。
仮面の者は、ククク……と、掠れた声で笑った。
「お主……ジャスミンとか言ったか……。その騙しの才能……忍びに向いてるやもしれぬな」
「褒め言葉として、受け取っておくよ」
「……ふふふ」
「へへへへへ」
お互いに笑い合うふたり。――と、
「……トドメを、刺せ。……ジャスミン」
仮面の者は、その仮面の奥の瞳に、真剣な光を湛えて言った。
その言葉を受けたジャスミンは――何も言わずに、その目を真っ直ぐ見返していた。
「……某は、お主に負けた。お主には、某を屠る権利と――義務がある」
「……要らないよ、そんな権利も義務も」
「――某に生き恥をさらせというのか! 負けた身でおめおめと生き続けるくらいなら、今この場で、潔い死を――!」
「あーもう、五月蠅いなあ! 分かったよ! そんなに言うなら、俺が引導を渡してやるよ!」
耳元で盛んに喚き立てる仮面の男に業を煮やした様子で、ジャスミンは叫んだ。
それを聞いた男は、小さく頷き、ジャスミンがクナイを突き立てやすいように、心持ち顎を上げる。
――ジャスミンは、ニヤリと笑って、宣告した。
「じゃあ、行くぜ。――これが、お前の最期だ! …………男としてのな!」
「……へ?」
ジャスミンの言葉に違和感を感じた仮面の者が聞き返そうとした瞬間、ジャスミンの手が伸び、被っていた仮面を引き剥がした。
そして――、
「な――何を……って――!」
ジャスミンに問い質そうとした仮面の者の視界に、接近するジャスミンの端正な貌が映り――、
次の瞬間、何か柔らかいものが、自分の唇に押し付けられたのを感じた。
「! ――? ――! ッ! ……ンッ!」
目を見開き、何とか逃れようと藻掻くが、その身体はジャスミンにガッチリと抱き締められていて、逃れる事が能わない。
数十秒――元仮面の男にとっては数時間にも考えられた時間を経て、ようやくジャスミンの抱擁から脱出した。
慌てて、口元に手を遣り、真っ赤に上気した顔で、目の前の茶髪の色事師を睨みつける。
眼前の初接吻の相手は、ニコリと微笑みかけてきた。
「……おいおい、そんな怖い顔で睨むなよ? 可愛い顔が台無しだぜ?」
「お……お主ッ! な……何て事をする……い、いや! 何時から気付いていたのだ? ――某が……女だという事に!」
彼……いや、彼女は、必死でその小ぶりの唇を指で拭いながら、ジャスミンを睨みつける。
すると、ジャスミンは頭を掻きながら、にへらあと、締まりのない笑みを浮かべてみせた。
「何時から……う~ん、ダリア山に着いた辺りかな?」
「そ――そんなに前から?」
ジャスミンの答えに愕然とする彼女。が、キッと柳眉を上げると、厳しい口調で彼を問い詰める。
「じゃ、じゃあ、何故今まで黙っていた! 知らぬフリをして、腹の中で某を嗤っておったのか!」
「何故って……そりゃあ」
そう呟くように言うと、ジャスミンは、キリッとした表情になり、ニヒルに笑った。口の端から覗いた白い歯が、目映い光を放つ。
「――女の嘘には、黙って騙されてやるのが、男の甲斐性だからさ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あ、あの、すみません……。ちょっと、沈黙されるとキツいんですけど……」
「……何だ只の馬鹿か」
「――オイィッ!」
彼女の辛辣な一言に、盛大にコケるジャスミン。
「――く、くふふふふ……あはははは!」
彼女は、突然笑い出した。心の底から愉快そうに。
「あはははは……あー、おかしい。――まったく……お主のせいで、すっかり馬鹿馬鹿しくなった」
彼女は、目尻に浮いた透明な玉を拭うと、ニコリと微笑んだ。
「お主なんかに負けて、死んでやるのも癪だ。止めた止めた!」
そう叫ぶと、彼女は謁見の間の階の奥を指さした。
「……アザレア様と団長は、あの奥の隠し廊下を抜けた先の部屋だ」
「――!」
それを聞いたジャスミンの顔が引き締まる。
そんな彼の様子を、複雑な感情が入り交じる瞳で見ながら、彼女は言った。
「――アザレア様が、お主を気にかけている理由も、何となく解る気がする。……頼む。アザレア様を助けてあげてくれ」
「……当然!」
目に一層の力を込めて、ジャスミンは大きく頷く。階に向かって走り出――そうとして、ふと立ち止まると、彼女の方を向いた。
「……ああ、そう言えば」
「……何だ?」
「キミの名前を聞いてなかった」
「……今更か?」
彼女は、思わず吹き出した。
「お主、『ダリア傭兵団からの刺客だってだけで充分だ』とか、言っていなかったか?」
「男ならな」
ジャスミンは、ニヤリと笑った。
「女の子なら、話は全然別だよ。特に、可愛い子なら、ね」
「……第十二代・半藤佐助。それが、某の名だ」
『可愛い』と言われて、思わず顔を朱に染めながら、佐助は名乗った。――が、ジャスミンは首を横に振った。
「違う違う。そういう――“第何代”みたいな、世襲の名前なんかじゃなくってさ。キミの本当の名前、教えてよ?」
「……一華――半藤一華……それが、某の本名――だ」
「イチカ……イチカ……うん、いい名前だな」
ジャスミンは、目を細めてニッコリと微笑んだ。そして、彼女の右腕を指さして言った。
「ゴメンな、右腕に穴を開けちゃって。でも、その内パーム達がここに来るからさ。アイツにハラエをしてもらえば、すぐに治ると思うから。ちょっと待っててくれ」
そう言うと、ジャスミンはイチカに背を向け、走り出――そうとして、もう一度振り返った。
「どうした? 早く行かないと、アザレア様が――」
「もう一つ言い忘れてた!」
「言い忘れていた? 何をだ?」
首を傾げるイチカに、ジャスミンはウインクして言った。
「イチカ! キミの笑った顔が可愛かった! 以上!」
「は――? な――? え――? ……ッ!」
ジャスミンの言葉に、イチカが仰天して目を白黒させている間に、彼は階の奥の闇へと消えていった。
イチカは、しばらく目を丸くして佇んでいたが、やがてヘナヘナとその場にへたり込んだ。無意識に、自分の左胸に手を置く。
嘗てない速さで、心臓がドクドクと拍動しているのが分かった。
暫しの間、イチカは頬を真っ赤に染めて、千々に乱れた己の心に翻弄され続けるのだった。
「ガ――はぁッ!」
無ジンノヤイバの光の刀身と漆喰の壁との間に挟まれて、仮面の下の表情が苦悶で歪む。胃を圧迫され、夥しい胃液を吐き出した。
背後の壁がミシミシと嫌な音を立てる。仮面の男の身体を壁に押し付けてなお、無ジンノヤイバは、一向にその勢いを緩めないのだ。
(こ――このままでは……某の腹が……潰れる!)
仮面の者の目が、恐怖で飛び出さんばかりに見開かれた。
「――た――たす――!」
その口から、遂に懇願の言葉が漏れ出る。
「……た、すけ……たすけ……」
――と、仮面の者を壁に、文字通り“釘付け”にしていたマゼンタ色の光が、フッと掻き消えた。
あっ、と思う間もなく、自由になった仮面の者の身体は重力に引かれる。
仮面の者が張り付けられていた壁は、床から2階程度の高さだったが、恐怖で身体が硬直していた為、受け身をとる事もできず、無防備な状態で床へ叩きつけられる。
「ぐっ! ……ふう……ふう……」
激しい衝撃と同時に、目の前が真っ白になり、その後真っ黒になった。――どうやら、落下の際に顔面を強打してしまったようだ……と、その後に訪れた激しい鼻頭の痛みに悶絶しながらも、頭の片隅の冷えた部分で、自身の置かれた状況を分析する。
――と、
「――ッ?」
突然――仮面の者は立ち上がった。……自分でではない。襟首を掴まれて、強引に立ち上がらされたのだ。
「勝負あり、って事で良いかな?」
「……ああ……そのよう――だ……」
至近距離でギラギラと輝く、二つ並んだ黒曜石の輝きを歪んだ視界で認めながら、朦朧とした意識の中で仮面の者は小さく頷いた。
「……見事……だ。す、すっかり……騙された。――貴様の光の刃が出ないというのは――全部、芝居だった……のか?」
「……まあ、ね。もっとも、底に近かったのは確かだけど。だから、最後の一撃の途中で、魂切れしちゃった」
仮面の者の襟首を左手で掴み、右手でクナイをその首筋に擬しながら、ジャスミンはニヘラアと、締まりのない微笑みを浮かべる。
仮面の者は、ククク……と、掠れた声で笑った。
「お主……ジャスミンとか言ったか……。その騙しの才能……忍びに向いてるやもしれぬな」
「褒め言葉として、受け取っておくよ」
「……ふふふ」
「へへへへへ」
お互いに笑い合うふたり。――と、
「……トドメを、刺せ。……ジャスミン」
仮面の者は、その仮面の奥の瞳に、真剣な光を湛えて言った。
その言葉を受けたジャスミンは――何も言わずに、その目を真っ直ぐ見返していた。
「……某は、お主に負けた。お主には、某を屠る権利と――義務がある」
「……要らないよ、そんな権利も義務も」
「――某に生き恥をさらせというのか! 負けた身でおめおめと生き続けるくらいなら、今この場で、潔い死を――!」
「あーもう、五月蠅いなあ! 分かったよ! そんなに言うなら、俺が引導を渡してやるよ!」
耳元で盛んに喚き立てる仮面の男に業を煮やした様子で、ジャスミンは叫んだ。
それを聞いた男は、小さく頷き、ジャスミンがクナイを突き立てやすいように、心持ち顎を上げる。
――ジャスミンは、ニヤリと笑って、宣告した。
「じゃあ、行くぜ。――これが、お前の最期だ! …………男としてのな!」
「……へ?」
ジャスミンの言葉に違和感を感じた仮面の者が聞き返そうとした瞬間、ジャスミンの手が伸び、被っていた仮面を引き剥がした。
そして――、
「な――何を……って――!」
ジャスミンに問い質そうとした仮面の者の視界に、接近するジャスミンの端正な貌が映り――、
次の瞬間、何か柔らかいものが、自分の唇に押し付けられたのを感じた。
「! ――? ――! ッ! ……ンッ!」
目を見開き、何とか逃れようと藻掻くが、その身体はジャスミンにガッチリと抱き締められていて、逃れる事が能わない。
数十秒――元仮面の男にとっては数時間にも考えられた時間を経て、ようやくジャスミンの抱擁から脱出した。
慌てて、口元に手を遣り、真っ赤に上気した顔で、目の前の茶髪の色事師を睨みつける。
眼前の初接吻の相手は、ニコリと微笑みかけてきた。
「……おいおい、そんな怖い顔で睨むなよ? 可愛い顔が台無しだぜ?」
「お……お主ッ! な……何て事をする……い、いや! 何時から気付いていたのだ? ――某が……女だという事に!」
彼……いや、彼女は、必死でその小ぶりの唇を指で拭いながら、ジャスミンを睨みつける。
すると、ジャスミンは頭を掻きながら、にへらあと、締まりのない笑みを浮かべてみせた。
「何時から……う~ん、ダリア山に着いた辺りかな?」
「そ――そんなに前から?」
ジャスミンの答えに愕然とする彼女。が、キッと柳眉を上げると、厳しい口調で彼を問い詰める。
「じゃ、じゃあ、何故今まで黙っていた! 知らぬフリをして、腹の中で某を嗤っておったのか!」
「何故って……そりゃあ」
そう呟くように言うと、ジャスミンは、キリッとした表情になり、ニヒルに笑った。口の端から覗いた白い歯が、目映い光を放つ。
「――女の嘘には、黙って騙されてやるのが、男の甲斐性だからさ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あ、あの、すみません……。ちょっと、沈黙されるとキツいんですけど……」
「……何だ只の馬鹿か」
「――オイィッ!」
彼女の辛辣な一言に、盛大にコケるジャスミン。
「――く、くふふふふ……あはははは!」
彼女は、突然笑い出した。心の底から愉快そうに。
「あはははは……あー、おかしい。――まったく……お主のせいで、すっかり馬鹿馬鹿しくなった」
彼女は、目尻に浮いた透明な玉を拭うと、ニコリと微笑んだ。
「お主なんかに負けて、死んでやるのも癪だ。止めた止めた!」
そう叫ぶと、彼女は謁見の間の階の奥を指さした。
「……アザレア様と団長は、あの奥の隠し廊下を抜けた先の部屋だ」
「――!」
それを聞いたジャスミンの顔が引き締まる。
そんな彼の様子を、複雑な感情が入り交じる瞳で見ながら、彼女は言った。
「――アザレア様が、お主を気にかけている理由も、何となく解る気がする。……頼む。アザレア様を助けてあげてくれ」
「……当然!」
目に一層の力を込めて、ジャスミンは大きく頷く。階に向かって走り出――そうとして、ふと立ち止まると、彼女の方を向いた。
「……ああ、そう言えば」
「……何だ?」
「キミの名前を聞いてなかった」
「……今更か?」
彼女は、思わず吹き出した。
「お主、『ダリア傭兵団からの刺客だってだけで充分だ』とか、言っていなかったか?」
「男ならな」
ジャスミンは、ニヤリと笑った。
「女の子なら、話は全然別だよ。特に、可愛い子なら、ね」
「……第十二代・半藤佐助。それが、某の名だ」
『可愛い』と言われて、思わず顔を朱に染めながら、佐助は名乗った。――が、ジャスミンは首を横に振った。
「違う違う。そういう――“第何代”みたいな、世襲の名前なんかじゃなくってさ。キミの本当の名前、教えてよ?」
「……一華――半藤一華……それが、某の本名――だ」
「イチカ……イチカ……うん、いい名前だな」
ジャスミンは、目を細めてニッコリと微笑んだ。そして、彼女の右腕を指さして言った。
「ゴメンな、右腕に穴を開けちゃって。でも、その内パーム達がここに来るからさ。アイツにハラエをしてもらえば、すぐに治ると思うから。ちょっと待っててくれ」
そう言うと、ジャスミンはイチカに背を向け、走り出――そうとして、もう一度振り返った。
「どうした? 早く行かないと、アザレア様が――」
「もう一つ言い忘れてた!」
「言い忘れていた? 何をだ?」
首を傾げるイチカに、ジャスミンはウインクして言った。
「イチカ! キミの笑った顔が可愛かった! 以上!」
「は――? な――? え――? ……ッ!」
ジャスミンの言葉に、イチカが仰天して目を白黒させている間に、彼は階の奥の闇へと消えていった。
イチカは、しばらく目を丸くして佇んでいたが、やがてヘナヘナとその場にへたり込んだ。無意識に、自分の左胸に手を置く。
嘗てない速さで、心臓がドクドクと拍動しているのが分かった。
暫しの間、イチカは頬を真っ赤に染めて、千々に乱れた己の心に翻弄され続けるのだった。
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