【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

文字の大きさ
37 / 75
第2章

32・神子様は落ち込む

しおりを挟む

 さすがにこれ以上街を見て回るような気分ではなくて、私はジェラルドとともに神殿へ戻ることになった。
 私の制服は、エルミナさんに後日神殿へ届けてもらように手配するとのことで、少しだけ安心する。
 ジェラルドが買ってくれたワンピースに不満があるわけではない。ただ、制服がないのは不安だった。
 制服だけが、私が異世界から来たことを証明してくれるものだから。

「神子様、本日はお疲れ様でした。ゆっくりとお休みください」

「……うん。ありがと」

 神殿の、私の部屋の扉の前。
 部屋まで送り届けてくれたジェラルドに、私は小さな声でお礼を言った。

 声が暗いと自分でもわかる。
 こんな声では、ジェラルドに余計な心配をかけてしまうとわかっている。

 それでも、反神殿派なる存在にも、ジェラルドに迷惑をかけてばかりの自分にも、ショックを受けてしまって上手く隠せない。

 エミールくんの作ってくれた夕食もあまり喉を通らなかった。
 食事の時、エミールくんが「ボクがあれほど忠告したのにジェラルドにご迷惑をおかけするなんて!」と小言を言ってきたが、それに反応する気力もなかった。
 あまりにも大人しい私の姿に、結果的にエミールくんにまで心配そうな顔をさせてしまったから申し訳ない。

「ジェラルド……ごめんね」

 聞こえるか聞こえないかというくらい小さな声で、私は謝罪を口にする。
 何となく顔を見られなくて、ジェラルドに背を向けて部屋のノブに手をかけた。

「神子さ……」

 何かを言おうとしてか私に呼びかけるジェラルドの声が聞こえる。私に向かって手を伸ばすのが見える。
 だけど、私はそれを見て見ぬふりをして部屋の扉を閉じた。
 
「はぁ……」

 扉に背を預け、ため息をつく。
 そのままズルズルとしゃがみこんで、私は膝を抱えた。

『……あまりため息ばかりついていると、幸せが逃げるぞ?』

「……っ」

 突然気遣うような声が降ってきて、私は再びつきかけていたため息を飲み込んだ。

『何も、落ち込むことはないだろう?』

 顔を上げると、すぐ目の前に神様がいた。
 心配そうに眉を寄せてこちらを見ている。

「……っ落ち込むよ」

 私は、何も出来なかった。
 神様が馬鹿にされたのに。
 私の存在する理由を否定されたのに。
 私にはどうすることも出来なかった。

 それどころか、ジェラルドに迷惑をかけてばかりで……。
 こんな私が、神様の力を奪っている原因を探ることなんてできるのだろうか。考えると苦しい。

 私の気持ちが読めているであろう神様は、そっと私の頭に触れた。
 透けているためか感触はない。それでも、触れられている部分が温かいような気がした。

『君は優しい子だ。僕のために怒ってくれたんだろう? 嬉しいよ』

「……そんなの当たり前でしょ」

 私はむすっとしながらも答えた。

 私が元の世界に帰れるかどうかは、この神様の力にかかっているのだから。
 私たちは、いわば運命共同体だ。

 そう思うものの、さすがに面と向かって言うのは恥ずかしい。だが、よく考えたらこの神様、人の心が読めるのだから、きっとバレているに違いない。
 嬉しそうに目を細めている神様から、私はふいと視線を逸らした。

『人というのは身勝手なものだ。だからこそ、愛おしい。君が気にすることはない』

「なにそれ。慰めてくれてるの?」

 神様の言葉には、慈愛がこもっているように感じられた。
  次の瞬間にはえへんと胸を張るものだから、ミステリアスな雰囲気は霧散したけれど。

『もちろんだとも!』

 この神様は不思議だ。
 子供っぽくふるまったかと思えば、こうして神のような余裕を見せてくる。

『騎士のこともそんなに気にしてやるな。あいつは君を守ることができて喜んでいると思うがな』

「そんな馬鹿な」

 神様の言葉を私は一蹴した。
 さすがにそれは頷けない。
 きっと、ジェラルドは私のおりなど嫌になったに違いない。

『馬鹿じゃないさ。もっと頼ってやれ』

「何言ってるの? もう十分頼っているんだけど」

 そう返した私に、神様はふぅと一つ息を吐き出した。

『あいつも大変だなぁ……』

「ど、どういうことっ?」

 聞き返しても神様は教えてくれなくて、私は一人首をひねった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

喚ばれてないのに異世界召喚されました~不器用な魔王と身代わり少女~

浅海 景
恋愛
一冊の本をきっかけに異世界へと転移してしまった佑那。本来召喚されて現れるはずの救世主だが、誰からも喚ばれていない佑那は賓客として王宮に留まることになった。異世界に慣れてきたある日、魔王が現れ佑那は攫われてしまう。王女の代わりに攫われたと思い込んだ佑那は恩を返すため、身代わりとして振舞おうとする。不器用な魔王と臆病な少女がすれ違いながらも心を通わせていく物語。

【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)
恋愛
突然異世界に召還された平々凡々な女子大生。 勇者になれと言われましたが、嫌なので引きこもらせていただきます。 平凡な女子大生で毎日無気力に過ごしていたけど、バイトの帰り道に突然異世界に召還されちゃった!召還された世界は魔法にドラゴンに、漫画やアニメの世界じゃあるまいし! 影のあるイケメンに助けられ、もふもふ銀狼は超絶イケメンで甘々だし、イケメン王子たちにはからかわれるし。 色んなイケメンに囲まれながら頑張って魔法覚えて戦う、無気力女子大生の成長記録。守りたい大事な人たちが出来るまでのお話。 前半恋愛面少なめです。後半糖度高めになっていきます。 ※この作品は小説家になろうで完結済みです

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~

浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。 御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。 「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」 自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~

百門一新
恋愛
男装の獣師ラビィは『黒大狼のノエル』と暮らしている。彼は、普通の人間には見えない『妖獣』というモノだった。動物と話せる能力を持っている彼女は、幼馴染で副隊長セドリックの兄、総隊長のせいで第三騎士団の専属獣師になることに…!? 「ノエルが他の人にも見えるようになる……?」 総隊長の話を聞いて行動を開始したところ、新たな妖獣との出会いも! そろそろ我慢もぷっつんしそうな幼馴染の副隊長と、じゃじゃ馬でやんちゃすぎるチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~

百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。 放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!? 大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...