再生の賢者 ~スキルポイント目当てで低級奴隷を漁っていたら、再生の賢者と呼ばれるハメに~

鄭 和食

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第1章 転魂流転~ルーベリス~

第8話 森を抜ければそこは……

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 俺はのっそりと立ち上がり、自分の体を確認する。体中痛い……打撲、切り傷、擦り傷、小さな怪我はいくつもあるが、手足は動くし、歩くことにも支障はない。
 ボスウルフの真空刃も〈散弾鎧バラージメイル〉で大方は相殺できたようだ、細かい切り傷は多数あるが。

「寒さ対策に3人分の服を重ね着してたから、多少クッション代わりになったか?」

 今更だが、結構モコモコだ、真空刃で多少切り刻まれてはいるが。
 だが今はそのおかげで暑……くまではないが、崖の上の銀世界ほど寒くはない。15、6度くらいだろうか、重ね着まではしなくてよさそうだ。俺は着たまま、2人分の服を異空間に収納する、楽だ。一番下に着ていた女性の服だけになった。

「服と言っても、鎧下というのかな。男の俺が着ていてもそこまで違和感ないだろう。そんなにすぐ人に会うとも思えないし……」

 目の前には深い森が広がっている。日は出ているはずなのに、森の奥は暗闇が広がっている。と言っても昼くらいだろうし、目が慣れれば行動に支障はないだろう。どこに向かっていいかなんて皆目見当もつかないが、おそらくアレがあるはず、アレを目指そう。目が覚めるか覚めないかという境界線で、微かにだが聞こえたんだ。川のせせらぎが。

「サバイバルの鉄則だよな、水源確保」

 薄いワインみたいなのはあと数本、異空間に収納しているが、それだけでは心許ない。飲める水かどうかはわからないが、煮沸すれば大丈夫だろう。鉄馬車の中に火打石セットのようなものもあったし。

 それになんとなくだが、その川はな感じがする……何となく方向も分かるし……だが、森が……不気味だな……かと言ってずっとここにいてもな……

「踏み出せば、その一足が道となる! 行けばわかるさ!」

 ありがとうっ! と心の中で叫びながら、俺は森へと踏み込んだ。 

 ◇

 昔よく見ていた欧米のファンタジー映画に出てきそうな鬱蒼とした森。剣を片手になるべく気配を殺して歩く。だがしかし、あまり気配が殺せてないのだろう。すでに1匹、体高60cmくらいのでかいネズミみたいな魔物に襲われた。たいして強くなかったのだろう、わざわざ威嚇してから襲ってきたので、真正面から【ソードバレット】をぶち込んでやったらそれで倒せた。無論、残り2本しかない剣なので回収した。剣が外れて遠くへ飛んで行ったら大変だ、慎重にやらねば……

「さすがに森の中では、【鉄馬車クラッシュ】はやりづらいしな……」

 結構、木々が密な森のため、大型の鉄馬車は飛ばしにくい。出力を上げて木ごとふっ飛ばせばいいかもしれないが、余計に魔物が集まったらまずいからな。

 ちなみに、【鉄馬車クラッシュ】【ソードバレット】【散弾鎧バラージメイル】とはもちろん俺の固有スキル……なわけなく、勢いで思いついた名前を叫んだだけだ。本当はもっとかっこいい名前や、何なら詠唱文とかも考えたいけどな。こういうのは雰囲気が大事だ。
 ただ、行為の名前だけは叫んだほうが、何を飛ばすにしてもイメージしやすい。しばらくはこれでいこう。

 かれこれ1時間ほど歩き続けただろうか。その間に、デカキモ鼠1匹、チビゴブリン2匹、デカ角兎1匹と遭遇した。デカキモ鼠は先程と同じく【ソードバレット】で、崖の上で会ったゴブリンより一回り小さいチビゴブリンは、あっさり剣で倒せた。
 焦ったのがデカ角兎。頭に一本角を生やした体高60cmくらいのでかい兎だ。デカキモ鼠と同じく【ソードバレット】で倒そうと思っていたら、とんでもない速度で突進してきやがった。焦った俺は鉄馬車を射出というより、ただ前面に出した、壁代わりに。ギリギリ間に合った鉄馬車に激突したデカ角兎は、その勢いで角が砕け、脳震盪でも起こしたのか、気絶した。すかさず喉元に剣を突き入れ、とどめを刺すことができた。
 鉄馬車は俺の出した黒いもや、俺の異空間から先頭だけが辛うじて出ている。

「なるほど、せずに、防壁としてただ出すだけでも役に立つな。この鉄馬車、めちゃくちゃ頑丈だし」

 鉄馬車の全身が異空間から出ていないからなのか、全然重さも感じない。右手の動きに合わせて〈黒いもや〉も動かす。

「もしや、これは……」

 俺は右手を上段から素早く振り下ろす。

 ズドンッ!!

 もやから出ている鉄馬車の頭が、すごい勢いで地面にめり込む。

「おお! これは使える! ……まてよ、さらには!?」

 俺は鉄馬車を一回異空間に仕舞い、中腰になり正拳突きの構えをとる。そして目を瞑り、精神を集中する……

「ふぅ~……」

 クワッ!!(目を見開いたっ)

「〈走れ稲妻、怒れよ大地! 愛と~怒りと~悲しみの~~~~【鉄馬車パンチッ】!! うわっ、まってぇ~!!」

 ズガガガァァァ!!

 鉄馬車は結構な森の木々を薙ぎ倒し、2、30メートル先で止まった。本当は正拳突きと共に、鉄馬車の頭だけを出し、目の前の大木を殴ろうとしたのだが、勢い余ってしてしまった……
 武器として、防具として、そして当面の居住スペースとして、鉄馬車を失うわけにはいかない俺は、慌てて鉄馬車を回収しに行く。

「うーん、感覚的にはできそうなんだけど……練習が必要だな」

 あとは、詠唱文も技名も、ちゃんと考えよう……落ち着いたら。

 そんなこんなで、さらに30分ほど歩き続け、俺はようやく辿り着いた。

「ほんと……森とは別世界だな……」

 俺の目の前には、絵画にでもなりそうなほど爽やかで、気持ちのいい場所が開けていた。そして、そこには、まさに清流という名にふさわしい、澄み切った川が静かに流れていた。
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