再生の賢者 ~スキルポイント目当てで低級奴隷を漁っていたら、再生の賢者と呼ばれるハメに~

鄭 和食

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第1章 転魂流転~ルーベリス~

第17話 ”水聖の導き”亭

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 ミレイさんと2人で街を歩く。先ほどの受付嬢といった感じのロングスカートのいでたちから、細身のパンツルックへ着替えている。どことなく冒険者っぽいな。

「あ、スカートのほうが好みでした??」

「えっ? いえ、そ、そういうわけでは!」

 ミレイさんは覗き込むように顔を近づけてくる。先ほど”つば”つけられてからなんか距離が近い。うれしいけど。

「これから行く宿とミレイさんはどのような関係なんですか? その、僕のために無理をさせてないでしょうか?」

「大丈夫ですよ。その宿のおかみさんとはとても親しい間柄なんです。先代の頃に私もよく利用してましたし。私も若いころは冒険者だったんですよ」

「ミレイさんも冒険者だったんですか!? え、でも若い頃って……」

 ミレイさんはどう見ても20歳そこそこだ。……え??

「先代が亡くなって代替わりしたときに、私が出資して今の規模にしたんです。客層も中級冒険者以上を狙って宿の質を上げたら、売り上げも倍増って感じです。だから、ユキアさんを泊めるのくらいは何でもありません。それに客層もある程度良識的な冒険者に絞っているので、ルーベリスでこの宿に泊まれるってことは、ある種のステータスになっているんですよ」

 にっこりと微笑まれた。なるほど、やはり出資者、いやほぼオーナーって感じか。なるほど、一見さんお断り、紹介システムで客層を選別して”高級感と特別感”を出しているわけか。やり手の経営者みたいだ。

「着きましたよ。こちらが私のお勧めする宿、”水聖の導き亭”です」

「……えっ!! す、すいせ……!!」

 漆喰の白壁を基調とし、所々に光沢ある木材の梁と趣のある煉瓦で補強された、シンプルながらに高級感と清潔感のある2階建ての建物が目の前にあった。

「どうかされました??」

「あ、いえ……き、きれいな建物ですね」

「ありがとうございます。建物の維持管理は徹底させていますので」

 発言が完全に社長だ。それにしても『水聖の導き』……?? 導かれたのか、俺は?

「それではお入りください」

少し高級感のある木製の扉を開けると、「チリン」と鈴が鳴った。

「いらっしゃ……あれ? ミレイさん!」

 受付のカウンターから、10歳くらいだろうか、元気そうな女の子が出てくる。

「お久しぶり、キーリ。サルサはいる?」

「はーい、呼んでくるね!」

 おかーさーん! と叫びながら女の子は奥に走っていった。受付の奥はレストラン、というか酒場と言った方がしっくりくる食事スペースが広がっている。

「ミレイ、久しぶりだね。近くにいるんだからもっと顔出しなよ」

 宿屋のおかみさん、というから、なんか”ふくよかな肝っ玉かーちゃん系”を想像していたけど、出てきた女性は、30代半ばくらいのスタイルのいい”バリキャリ”って感じの女性だ。

「ごめんごめん、でもこれからはちょくちょく顔を出すかな」

 ミレイさんはそう言って俺に視線を送る。それを見て、サルサと呼ばれた女性は、少し眉を顰める。

「そちらのお嬢さんは? ミレイ、まさかアンタ、西地区の斡旋まで手を出したんじゃ……」

 ブフゥッと吹き出し、ミレイさんは笑いながら否定する。

「やめてよぉ~、そんなことするわけないでしょー、歓楽街になんて手を出したらクラン追放になっちゃうよ! えーっと、こちらはユキア・ベオルークさん。本日、うちで冒険者登録をして、明日から『初心者講習』を受けてくれるとってもいい子。ちなみにユキアさんは男の子だよ!」

「……へ!? うそ、ごめん! 失礼しました、お客さんだったんだね! え? でも、ほんとに、男の子??」

 目を丸くして驚いているサルサさんの後ろで、娘のキーリちゃんが、お母さん以上に目を真ん丸にして驚いている。いや、ちょっとそんなに……

「もちろん。ちゃんと確認してるわよ」

「か、確認ってアンタ、さっそくそんなこと……!」

「ち、ちがーう! 『誓約の魔紙』で!!」

「あ、ああ……登録の時ね」

 いきなり女子会の下ネタトークが炸裂している。このまま続きそうな感じだったので慌てて割り込んだ。

「よ、よろしくお願いします!」

「と、いうわけでサルサ、あの部屋を用意して。1泊3000バースで、朝食はお願い」

「それは構わないけどさ。別に普通の部屋でもいいんだよ、アンタの紹介なら」

「だーめ、身の丈に合った生活水準が必要なの。そこから這い上がる力が必要なのよ、冒険者は」

「だったら、低級向けの宿のほうが……」

「ダメッ! 私の”ユッくん”が不潔な環境で過ごしたり、うだつの上がらない馬鹿どもの視線にさらされるのは、私が耐えられない!!」

 「はぁ~、相変わらずアンタは……」と言いながら、サルサさんは俺を受付へと案内してくれた。受付の手続きをしてくれながら、サルサさんは不思議そうに俺に尋ねた。

「あれ? アンタ荷物は??」

 ……ありません、とも、異空間の中です、とも言えず。

「えーっと、魔物と闘っている最中に、川に落として流されてしまって……」

 宿泊の手続き後、俺はミレイさんに連れられて、生活必需品の買い出しに行った。もはや冒険者の『初心者研修』の域を超えている。『新社会人研修』的な感じに……いや、それすら超えているか。
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