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二章
4、痛み【1】
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強い風圧と共に、バシッという音が聞こえます。同時に胸が熱くなり、次の瞬間は痛みに呻きました。
「どうだい? 痛みすらも快感になってくるだろう?」
横たわるわたしに覆いかぶさるように、男が耳元で囁きます。
ねっとりとしたその声に、鳥肌が立ちました。
もうどれほど打たれたことでしょう。どれほどの時間が過ぎたことでしょう。
じくじくと内にこもる熱と、次々に襲ってくる痛み。
こんなのが気持ちいいはずがありません。
ただ痛いだけです。気分が悪いだけです。
逃げようと身をよじったのですが、両手も両足ももちろん動かすことなど叶いません。
わたしはこのまま闇に落ちていくの?
一生、苦界から逃れることも出来ずに。
いや……いやなんです。
「お願い、もう、やめて……」
呻くように訴えると、男はわたしを見下ろして口の端を歪めました。
「いいねぇ。そういう悲愴なのは、喜ぶ客も多い。惨めで愛らしい娘をいたぶって、悦に入るんだ」
そう言いながら、鞭の柄の部分をわたしの秘所に押し当ててきたのです。
「ここか?」
薄紅の襦袢にかろうじて隠されている部分を、ぐりぐりと押されます。
「……っうう……ぐ、ぅ」
口の中にねじ込まれていた布を、男の手が外します。
そして、さらに秘所を鞭の柄で責められたんです。
持ち手の革の感触、それがぬるりと滑り。あらぬ部分を刺激します。
「ひ……っ、ああっ」
「ほら、もっと声を上げるんだ。そしてねだってみな」
何をねだれと言うの? 訳が分からないの。
強烈な快感に腰が甘く痺れて。なのに気持ちが悪くて。
歯を食いしばって耐えていると、腹部を鞭で打たれたんです。
「きゃあああっ」
痛みと、まだ残る悦楽にわたしの背は弓なりになりました。
転げまわるほどに苦しいのに。足を拘束されて動けません。
もう無理です……助けて。
目の前に見える、ささくれて黄ばんだ畳が涙でぼやけていきます。
こめかみを伝い、落ちていく涙。それをとても熱く感じました。
そうね、頬も打たれたのだったわ。そのせいね。
「無様だ、無様で素敵だよ。清楚なお嬢さんが、泣きながらいたぶられる様子は、何度見ても楽しいもんだ」
朧な視界で、男が恍惚とした表情を浮かべているのが分かりました。
「あいつらは馬鹿だ。堕ちきって感情を失い、人形に成り果てたお嬢さんを有り難がって大金を払うのだからな」
わたしはお人形になるのね。二度と日の当たる場所には戻れないのね。
死ぬまで客を取らされて、縄で縛られ鞭打たれて。
それが、この先のわたしの人生。
わたしは嬲り者にされる為に、これまで大事に育てられてきたのではないのに。
どうか……どうか、もういっそこの場で殺してください。
惨めに泥の中で生き続けたくないのです。
男の手が、わたしの腰紐をするりと解きます。散々叩かれ、鞭で打たれ、熱を持ったわたしの体が露わにされました。
「ああ、いい眺めだ。まだ熟れていない、誰にも穢されていない肉体。なのに痛みに悦び涙を流す。あんたはいい値で売れるだろうさ」
苦しい。体が疼いて、なのに痛くて。
誰か……幾久司さん、助けて。
「ただ、生娘は面倒がる客が多いからなぁ。気持ち良くなるまで、何度でもしてやるから」
「……やめて」
「怖いのは最初だけだ。その内、自分から浅ましく腰を振って欲しがるようになるさ」
両手も両足も拘束されたわたしは、逃げることも叶いません。
体を持ち上げられたと思うと、腰の部分に枕を差し入れられました。
「お前よりも小さい子も、やっていることだ。なに、痛いのは最初だけだ」
「なんなら、挿れながら尻を叩いてやろうか。それとも抓ってやろうか」と男は下卑た笑いを洩らします。
「どうだい? 痛みすらも快感になってくるだろう?」
横たわるわたしに覆いかぶさるように、男が耳元で囁きます。
ねっとりとしたその声に、鳥肌が立ちました。
もうどれほど打たれたことでしょう。どれほどの時間が過ぎたことでしょう。
じくじくと内にこもる熱と、次々に襲ってくる痛み。
こんなのが気持ちいいはずがありません。
ただ痛いだけです。気分が悪いだけです。
逃げようと身をよじったのですが、両手も両足ももちろん動かすことなど叶いません。
わたしはこのまま闇に落ちていくの?
一生、苦界から逃れることも出来ずに。
いや……いやなんです。
「お願い、もう、やめて……」
呻くように訴えると、男はわたしを見下ろして口の端を歪めました。
「いいねぇ。そういう悲愴なのは、喜ぶ客も多い。惨めで愛らしい娘をいたぶって、悦に入るんだ」
そう言いながら、鞭の柄の部分をわたしの秘所に押し当ててきたのです。
「ここか?」
薄紅の襦袢にかろうじて隠されている部分を、ぐりぐりと押されます。
「……っうう……ぐ、ぅ」
口の中にねじ込まれていた布を、男の手が外します。
そして、さらに秘所を鞭の柄で責められたんです。
持ち手の革の感触、それがぬるりと滑り。あらぬ部分を刺激します。
「ひ……っ、ああっ」
「ほら、もっと声を上げるんだ。そしてねだってみな」
何をねだれと言うの? 訳が分からないの。
強烈な快感に腰が甘く痺れて。なのに気持ちが悪くて。
歯を食いしばって耐えていると、腹部を鞭で打たれたんです。
「きゃあああっ」
痛みと、まだ残る悦楽にわたしの背は弓なりになりました。
転げまわるほどに苦しいのに。足を拘束されて動けません。
もう無理です……助けて。
目の前に見える、ささくれて黄ばんだ畳が涙でぼやけていきます。
こめかみを伝い、落ちていく涙。それをとても熱く感じました。
そうね、頬も打たれたのだったわ。そのせいね。
「無様だ、無様で素敵だよ。清楚なお嬢さんが、泣きながらいたぶられる様子は、何度見ても楽しいもんだ」
朧な視界で、男が恍惚とした表情を浮かべているのが分かりました。
「あいつらは馬鹿だ。堕ちきって感情を失い、人形に成り果てたお嬢さんを有り難がって大金を払うのだからな」
わたしはお人形になるのね。二度と日の当たる場所には戻れないのね。
死ぬまで客を取らされて、縄で縛られ鞭打たれて。
それが、この先のわたしの人生。
わたしは嬲り者にされる為に、これまで大事に育てられてきたのではないのに。
どうか……どうか、もういっそこの場で殺してください。
惨めに泥の中で生き続けたくないのです。
男の手が、わたしの腰紐をするりと解きます。散々叩かれ、鞭で打たれ、熱を持ったわたしの体が露わにされました。
「ああ、いい眺めだ。まだ熟れていない、誰にも穢されていない肉体。なのに痛みに悦び涙を流す。あんたはいい値で売れるだろうさ」
苦しい。体が疼いて、なのに痛くて。
誰か……幾久司さん、助けて。
「ただ、生娘は面倒がる客が多いからなぁ。気持ち良くなるまで、何度でもしてやるから」
「……やめて」
「怖いのは最初だけだ。その内、自分から浅ましく腰を振って欲しがるようになるさ」
両手も両足も拘束されたわたしは、逃げることも叶いません。
体を持ち上げられたと思うと、腰の部分に枕を差し入れられました。
「お前よりも小さい子も、やっていることだ。なに、痛いのは最初だけだ」
「なんなら、挿れながら尻を叩いてやろうか。それとも抓ってやろうか」と男は下卑た笑いを洩らします。
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