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三章
4、颱風の夜の息遣い
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幾久司さんの指が、わたしの体を撫でているんです。
胸も……その先端も、ゆっくりと。
なのに、彼の唇はわたしの恥ずかしい部分に触れていて。
「お願い、おやめになって」
わたしは、たまらなくなって懇願しました。
だって、あまりにも甘美な愉悦の波が、何度も何度もわたしを襲ってくるんです。
「やめてほしいのは、痛いから?」
いいえ、いいえ。痛くはないの。ただ甘く痺れる快感が、背筋を何度も這い上がって来て。
このまま溺れてしまいそうなんです。
嫌なんです。わたしの熱を解放すれば、もう幾久司さんとは縁がなくなることが。
でも、それを口にするのはきっと我儘になるのね。
幾久司さんは、お仕事でわたしを助けてくださっているだけですもの。
いまにも達しそうなのに、その予感があると幾久司さんはわたくしから顔を離すんです。
「あ、や……やめないでぇ」
「お嬢。さっきから、言うとうことが矛盾しとうで」
苦笑なさっている幾久司さんは、どこか切なそうに眉をひそめていらっしゃいます。
外は雨が酷いのに、まだ颱風は去っていないのに。
そんな大きな音よりも、幾久司さんの荒い息遣いばかりがわたしの耳を支配するの。
襦袢がさらさらと擦れる音。わたしが甘苦しさに耐え切れずに、しきりに足を動かしているからです。
でも、わたしの息も徐々に上がって来て。耐え切れずに唇を開くと、まるで誘うかのような甘ったるい吐息が洩れるんです。
「ん……ぁあ、んんっ」
「ああ、可愛い声やなぁ」
「お願い、もっと……」
「もっと、どうしてほしいん?」
どうしてそんな意地悪をおっしゃるの。分かっていらっしゃるのでしょう?
わたしはもどかしくなって、幾久司さんのシャツのボタンに手を掛けました。
ああ、指が震えて……しかも布地が濡れているから、外すことができません。
「困ったなぁ。そんな風に煽ったら、我慢できへんやろ」
「我慢なさらなくていいの」
「意外とお嬢は我儘なんやな。いろんな面をすることが出来て、嬉しいわ」
わたしもです。そんな切羽詰まったような表情を見せる幾久司さんを知ることが出来て、嬉しいの。
◇◇◇
俺のシャツのボタンを、貴世子が外そうとしたことが俺には驚きやった。
無論、彼女も自分の行動に戸惑ってるみたいや。
あかんなぁ。もう自分を抑えることができへん。
ボタンが引きちぎれそうな強さで、俺はシャツを脱いだ。
女性を抱いたことは当然ある。けど、こんな風に待ちきれへん気持ちは初めてや。それにいつまでも触れて、抱いていたいと思うことも。これまでなかった。
「今夜の仕事、俺に任されてよかった」
「どうして?」
俺にのしかかられた貴世子が、潤んだ瞳で見上げてくる。
「俺以外の誰にも、貴世子を抱かせたくない。触れさせたくない。俺だけのお嬢で居ってほしいからや」
「わたしも、他の人は嫌。幾久司さんがいいの」
「そんな殊勝なことを言うたら、やめられへんで」
「ええ、やめないで」
俺のうなじに手を伸ばして、貴世子が自らくちづけてくる。
決してうまいとは言えないキス。けれど、そのたどたどしさが愛おしい。愛おしくてたまらない。
「……ん、んんっ、う……ん」
唇を重ねたままで、彼女の敏感な部分を指で触れる。
誰にも晒したことのない場所やろに、あんなに足を開かされて縛られて。
それを思い出すだけでも悔しくて仕方がない。
「あ、や……ぁ、んん」
「中に指を挿れて慣らすから。少し我慢するんやで」
「……はい」
素直な返事に、思わず微笑みがこぼれてしまう。
大丈夫やで、ちゃんと気持ちええようにしたるから。それは口にはせんかったけど。
「ふ……ぁ、ぁ……ああっ」
彼女の中と外、両方をいっぺんに触れる。俺の指の動きに応じて、貴世子は首を左右に振る。
「だめ、だめぇ、なにか……くる、の」
「うん。その感覚に浸ったらええ。大丈夫、怖ないから」
甘美な喘ぎ声を洩らしながら、貴世子は両手で自分の顔を覆った。
その指の間から、艶っぽい彼女の表情がわずかに見える。
胸も……その先端も、ゆっくりと。
なのに、彼の唇はわたしの恥ずかしい部分に触れていて。
「お願い、おやめになって」
わたしは、たまらなくなって懇願しました。
だって、あまりにも甘美な愉悦の波が、何度も何度もわたしを襲ってくるんです。
「やめてほしいのは、痛いから?」
いいえ、いいえ。痛くはないの。ただ甘く痺れる快感が、背筋を何度も這い上がって来て。
このまま溺れてしまいそうなんです。
嫌なんです。わたしの熱を解放すれば、もう幾久司さんとは縁がなくなることが。
でも、それを口にするのはきっと我儘になるのね。
幾久司さんは、お仕事でわたしを助けてくださっているだけですもの。
いまにも達しそうなのに、その予感があると幾久司さんはわたくしから顔を離すんです。
「あ、や……やめないでぇ」
「お嬢。さっきから、言うとうことが矛盾しとうで」
苦笑なさっている幾久司さんは、どこか切なそうに眉をひそめていらっしゃいます。
外は雨が酷いのに、まだ颱風は去っていないのに。
そんな大きな音よりも、幾久司さんの荒い息遣いばかりがわたしの耳を支配するの。
襦袢がさらさらと擦れる音。わたしが甘苦しさに耐え切れずに、しきりに足を動かしているからです。
でも、わたしの息も徐々に上がって来て。耐え切れずに唇を開くと、まるで誘うかのような甘ったるい吐息が洩れるんです。
「ん……ぁあ、んんっ」
「ああ、可愛い声やなぁ」
「お願い、もっと……」
「もっと、どうしてほしいん?」
どうしてそんな意地悪をおっしゃるの。分かっていらっしゃるのでしょう?
わたしはもどかしくなって、幾久司さんのシャツのボタンに手を掛けました。
ああ、指が震えて……しかも布地が濡れているから、外すことができません。
「困ったなぁ。そんな風に煽ったら、我慢できへんやろ」
「我慢なさらなくていいの」
「意外とお嬢は我儘なんやな。いろんな面をすることが出来て、嬉しいわ」
わたしもです。そんな切羽詰まったような表情を見せる幾久司さんを知ることが出来て、嬉しいの。
◇◇◇
俺のシャツのボタンを、貴世子が外そうとしたことが俺には驚きやった。
無論、彼女も自分の行動に戸惑ってるみたいや。
あかんなぁ。もう自分を抑えることができへん。
ボタンが引きちぎれそうな強さで、俺はシャツを脱いだ。
女性を抱いたことは当然ある。けど、こんな風に待ちきれへん気持ちは初めてや。それにいつまでも触れて、抱いていたいと思うことも。これまでなかった。
「今夜の仕事、俺に任されてよかった」
「どうして?」
俺にのしかかられた貴世子が、潤んだ瞳で見上げてくる。
「俺以外の誰にも、貴世子を抱かせたくない。触れさせたくない。俺だけのお嬢で居ってほしいからや」
「わたしも、他の人は嫌。幾久司さんがいいの」
「そんな殊勝なことを言うたら、やめられへんで」
「ええ、やめないで」
俺のうなじに手を伸ばして、貴世子が自らくちづけてくる。
決してうまいとは言えないキス。けれど、そのたどたどしさが愛おしい。愛おしくてたまらない。
「……ん、んんっ、う……ん」
唇を重ねたままで、彼女の敏感な部分を指で触れる。
誰にも晒したことのない場所やろに、あんなに足を開かされて縛られて。
それを思い出すだけでも悔しくて仕方がない。
「あ、や……ぁ、んん」
「中に指を挿れて慣らすから。少し我慢するんやで」
「……はい」
素直な返事に、思わず微笑みがこぼれてしまう。
大丈夫やで、ちゃんと気持ちええようにしたるから。それは口にはせんかったけど。
「ふ……ぁ、ぁ……ああっ」
彼女の中と外、両方をいっぺんに触れる。俺の指の動きに応じて、貴世子は首を左右に振る。
「だめ、だめぇ、なにか……くる、の」
「うん。その感覚に浸ったらええ。大丈夫、怖ないから」
甘美な喘ぎ声を洩らしながら、貴世子は両手で自分の顔を覆った。
その指の間から、艶っぽい彼女の表情がわずかに見える。
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