【第一部】没落令嬢は今宵も甘く調教される

真風月花

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三章

7、まだ明るいのに

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 かろうじて葡萄の寒天を飲み込んだ後、旦那さまはわたくしに接吻なさいました。
「甘いな」と呟いて、今度はわたくしの首筋にくちづけます。

「やはり、俺は菓子よりも翠子さんの方がいい」
「汗をかいているんです。後生ですから、離してください」
「ああ、外は暑かったからな。この後、一緒に風呂に入ろう」
 
 できれば今、入りたいです。それも一人で。
 なのに、旦那さまはわたくしを離してはくださいません。

「先にお湯を使わせてください」
「……無理だな」

 無下に断られて、わたくしは唇を噛みしめました。こんなにも恥ずかしいのに、旦那さまは分かってくださいません。

「震えているのか?」
「……はい」
「怖い?」

 わたくしは頷きました。恐れと羞恥は、当然あります。でも、他の人にすがりたいとは思いません。
 わたくしには旦那さましかいないのです。

「怖いですけど、恥ずかしいですけど。でも、旦那さまなら……旦那さまだけには……」
「あまり可愛いことを言わないでくれ。我慢ができなくなる」

 旦那さまは、わたくしにくちづけました。
 徐々に深くなり、貪られるようなキスに体の芯がとろけそうになります。
 
 ふと、旦那さまは机に残ったもう一皿の水菓子に目を向けました。

「甘さに慣れた方がいいんだよな」

 含みのある言葉を洩らすと、旦那さまは皿に添えられた匙を手に取りました。

「ひゃ……あっ……」

 突然、胸に冷たくてとろりとした感触がありました。思いもがけないことに、わたくしは背を反らせます。
 粘度のある液体が、わたくしの胸の谷間へと流れていきます。

「な、なんですか?」
「水菓子の蜜だよ」
「どうしてそんなものを、わたくしに」

 ふいに旦那さまが、わたくしの胸の膨らみを舐めました。しかも驚いて目を見開いたわたくしを見据えながら。

「翠子さんの甘さは好きだ。それなら、甘みもこうして味わえば、好きになるかもしれない」
「そんなこと……無理にしなくても」
「翠子さんとカフェーや甘味処に行ったときに、一緒に楽しめた方がいいだろ? 苦味と同じで、慣れるかもしれないし」

 そう仰ると、片手でわたくしの胸の尖りを押しつぶすようにしながら、もう片方を口に含まれました。
 
「や……あぁ……ん」

 一方は粘つく蜜で揉まれ、もう一方は旦那さまに噛まれたり舐められたりします。
 わたくしは旦那さまの肩を掴み、押しのけようとしますが。殿方に力で適うはずもありません。

 やわやわと与えられる快感と、同時にひりつく痛みを与えられて、どうにかなってしまいそうです。

「やめて……くだ、さい。まだ明るいです」
「まだ大して何もしていないよ。ああ、そうか」

 旦那さまが急に立ち上がりました。つい今しがたまで弄ばれていた胸が、わたくしの呼吸に合わせて荒く上下しています。

 巻き上げてあった簾を、旦那さまが下ろします。急に室内が薄暗くなりました。

「明るい方が、俺は翠子さんの表情も体も見えて好きなんだが。さぁ、お望み通り暗くしてあげたよ。翠子さん」

 そして旦那さまは「もっと暗い方が好きなのだろう?」と、目隠し用の帯紐を手にしました。
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