【第一部】没落令嬢は今宵も甘く調教される

真風月花

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九章

24、水蜜桃【2】

「久しぶりの翠子さんだ」
「いつもご一緒しています……」

「そうだなぁ」と、わたくしの素肌を撫でながら、旦那さまは仰います。

「傍にいるのも悪くないが、あなたの中に居たいと思うこともある。この間のあなたは、激しすぎたからな」

 旦那さまは、人の悪そうな笑みを浮かべました。
 た、確かに。わたくしは……とてもとても恥ずかしいのですけど、繰り返し襲われる絶頂に、その……あまりにも感じすぎてしまって。前後不覚と申しますか。そんなこともありました。
 ああ、もう思い出したくもありません。

 恥ずかしさのあまり、体をさらしているのに、顔を両手で隠すという奇妙な姿になってしまいました。

「よかったと言ってるんだ。俺も通知簿などの作業があったからな。翠子さんを可愛がってあげる余裕がなかったな」
「可愛がってなんて、いりません……そんな」
「素直になりなさい」

 わたくしの耳元で、旦那さまは低く囁きます。
 駄目なんです。そんな甘い声で誘われると。わたくしは甘い果実もお菓子も大好きですけど。わたくし自身が甘くなるのは……その、ちょっと。

 旦那さまは、わたくしにくちづけをなさいます。
 舌が乱暴に侵入してきて、唇を閉じることもできません。荒っぽく舌が動いたと思うと、その先端でわたくしの舌の先を、そぅっと撫でられます。

 熱と熱が絡み合い、恥ずかしいことに口の端から唾液が洩れました。

「ん……んんっ」

 呻くわたくしに構わずに、旦那さまの手がわたくしの膝を押さえて、両足を開くように促します。

 次に何をされるのか、躾けられたわたくしには分かります。けれどその行為に慣れるということはありません。

 旦那さまが与えてくださる快楽は……嫌いでありません。いえ、溺れてしまうので好きなのでしょう。
 ただ、それを認めるのが恐ろしいのです。
 わたくしのそんな葛藤を、旦那さまは「愛らしい」なんて褒めてくださいますけど。
 
 本当に、本当に恥ずかしいんですよ? 分かっていらっしゃいます?

 予想通り、旦那さまの頭がわたくしの立てた両膝の間に入ってきます。
 次に訪れる感覚に備えて、わたくしは自分の指を噛みました。

「……ん、んぅ……っ」

 舐め上げられる快感に、唇の端から甘い声が洩れてしまいます。
 嫌なら、旦那さまの頭を押しのければいいのに。それができません。
 焦らさないでと腰が浮きそうになって、はっと我に返ります。

「俺が与える刺激に、もっと耽溺しなさい」
「でも……」

 反論は、旦那さまが与え続ける甘美な刺激に途絶えました。わたくしは、ただ身悶えるしかできません。
 ひんやりとした夜風が、わたくしの肌を撫でていきます。それすらも敏感に感じてしまいます。
 
 浴衣の帯が解かれる音。わたくしの隣に、旦那さまの帯が落ちてきました。
 旦那さまの肌のぬくもりを求めて、わたくしは彼の背に腕をまわしました。

 わたくしが果汁を滴らせながら水蜜桃を頂いたように、今からはわたくしが水蜜桃の様にぐずぐずになるのでしょう。
 舐められ、感じさせられた箇所はしっとりと濡れて、旦那さまを待ち望んでいるかのようです。
 それが自分でも分かるのが恥ずかしいです。
 旦那さまも気づいていらっしゃるはずなのに、敢えて指摘はなさいません。

 秘所に旦那さまのものが押し当てられ、一気に中へと入りこんできます。

「う……っ、あぁ……っ」

 旦那さまが入ってこられる時の熱と硬さと圧迫感には、慣れることがありません。
 自ら受け入れることを許しているのに、まるで犯されているかのように、背筋がぞくりと戦慄わななきます。
 
 月の光に照らされて、旦那さまの苦し気な表情が見えます。動くのを我慢なさっているのでしょう。
 わたくしが、そんな表情をさせているのです。

「動いて……ください」
「まだ馴染んでいない。痛みを感じるぞ?」
「いいんです」

 旦那さまが与えてくださるものなら、快楽でも痛みでも。わたくしと旦那さまは、指と指を絡めました。
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