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二章
17、心配です ※前半、文子視点
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「文子さん、顔見せてほしいんやけど」
琥太郎さんに頼まれても、顔を上げることは出来ません。
だって、あんな色っぽい声を自分が出すなんて、思ってもみなくて。
それを好きな人に聞かれるなんて、もう……わたし、どうしていいのか分からないわ。
「抱きついてくれるんは嬉しいけどなぁ」
「うっ」
これもこれで、破廉恥だったかしら。
「そうやなぁ。抱きついて、色気あふれる顔を見せてくれたらもっと嬉しいなぁ」
「無茶言わないでください」
口を引き結んで顔を上げると、やっぱり笑顔の琥太郎さんと目が合いました。
「良かった。ようやく顔、見せてくれて。ええなぁ、恥じらう表情でさらに可愛いで」
「うっ」
嵌められました。
そうよ、翠子さんは琥太郎さんのことを警戒していたじゃない。それに「何かあったら、すぐに来てくださいね」って申し出てくれたわ。
ん? 何かあったらって……このキスは「何か」の範疇なの?
教えて、翠子さん。
七夕の笹とかボートとか、どうでもいいから。今すぐここに来て。
わたしの味方はあなただけなのよ。
◇◇◇
琥太郎さんに連行されてしまった文子さんは、大丈夫でしょうか。
はぁー、とわたくしは、別荘の居間でため息をつきました。
何度も窓の外を眺めては、文子さんのいるホテルに行こうかと玄関へ向かいます。
その後をエリスがついて来て、玄関でわたしが踵を返すと「お出かけしないの?」とでも言いたげに、くりっとした瞳で見上げてきます。
心配なんですよ。文子さんが翻弄されてるんじゃないかしらって。わたくしに助けを求めているのではないかしらって。
行ったところで、できる事なんてないんですけど……。
でも相手は琥太郎さんですよ。何事もないとは思えません。
「翠子さん。出かけるぞ」
「ホテルにですか?」
「……なんで?」
すぐに尋ねたわたくしを、旦那さまが怪訝そうに眺めます。
ええ、ええ。いいんです。分かっているんです。旦那さまは他人の恋愛に興味など露ほどもおありにならないことは。
でも、わたくしにとっては文子さんの初恋は……きっと初恋だと思うんですけど。とても大事なんですよ。
殿方は、こういう気持ちを軽んじすぎです。
「笹を採りに行きたいと言っていたじゃないか」
「それはそうですけど」
渋るわたくしの足に、エリスがしなやかな体をすり寄せてきます。
もちろん、自分も連れていくようにとおねだりしているんです。
「あれほど笹を楽しみにしていたし、雨が上がるようにてるてる坊主まで作っていたじゃないか。もう気が変わったのか?」
行きたいのはホテルなんですよ、とは言いだせないわたくしの手を、旦那さまが握ります。
「ほら、せっかく雨が上がったんだ。行くぞ」
わたくしは、鉈を手にした旦那さまに強制連行されてしまいました。
琥太郎さんに頼まれても、顔を上げることは出来ません。
だって、あんな色っぽい声を自分が出すなんて、思ってもみなくて。
それを好きな人に聞かれるなんて、もう……わたし、どうしていいのか分からないわ。
「抱きついてくれるんは嬉しいけどなぁ」
「うっ」
これもこれで、破廉恥だったかしら。
「そうやなぁ。抱きついて、色気あふれる顔を見せてくれたらもっと嬉しいなぁ」
「無茶言わないでください」
口を引き結んで顔を上げると、やっぱり笑顔の琥太郎さんと目が合いました。
「良かった。ようやく顔、見せてくれて。ええなぁ、恥じらう表情でさらに可愛いで」
「うっ」
嵌められました。
そうよ、翠子さんは琥太郎さんのことを警戒していたじゃない。それに「何かあったら、すぐに来てくださいね」って申し出てくれたわ。
ん? 何かあったらって……このキスは「何か」の範疇なの?
教えて、翠子さん。
七夕の笹とかボートとか、どうでもいいから。今すぐここに来て。
わたしの味方はあなただけなのよ。
◇◇◇
琥太郎さんに連行されてしまった文子さんは、大丈夫でしょうか。
はぁー、とわたくしは、別荘の居間でため息をつきました。
何度も窓の外を眺めては、文子さんのいるホテルに行こうかと玄関へ向かいます。
その後をエリスがついて来て、玄関でわたしが踵を返すと「お出かけしないの?」とでも言いたげに、くりっとした瞳で見上げてきます。
心配なんですよ。文子さんが翻弄されてるんじゃないかしらって。わたくしに助けを求めているのではないかしらって。
行ったところで、できる事なんてないんですけど……。
でも相手は琥太郎さんですよ。何事もないとは思えません。
「翠子さん。出かけるぞ」
「ホテルにですか?」
「……なんで?」
すぐに尋ねたわたくしを、旦那さまが怪訝そうに眺めます。
ええ、ええ。いいんです。分かっているんです。旦那さまは他人の恋愛に興味など露ほどもおありにならないことは。
でも、わたくしにとっては文子さんの初恋は……きっと初恋だと思うんですけど。とても大事なんですよ。
殿方は、こういう気持ちを軽んじすぎです。
「笹を採りに行きたいと言っていたじゃないか」
「それはそうですけど」
渋るわたくしの足に、エリスがしなやかな体をすり寄せてきます。
もちろん、自分も連れていくようにとおねだりしているんです。
「あれほど笹を楽しみにしていたし、雨が上がるようにてるてる坊主まで作っていたじゃないか。もう気が変わったのか?」
行きたいのはホテルなんですよ、とは言いだせないわたくしの手を、旦那さまが握ります。
「ほら、せっかく雨が上がったんだ。行くぞ」
わたくしは、鉈を手にした旦那さまに強制連行されてしまいました。
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