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三章
34、接吻はわたくしから
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「うん。翠子さんが下だと、キスしにくいだろ」
旦那さまはわたくしを抱き上げると、今度はご自分がソファーに横たわりました。そしてわたくしを上に乗せるんです。
「はい。これでやりやすくなっただろ。存分にどうぞ」
存分にと勧められても。窓の外からは、薪を割る音が今も聞こえているんです。恥ずかしいんですけど。
「しょうがないな。目を閉じていてあげるから。ほら」
わたくしは窓の方をちらりと見て、銀司さんが薪割りを続けているのを確認しました。そして、上体を屈めて旦那さまの唇にくちづけたの。
「ん……んん?」
ど、どうして舌が侵入してくるの? 両腕を強く掴まれて、わたくしは旦那さまの舌で口の中を翻弄されたんです。
わたくしからのキスですよね。主導権はわたくしにあるんですよね?
なのに……あぁ、動くことを封じられて貪るような接吻を受けているんです。
でも、傍から見たら旦那さまの上に乗っているわたくしが、襲っているようですよね。
お願い、誰も来ないで。見ないで。
襲われているのは、わたくしなんです。
「翠子さん、気が散っているぞ。ちゃんと集中しなさい」
「あの、ここでは……さすがに」
わたくしは、テラスへと続く窓を一瞥しました。旦那さまは「ああ、そういうことか」と納得なさいます。
よかった。分かってくださったのね。ええ、お庭とはいえ銀司さんがいらっしゃるんですもの。キスはもう終わりですよね。
「遠慮などせず、早く言ってくれればいいのに。確かに人目は気になるよな」
がばっとソファーから体を起こすと、旦那さまはわたくしを抱き上げました。
え? 違いますよ。そういう意味で言ったんじゃありません。
ですが、すでに旦那さまは廊下を通り、階段を上がっています。
旦那さまに横抱きにされた状態でもがきましたが「階段から落ちたら大怪我をするぞ」と言われれば、おとなしくするしかありません。
「俺は銀司の目は気にしないが。翠子さんは、そういう訳にはいかないものな」
「それは……そうなんですけど。何かが違うような」
寝室に入ると、旦那さまはわたくしをベッドに降ろしました。
わたくしを挟むように両手をベッドについたので、マットレスが沈み込み、ベッドがぎしりと軋みます。
窓から差し込む光は、別荘を囲む森の木々の葉を透かして、ちらちらと木洩れ日のように床で踊っています。
「樟脳の匂いのあなたは、少しよそよそしい」
そう仰ると、旦那さまはわたくしの繻子のエプロンを外してしまいました。さらに帯も、単衣の銘仙も。
襦袢姿になったわたくしは、いつの間にか腰紐までも解かれて。素肌に襦袢をまとうだけの姿にされていました。
「朝の光は眩しくて、翠子さんがはっきりと見えていいな」
「仰らないで」
足袋はすでに、居間で脱がされています。
つまり、わたくしの足袋だけがぽつんと今の床に残されて。
ああ、なんて恥ずかしいの。
当然、わたくしが足袋を脱いで、ぽいぽいっと床に落としたなんて思われないわ。
お清さんにも銀司さんにも、気づかれてしまいます。エリスがくわえて、寝室まで持ってきてくれないかしら。
無理よね、無理ですよね。あんなに小さいお口ですもの。
それに旦那さまは洋服をお召しなのに、わたくしだけが襦袢姿でそれにも羞恥心を覚えて。
両手で顔を隠したのですが。
「駄目だよ、隠しては」と窘められてしまいました。
旦那さまはわたくしを抱き上げると、今度はご自分がソファーに横たわりました。そしてわたくしを上に乗せるんです。
「はい。これでやりやすくなっただろ。存分にどうぞ」
存分にと勧められても。窓の外からは、薪を割る音が今も聞こえているんです。恥ずかしいんですけど。
「しょうがないな。目を閉じていてあげるから。ほら」
わたくしは窓の方をちらりと見て、銀司さんが薪割りを続けているのを確認しました。そして、上体を屈めて旦那さまの唇にくちづけたの。
「ん……んん?」
ど、どうして舌が侵入してくるの? 両腕を強く掴まれて、わたくしは旦那さまの舌で口の中を翻弄されたんです。
わたくしからのキスですよね。主導権はわたくしにあるんですよね?
なのに……あぁ、動くことを封じられて貪るような接吻を受けているんです。
でも、傍から見たら旦那さまの上に乗っているわたくしが、襲っているようですよね。
お願い、誰も来ないで。見ないで。
襲われているのは、わたくしなんです。
「翠子さん、気が散っているぞ。ちゃんと集中しなさい」
「あの、ここでは……さすがに」
わたくしは、テラスへと続く窓を一瞥しました。旦那さまは「ああ、そういうことか」と納得なさいます。
よかった。分かってくださったのね。ええ、お庭とはいえ銀司さんがいらっしゃるんですもの。キスはもう終わりですよね。
「遠慮などせず、早く言ってくれればいいのに。確かに人目は気になるよな」
がばっとソファーから体を起こすと、旦那さまはわたくしを抱き上げました。
え? 違いますよ。そういう意味で言ったんじゃありません。
ですが、すでに旦那さまは廊下を通り、階段を上がっています。
旦那さまに横抱きにされた状態でもがきましたが「階段から落ちたら大怪我をするぞ」と言われれば、おとなしくするしかありません。
「俺は銀司の目は気にしないが。翠子さんは、そういう訳にはいかないものな」
「それは……そうなんですけど。何かが違うような」
寝室に入ると、旦那さまはわたくしをベッドに降ろしました。
わたくしを挟むように両手をベッドについたので、マットレスが沈み込み、ベッドがぎしりと軋みます。
窓から差し込む光は、別荘を囲む森の木々の葉を透かして、ちらちらと木洩れ日のように床で踊っています。
「樟脳の匂いのあなたは、少しよそよそしい」
そう仰ると、旦那さまはわたくしの繻子のエプロンを外してしまいました。さらに帯も、単衣の銘仙も。
襦袢姿になったわたくしは、いつの間にか腰紐までも解かれて。素肌に襦袢をまとうだけの姿にされていました。
「朝の光は眩しくて、翠子さんがはっきりと見えていいな」
「仰らないで」
足袋はすでに、居間で脱がされています。
つまり、わたくしの足袋だけがぽつんと今の床に残されて。
ああ、なんて恥ずかしいの。
当然、わたくしが足袋を脱いで、ぽいぽいっと床に落としたなんて思われないわ。
お清さんにも銀司さんにも、気づかれてしまいます。エリスがくわえて、寝室まで持ってきてくれないかしら。
無理よね、無理ですよね。あんなに小さいお口ですもの。
それに旦那さまは洋服をお召しなのに、わたくしだけが襦袢姿でそれにも羞恥心を覚えて。
両手で顔を隠したのですが。
「駄目だよ、隠しては」と窘められてしまいました。
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