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九章 魔法使いに見送られて旅立つ二人
58 任務完了①
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途中で緩やかな走りになったとはいえ、ロスティからディンビエまでの距離を半日もかからずに駆けるのは強行である。というより、前例がない。歴代の早馬も驚きの記録だろう。
乗馬に慣れているレーヴであっても、辛いものがあった。
朝は脱獄を試み、昼は任務を受け、夕にはディンビエにいるなんて、過密スケジュールにも程がある。
情けないが、レーヴは今ちょっとでも休めば確実に立てなくなる自信があった。
気付かないふりをしているが、本当は膝はガクガク、明日は筋肉痛を覚悟する有様である。
乗っているだけだが、乗馬にはそれなりの技術が必要だ。ましてや、デュークのような魔馬を乗りこなすとなれば尚更である。
ディンビエの首都に着いてから、デュークはポクポクと優雅な足取りで街中を歩いていた。
薄暗い中でも、デュークの美馬っぷりは人々の目を引く。道行く人誰もが美しい馬を見て、その背に乗るレーヴに羨ましそうな視線を注いだ。
ディンビエの民は、そのほとんどが騎馬民族と言われている。
そんな彼らは、デュークの良さを一目で見抜くらしい。異国の少女が乗っていると見ると男たちは強気になるのか、レーヴは数人の男に「馬を置いていけ」と脅迫めいた言葉を掛けられた。
だが、それに黙って従うレーヴではない。
デュークを取り上げられてはたまらないと、馬上から殺気を込めた視線を落とし、不埒者を黙らせた。
女性にそんな視線を向けられたことがないのだろう。男たちはあっさりと怯え、逃げていく。
ロスティの女を舐めてはいけない。もしも全世界怒らせたらいけない女性ランキングがあったら、確実に一位か二位になると自信を持って言える。
(早く着けばいいのに)
レーヴには、やることがいっぱいなのである。こんなところで力を使い果たしている場合ではない。
不埒者の対処をするくらいなら、疲れた体に鞭打って街中を走り抜けたい気持ちだった。
だが、ここはディンビエ。ロスティのように早馬が来たら道を譲るなんていう文化は存在しない。
理性的で紳士的なデュークはそれを分かっているから、おとなしく歩いているのだろう。絡まれる度に後脚で蹴りたそうにしているのを、彼女は見ていた。
レーヴはデュークが敢えてそうしていると思っているようだが、実のところ理由はそれだけではない。
レーヴが自分のために戦っている。
それがデュークには嬉しくて仕方がなかった。
軍人である彼女が戦うことを厭わないのは知っているが、国のためでなくデュークのためにキレているというのが堪らない。
彼女がそれだけ自分に執着してくれているようで、紳士的ではないと自身を諌めながらもついつい足が遅くなる。
レーヴの冴え冴えとした殺気に満ちた目は、デュークをゾクゾクさせた。それを真っ向から浴びる男たちを、蹴り殺したいくらい羨ましく思う。
レーヴに悪いと思いながら、デュークの足が駆け足になることはなかった。
乗馬に慣れているレーヴであっても、辛いものがあった。
朝は脱獄を試み、昼は任務を受け、夕にはディンビエにいるなんて、過密スケジュールにも程がある。
情けないが、レーヴは今ちょっとでも休めば確実に立てなくなる自信があった。
気付かないふりをしているが、本当は膝はガクガク、明日は筋肉痛を覚悟する有様である。
乗っているだけだが、乗馬にはそれなりの技術が必要だ。ましてや、デュークのような魔馬を乗りこなすとなれば尚更である。
ディンビエの首都に着いてから、デュークはポクポクと優雅な足取りで街中を歩いていた。
薄暗い中でも、デュークの美馬っぷりは人々の目を引く。道行く人誰もが美しい馬を見て、その背に乗るレーヴに羨ましそうな視線を注いだ。
ディンビエの民は、そのほとんどが騎馬民族と言われている。
そんな彼らは、デュークの良さを一目で見抜くらしい。異国の少女が乗っていると見ると男たちは強気になるのか、レーヴは数人の男に「馬を置いていけ」と脅迫めいた言葉を掛けられた。
だが、それに黙って従うレーヴではない。
デュークを取り上げられてはたまらないと、馬上から殺気を込めた視線を落とし、不埒者を黙らせた。
女性にそんな視線を向けられたことがないのだろう。男たちはあっさりと怯え、逃げていく。
ロスティの女を舐めてはいけない。もしも全世界怒らせたらいけない女性ランキングがあったら、確実に一位か二位になると自信を持って言える。
(早く着けばいいのに)
レーヴには、やることがいっぱいなのである。こんなところで力を使い果たしている場合ではない。
不埒者の対処をするくらいなら、疲れた体に鞭打って街中を走り抜けたい気持ちだった。
だが、ここはディンビエ。ロスティのように早馬が来たら道を譲るなんていう文化は存在しない。
理性的で紳士的なデュークはそれを分かっているから、おとなしく歩いているのだろう。絡まれる度に後脚で蹴りたそうにしているのを、彼女は見ていた。
レーヴはデュークが敢えてそうしていると思っているようだが、実のところ理由はそれだけではない。
レーヴが自分のために戦っている。
それがデュークには嬉しくて仕方がなかった。
軍人である彼女が戦うことを厭わないのは知っているが、国のためでなくデュークのためにキレているというのが堪らない。
彼女がそれだけ自分に執着してくれているようで、紳士的ではないと自身を諌めながらもついつい足が遅くなる。
レーヴの冴え冴えとした殺気に満ちた目は、デュークをゾクゾクさせた。それを真っ向から浴びる男たちを、蹴り殺したいくらい羨ましく思う。
レーヴに悪いと思いながら、デュークの足が駆け足になることはなかった。
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