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後日談

121 祝福の鐘①

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 次々にやってくる渡し舟を眺めながら、ペリーウィンクルはバスケットからクッキーを取り出す。
 自身の口へ運ぶ途中、手首を掴まれて引き寄せられた。

「あ」

 あっという間に指ごとクッキーを食べられる。
 恥ずかしさに、ペリーウィンクルは顔を真っ赤にして怒った。

「ちょっと、ヴィアベル! 見られていたらどうするのよ」

 そう言う彼女の視線の先には、今年新たに入学する予定の妖精使いフェアリーテイマー見習いたちがいる。
 見られるのは彼らから、ということだろうか。
 怒るペリーウィンクルに、ヴィアベルは「なんだそんなことか」としれっと答えた。

「見せつけているのだ。こいつは私のものだから手を出すなと」

「~~!」

 言葉にならないのか、ペリーウィンクルの唇がハクハクと開閉する。
 ちらちらと見える舌はまるでキスをねだっているようで、ヴィアベルはたまらず顔を寄せた。

 ──ぎゅむ。

 ペリーウィンクルの手のひらが、ヴィアベルの美貌を容赦なく押し除ける。
 他愛ないスキンシップさえ嬉しくて仕方がないヴィアベルは、クツクツと笑いながら「今夜の楽しみに取っておこう」と甘ったるい声で言ってのけた。

 ローズマリーたちを見送ってから、二カ月が経った。
 夏が終わり初秋になる頃、スルスに新たな生徒たちがやって来る。

 あれから──ヒロインことリコリス・ハーパーは、卒業パーティーの場で妖精たちに連行されたきり、誰も姿を見ていない。
 妖精たちのうわさによれば、彼女は今も花泥棒以外の罪を認めていないらしい。誕生花ネサンス・フラワーに肥料を与えた件、そして名もなき生き物を生み出してしまった件については、すべてスヴェートが勝手にやったことであると無罪を主張しているようだ。

 そもそもリコリスが卒業式に参加できたのも、卒業パーティーに参加できたのも、全ては妖精の女王が許したからに過ぎない。ローズマリーとソレルによる茶番を観賞したいという、彼女のわがままで叶った場だった。

 誕生花に関して彼女は一切関与していないと言うならば、卒業なんて認められるわけがない。
 関与していたら、肥料を与えたことについて罰せられ、関与していないなら自ら卒業のチャンスを棒に振ったことになる。
 どちらにしても卒業できないのだから、より罪が軽い後者を選ぶのも頷けた。
 本当に男が目当てでやって来たのだな、とペリーウィンクルは呆れるが。

 気まぐれで飽き性な妖精たちは、一向に罪を認めないリコリスに嫌気が差してきている。全ての罪がつまびらかになるのが先か、それとも妖精たちが匙を投げるのが先か──。
 ヴィアベルが冬の国と連絡を取っているのを見る限り、後者になる確率は高いだろう。なにせ彼は、冬の国で一番厳しいと言われている修道院──問題がある女性犯罪者を収容する牢獄──に空きがないか聞いていたのだから。
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