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序章
04 男装少女、エディ
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エディが一人納得したように頷いていると、喚き疲れたリディアが何かを閃いたようにパッと表情を明るくした。
「エディ! 私、いいこと思いついたわ!」
きらきらきらりん。
涙に濡れたリディアの瞳が、煌めいた。
(あぁ、なんだろう、この感じ……嫌な予感しかしないなぁ)
だけど、リディアの幼なじみで彼女の弟的ポジションであるエディに、拒否なんて選択肢はない。求められているのは、承諾だけなのである。
エディはふぅと、諦めのため息を吐いた。
「いいことって?」
「エディが私の恋人になればいいのよ」
「リディア。きみは、ロスティの使者に、恋人はいませんって言ったんだろ?」
「言ったけど……本当はいましたっていうことにするの」
「無理があると思うけど」
「ええ? なんで? なにも、本当の恋人になってとは言わないわ。大使館で行われる顔合わせの時だけ、恋人のふりをしてくれたらいいの。ね? 名案でしょう?」
「名案でしょうって……」
エディは開いた口が塞がらなかった。
だって、色々無理がある。
「相手は軍事大国ロスティの人なんだよ? もしも嘘がバレたら、規律違反だとか言われて処罰されそうじゃないか」
「会うのは、ディンビエの首都にあるロスティの大使館よ? ディンビエの中にあるのだから、ディンビエの法に則るべきだわ」
「いや、大使館の敷地内はロスティの領地みたいなものだから。ディンビエではなく、ロスティの法律が適用されるからね……?」
エディは、哀れみの目でリディアを見た。その顔には、こいつは何を言っているんだろうと書いてあるようだ。
(世界中を旅して美男子を探すのが夢のくせに、無知すぎやしないか……? リディアを一人で旅立たせるのは危険かもしれないな)
「あら、そうなの? エディは物知りねぇ」
「リディアが知らなすぎるんだ」
「そうかしら?」
おっとりほわわんと笑むリディアに、エディは頭が痛くなる思いだった。
昔から、彼女はどうも頭が足りない。そのくせ、美男子には滅法弱いものだから、騙されそうになることが何度もあった。
エディはその度にリディアを助けていたのだが、離れていてはどうにも出来ない。
(美男子探しの旅は、なんとしてでも阻止しなくては)
まさかエディがそんな決意を固めているとも知らず、リディアは「困ったわねぇ」と呟いた。
だが、それから考えるように小首を傾げて、彼女は言った。
「バレなければ良いのよ」
「バレなければって……そもそも僕は、女だよ?」
そうなのである。
少年のような短い髪であろうと、十五歳にしては胸の膨らみが少なかろうと、伝統的な男性の服を着ていようと、一人称が僕であろうと、エディことエディタ・ヴィリニュスは女性なのだ。
「ねぇ、もしかして忘れてる?」
「忘れるものですか。性別さえ男だったら、あなたと結婚できたのに。どうしてあなたは男じゃないのよ、エディ」
恨みがましく見られても、困る。
エディだって、出来ることなら男として生まれたかったのだから。
「エディ! 私、いいこと思いついたわ!」
きらきらきらりん。
涙に濡れたリディアの瞳が、煌めいた。
(あぁ、なんだろう、この感じ……嫌な予感しかしないなぁ)
だけど、リディアの幼なじみで彼女の弟的ポジションであるエディに、拒否なんて選択肢はない。求められているのは、承諾だけなのである。
エディはふぅと、諦めのため息を吐いた。
「いいことって?」
「エディが私の恋人になればいいのよ」
「リディア。きみは、ロスティの使者に、恋人はいませんって言ったんだろ?」
「言ったけど……本当はいましたっていうことにするの」
「無理があると思うけど」
「ええ? なんで? なにも、本当の恋人になってとは言わないわ。大使館で行われる顔合わせの時だけ、恋人のふりをしてくれたらいいの。ね? 名案でしょう?」
「名案でしょうって……」
エディは開いた口が塞がらなかった。
だって、色々無理がある。
「相手は軍事大国ロスティの人なんだよ? もしも嘘がバレたら、規律違反だとか言われて処罰されそうじゃないか」
「会うのは、ディンビエの首都にあるロスティの大使館よ? ディンビエの中にあるのだから、ディンビエの法に則るべきだわ」
「いや、大使館の敷地内はロスティの領地みたいなものだから。ディンビエではなく、ロスティの法律が適用されるからね……?」
エディは、哀れみの目でリディアを見た。その顔には、こいつは何を言っているんだろうと書いてあるようだ。
(世界中を旅して美男子を探すのが夢のくせに、無知すぎやしないか……? リディアを一人で旅立たせるのは危険かもしれないな)
「あら、そうなの? エディは物知りねぇ」
「リディアが知らなすぎるんだ」
「そうかしら?」
おっとりほわわんと笑むリディアに、エディは頭が痛くなる思いだった。
昔から、彼女はどうも頭が足りない。そのくせ、美男子には滅法弱いものだから、騙されそうになることが何度もあった。
エディはその度にリディアを助けていたのだが、離れていてはどうにも出来ない。
(美男子探しの旅は、なんとしてでも阻止しなくては)
まさかエディがそんな決意を固めているとも知らず、リディアは「困ったわねぇ」と呟いた。
だが、それから考えるように小首を傾げて、彼女は言った。
「バレなければ良いのよ」
「バレなければって……そもそも僕は、女だよ?」
そうなのである。
少年のような短い髪であろうと、十五歳にしては胸の膨らみが少なかろうと、伝統的な男性の服を着ていようと、一人称が僕であろうと、エディことエディタ・ヴィリニュスは女性なのだ。
「ねぇ、もしかして忘れてる?」
「忘れるものですか。性別さえ男だったら、あなたと結婚できたのに。どうしてあなたは男じゃないのよ、エディ」
恨みがましく見られても、困る。
エディだって、出来ることなら男として生まれたかったのだから。
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