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四章 一年目はるの月
38 はるの月14日、感謝祭②
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バタバタと慌ただしく牧場を後にして、最初に向かったのは動物屋兼獣医のローナンのところだ。
動物屋に入ったところで相変わらず元気なシュガーとソルトに熱烈な歓迎を受けて、うっかりカゴが落ちそうになる。
カゴを守ろうとしたイーヴィンは、バランスを崩して倒れそうになった。
「わっ!とと……、おわぁぁ!」
「危ないなぁ。シュガー、ソルト、イーヴィンは小柄なんだから、気をつけないといけないよ」
落ち着いた口調だが、ローナンは素晴らしい反射で倒れそうなイーヴィンの体を支える。
さすが、腹黒フェミニスト。イーヴィン相手でも抜かりはない。
背後から彼女を抱きかかえるようにカゴを支えて、ローナンは「おや意外と」と意味深なことを呟いてほんの少し目を見張った。その口元に、爽やかとは言い難いニヤニヤとした笑みが浮かぶ。
その視線の先にあったのは、彼女の胸。
どうやら、思っていたよりもイーヴィンの胸に弾力があったことが、意外だったらしい。
「ありがとう、ローナン。ところで……どこを見て、何を言っているかしら?」
シルキーのおいしいご飯のおかげで、イーヴィンの体はしっかりと成長しつつある。
弟たちにまな板だと馬鹿にされていた胸も、最近はちょっとばかり女性らしくなってきたなぁと鏡の前でニヤニヤしていたりする彼女は、チクリと言いながらも気づいてもらえて少し嬉しそうだ。
年頃の娘ならば、男に抱きしめられて胸を触られたら逃げたりしそうなものだ。
なのに、イーヴィンは気にせずそのままローナンとの会話を続ける。
恥ずかしそうにする素振りもない彼女に、ローナンはやはり男として意識されてないなと改めて思い知らされた。
「いやいや、気にしないでくれ。こっちの話さ。それで?感謝祭のお菓子でも届けに来てくれたのかな?」
接客用の計算された胡散臭い爽やかな笑みを浮かべて、ローナンはイーヴィンから離れる。
二頭の看板犬たちも、主人に従うようにおとなしくイーヴィンから離れた。
「そうなの!この前、頼んだミルクと、うちの牧場でとれたタマゴでプリンを作ったんだ。はい、これ。いつもありがとう、ローナン」
「ありがとう。嬉しいよ」
綺麗にラッピングされたプリンは、見慣れた容器に入っていた。
ミルク瓶に入ったそれは、いかにも女性が好みそうな可愛らしい見た目である。
ローナンはそれを見て、「こんな使い方もあるのか」と呟いた。
「そうだ、僕もイーヴィンへのプレゼントがあるんだ。受け取ってくれるかい?」
「もちろん!」
ローナンから渡されたのは、クッキーの詰め合わせだった。
見慣れた包装紙に包まれた缶は、イーヴィンにとって懐かしいものである。
「これ、本島で売ってるやつ!」
「そうそう。せっかくだから、取り寄せてみたんだ。喜んでもらえて良かったよ」
「わぁぁ!ありがとう、ローナン!」
受け取った缶をいそいそとカゴにしまい込み、イーヴィンはローナンに別れを告げる。
今日は忙しい。プレゼントを渡す相手はあと三人もいるのだから。
動物屋に入ったところで相変わらず元気なシュガーとソルトに熱烈な歓迎を受けて、うっかりカゴが落ちそうになる。
カゴを守ろうとしたイーヴィンは、バランスを崩して倒れそうになった。
「わっ!とと……、おわぁぁ!」
「危ないなぁ。シュガー、ソルト、イーヴィンは小柄なんだから、気をつけないといけないよ」
落ち着いた口調だが、ローナンは素晴らしい反射で倒れそうなイーヴィンの体を支える。
さすが、腹黒フェミニスト。イーヴィン相手でも抜かりはない。
背後から彼女を抱きかかえるようにカゴを支えて、ローナンは「おや意外と」と意味深なことを呟いてほんの少し目を見張った。その口元に、爽やかとは言い難いニヤニヤとした笑みが浮かぶ。
その視線の先にあったのは、彼女の胸。
どうやら、思っていたよりもイーヴィンの胸に弾力があったことが、意外だったらしい。
「ありがとう、ローナン。ところで……どこを見て、何を言っているかしら?」
シルキーのおいしいご飯のおかげで、イーヴィンの体はしっかりと成長しつつある。
弟たちにまな板だと馬鹿にされていた胸も、最近はちょっとばかり女性らしくなってきたなぁと鏡の前でニヤニヤしていたりする彼女は、チクリと言いながらも気づいてもらえて少し嬉しそうだ。
年頃の娘ならば、男に抱きしめられて胸を触られたら逃げたりしそうなものだ。
なのに、イーヴィンは気にせずそのままローナンとの会話を続ける。
恥ずかしそうにする素振りもない彼女に、ローナンはやはり男として意識されてないなと改めて思い知らされた。
「いやいや、気にしないでくれ。こっちの話さ。それで?感謝祭のお菓子でも届けに来てくれたのかな?」
接客用の計算された胡散臭い爽やかな笑みを浮かべて、ローナンはイーヴィンから離れる。
二頭の看板犬たちも、主人に従うようにおとなしくイーヴィンから離れた。
「そうなの!この前、頼んだミルクと、うちの牧場でとれたタマゴでプリンを作ったんだ。はい、これ。いつもありがとう、ローナン」
「ありがとう。嬉しいよ」
綺麗にラッピングされたプリンは、見慣れた容器に入っていた。
ミルク瓶に入ったそれは、いかにも女性が好みそうな可愛らしい見た目である。
ローナンはそれを見て、「こんな使い方もあるのか」と呟いた。
「そうだ、僕もイーヴィンへのプレゼントがあるんだ。受け取ってくれるかい?」
「もちろん!」
ローナンから渡されたのは、クッキーの詰め合わせだった。
見慣れた包装紙に包まれた缶は、イーヴィンにとって懐かしいものである。
「これ、本島で売ってるやつ!」
「そうそう。せっかくだから、取り寄せてみたんだ。喜んでもらえて良かったよ」
「わぁぁ!ありがとう、ローナン!」
受け取った缶をいそいそとカゴにしまい込み、イーヴィンはローナンに別れを告げる。
今日は忙しい。プレゼントを渡す相手はあと三人もいるのだから。
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