乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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五章 二年目なつの月

59 なつの月27日、酪農まつり②

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 黒板に書き上げたのは、『モア』の二文字。
 それくらい言えよとイーヴィンは突っ込みたくなったが、そうすると話が脱線しそうなので、おとなしく口を噤んでいた。

(ほら、やっぱり)

 結婚式でのモアの様子からして、彼女とファーガルはどう考えても両思いである。

(第三者が手を貸して拗れる恐れもあるし、ここは知らないふりをして逃げるべきかなぁ)

 盛り上がっているリアンには悪いが、正直なところ、手伝いたくはない。
 貴重な、最後の婿候補を失ったのだ。少しくらい、感傷に浸りたい。

 乙女ゲームに転生した物語なら、次々と攻略対象を悪役令嬢に奪われるヒロインといった所だ。
 残念ながら、イーヴィンにはザマァされるような黒歴史はないし、モアとの付き合いは良好なので意地悪されているわけではない。

(牧場生活ゲーム程度で根を上げているんだもの。乙女ゲームの世界に転生しなくて正解だったのかもしれないわ)

 とはいえ、隣でどんよりしているクマさんファーガルを放置できるほど、彼らとの仲が軽薄でないから困る。

(あー……来なければよかったかも)

 後悔しても、もう遅い。
 シルキーと優勝の喜びを分かち合いたいとかなんとか言って逃げれば良かったと思いながら、イーヴィンは貰ったばかりの『酪農まつりデザート部門優勝』のトロフィーを握りしめた。

(まつりまでは、順調な日だったなぁ)

 熱弁をふるうリアンの、非現実的な案に「却下」と言いながら、イーヴィンはどうしてこうなったと唸った。

 どうしてこうなったのか。
 思い返すのは、少し前のこと。

 なつの月、中旬。
 イーヴィンの貯金はとうとう動物小屋とウシを手に入れるだけの額に到達した。

 すぐにでもウシを牧場に迎えたくて仕方がないイーヴィンは、恒例になっていたツリーハウスでのお茶会の場で、ファーガルに無理を言って、動物小屋建設の予定をねじ込ませてもらった。
 ついでに、打ち捨てられていたような有様の、牧草を貯めておくサイロの修理依頼も忘れない。

(うんうん、ファーガルには感謝だわ)

 サイロの修理に合わせて、牧草地の端をいくらか刈り取って牧草を用意したイーヴィンは、すぐにでも動物屋に駆け込みたい気持ちだったが、残念ながらローナンはハネムーン旅行中である。

 数日間のハネムーン旅行から戻ったばかりのローナンの尻を叩きながら、彼イチオシのウシの中の一頭を買い、マツダサンと名付けて飼い始めた。

(ヤマダサンに合わせて同じ茶色のジャージーを選んだけど、あれってチート効果よね。初めてのウシでジャージーは選べない仕様だったもの)

 案の定、飼育したばかりだというのに、マツダサンからとれたミルクはAランクだった。
 毎日ブラシをかけて、撫でて話しかけて、せっせと世話をすれば、そのうちSランクのものがとれるようになるだろう。
 ウッシッシと悪代官のような笑みを浮かべるイーヴィンに、マツダサンは「可愛いのに残念な子」と言わんばかりにモゥと鳴いて草を食んでいた。

 念願の動物小屋とウシを手に入れたイーヴィンは、ミルク瓶に入れたプリンを引っさげて、本日午前中に開催されていた酪農まつりに参戦した。

 酪農まつりとは、なつの月三週目の日曜日に開催される品評会である。
 ウシの愛情度を競うコンテストやミルクの品質を競うコンテスト、それからミルクを使用した料理のコンテストが行われる。

 このイベントで三位以内に入賞すると、島民全員の好感度がアップするという、素晴らしいシステムが『ハーモニーハーベスト』にはあった。

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