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おっさん、迷宮に挑む⑯
しおりを挟む「んあ~鬱蒼と繁ってるね、ここ」
「本当に。
もう~蔦が絡んで歩きにくいですわ」
「ん。脚を取られる。
こういう時は賢者のローブが邪魔」
「まあ、もう少し歩いてみよう。
幸いルゥのお陰で楽をさせてもらってるしな」
「わん!」
「あはは。
索敵ありがとね、ルゥ。
そういえばおっさん――」
「なんだ、シア?」
「今日の目標はこの階層にいる主の下見まででいい?」
「ん……そうだな。
そこら辺が最低限の目標でいいだろう」
「あら、随分と急いでませんか?
慎重なガリウス様らしくない」
「――ああ。
期日に余裕があるとはいえ、可能ならペース配分は巻きで攻略したいと思う。
俺の経験上、こういった依頼は絶対に不確定要素が絡んでくる。
そうなれば期日ギリギリになるのは間違いない。
焦りはパフォーマンスを低下させるだけでなく有り得ない不注意をもたらす。
余計なリスクに足を掬われたくはないしな。
だから可能なら前倒しで進みたいのさ。
ここの階層主の正体が判明すれば、対策が立てられるだろう?
せめてもの配慮ってやつだ」
「なるほど、了解致しました。
確かに予想外の事態は想定していた方が良いでしょうね」
「んじゃ――とっとと進もうよ!
そうして地上に戻ったら、ボクは一番にお風呂に飛び込みたい!」
「うふふ、同感ですわ」
「賛同。シアにしてはまともな提案。
ん、ガリウス?
どうしてそんな複雑そうな顔を?」
「……頼むから湯上りに下着姿でうろつくのはやめろ、マジで」
「あれ?
もしかして、想像しちゃった?」
「あらあら。
我慢なさらなくてよろしいのに」
「妄想逞しい。
やっぱりガリウスはむっつり」
「妄想じゃなくて全て現実にあった話だろうが!
つい昨日の事なのにもう忘れたのか、お前らは。
誰が酔っ払って脱ぎ始めたお前達を寝床に放り込んだと思ってる」
「ふふ~ん。
ボクのナイスバディはおっさんには刺激が強過ぎたみたいだね」
「あらあら、うふふ。
シアはまだ胸だけですわ。
出るとこは出て――くびれのある、なだらかな稜線を描く。
真に美麗なのはわたくしみたいな身体つきだと思いませんか、ガリウス様?」
「む、むきー!
ボクだってこれからもまだ伸びるんだから!
胸だってお尻だってきっと豊満になってみせ……」
「体型の話は――
やめるべき、と何度も言った」
「「はい!!」」
「っていうか――うるさ過ぎだぞ、お前達」
視線だけで人を殺せそうな顔で歪んだ半月を口元に浮かべているリアに必死に謝るシアとフィーを見ながら俺は深々と溜息を零した。
亡霊騎士の守っていた巨大な城門型転送魔法陣を抜けた先――
即ち、天空ダンジョン第三階層。
そこは蒼々とした森林がどこまでも続くエリアだった。
馴染みのある手入された近郊の森林ではない。
山奥に見受けられる、歴史に残された様な深い原生林である。
何とか獣道らしきルートは開かれているも、足元に絡みつく草や張り出した樹々の枝が非常に邪魔で気を削がれる。
空が見えず日光も遮られる為だろうか?
気を抜くと自分の立ち位置を喪い方向を見失ってしまいそうになる。
そしてさらに苛つかせるのが散発的に襲ってくる獣型妖魔だ。
こいつらは草原や城塞エリアとは一転、急に奇襲を掛けてくるようになった。
無論、通常のフィールドなら遅れを取る事はないだろう。
だが【索敵】スキルのセンサーに僅かに反応する小動物類が多いこの森林エリアではどうしても反応が一手遅れる。
全ての存在に警戒するのは実用的ではないからだ。
しかし苛立たしい事に、まるでそれを見計らった様に奴等は巧みに物陰に潜む。
樹々の陰。
巨岩の洞。
草花の茂みなどに。
実力差があるから敗北することはないものの、いつ襲われるか分からないという可能性は心を著しく消耗させる。
普通に組まれるバランス型パーティなら散策で疲弊し兼ねない程だ。
この先行きの不安さは、森林なのに確かに立派なダンジョンを形成している。
だが――俺達のパーティには索敵に優れたルゥがいた。
ルゥは魔狼としての嗅覚や聴覚だけでなく本能的な部分で敵を捉える。
曲がり角等で不意打ちされそうだった迷路みたいな城塞エリアに引き続き、自然に隠れ潜む敵の探知などお手の物だ。
このエリアの特色を掴むと未然に潜んでいる妖魔の位置を看破してくれている。
なので俺とルゥが共に斥候としてパーティを先行、敵の擬態やハイドを見抜く。
この場合、先行する者は一方的に狙われるので危険も伴うものだが……
何せルゥは未だ幼体とはいえ伝説の氷雪魔狼――フェンリルなのだ。
単独で戦って自衛が出来る上、特技を使用した【気候操作】もある。
致命的な威力は無いもスキルを活用すれば敵をあしらうくらいは容易だ。
そして何より、隠れ潜む場所さえ分かればこっちのものである。
場所が分かっている脅威など、張子の虎以下だ。
タネの割れた手品と同じ……ただのコケ脅しに過ぎないのだから。
余裕を以って戦闘に当たる事が出来る限りパーティに憂いは無い。
俺達は愚痴を言い合いながらも第三階層を順調に攻略していくのだった。
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