勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、今更に自覚

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「「「お待ちしておりました、ガリウス様」」」

 勇気と無謀を司る麗しき戦乙女の脇を抜け家精霊が来客者を感知し自在に自動開閉する大使館の扉を抜けた先――
 ハイドラントの後に続き入館した俺は、圧倒的なその光景に思わず尻込みする。
 華美な装飾の為された大使館入口の広大なホールには、おそらくこの大使館内で働いていると思しき従業員が勢ぞろいしており、俺の姿を認めるや一斉に丁重なお辞儀をしてきたのである。
 揃いの制服を纏った大使館職員に、執事・侍女・庭師・料理人などの館内を支えるスタッフに至るまで並び立っており、まさにオールキャストだ。
 一瞬、自分でなく勇者であるシアか誰かに対してかと思ったが、歓迎の挨拶の宛が俺の名前であることから間違いないと確証する。
 ただ……認識するのと納得するのは別の話だ。
 仲間達も驚いて固まっているし、抗議の意味を込め澄まし顔で動揺する俺を見守るハイドラントへ喰って掛かる。

「おい、ハイドラント!
 これはどういうことだ!?」
「何がです?」
「だから、この歓迎っぷりだよ!
 こんな派手にしなくとも良いだろう?
 幾ら何でもこれは――」
「ガリウス様」
「な、なんだ」
「私は貴方を【賓客】として持て成す様、指示を受けております。
 よって館内の者に対しても、一国……少なくとも精霊都市を代表する一流冒険者として貴方へ応対する様に厳命致しました。
 この大使館内では貴方、及び皆様につきましては他国における重鎮クラスの扱いを最低限させて頂きたいのです。
 息苦しいかもしれませんが、一国を代表するというのはそういう事なのです」
「なるほどな……
 これに関いてはむしろ俺の見通しが甘かったようだな、すまん」

 俺の本質はどこまでも戦士だ。
 ただ敵を斃す刃であればそれで良いと思ってきた。
 しかしS級になるというのはそういった心構えからして違ってくるのだろう。
 強さと人格の指標であるランクとは別に、社会的立場というものが付随される。
 つまりは一国の顔として様相を帯びるという事なのだろう。
 だからこそ優遇されるし……だからこそ縛られる。
 以前、ヴィヴィも言っていたではないか。
 立場に行動が束縛される、と。
 今にして思えば、アレはこういった事も含めた愚痴だったのだろうな。
 最早、勝手気ままな根無し草という身分ではいかなくなった。
 まあこうなる事はシアが勇者に就任した時から覚悟をしていたし今更か。
 慣れるのはどうかと思うが、狎れてはいけないから自戒しないと。
 未だびっくりしている一同に対し、上記の意を込めて眼で促す俺。
 さすがは察しが良い奴等である。
 言いたい事を十全に読み取り友好的に挨拶を交わし始める俺達。
 ハイドラントも肩の荷が下りたようだ。
 少しばかり相好を崩すと俺に声を掛けてくる。

「では、ガリウス様以外の皆様はこちらで少々お待ち下さい。
 ささやかとはいえ食堂にて歓迎の宴を準備させて頂きました。
 王都近郊の贅を凝らした食材、ワイン、そしてスイーツ。
 どれも珠玉の一品の数々です。
 どうか心ゆくまで堪能を――」

 ハイドラントの言葉を聞き終えるより早く、歓声を上げスタッフらに先導されて食堂へ消えていく一同。こういう時の行動力は見習うべき点があるな、本当に。

「え~っと、すまん。
 あいつらは甘いものに目が無くて、だな」
「それは重畳。
 さて、ガリウス様だけは今しばし御足労願います。
 貴方の来訪をお待ちになっている方がおりますので」
「もしかしてそれは――」
「ええ。
 無論、我が主と――精霊都市名代ことノービス・ノブレス・ノブリージュ伯爵様が執務室でお待ちになっております」

 あいつらのフォローを入れ様と言葉を紡いだ俺はハイドラントの淡々とした返答に頭が痛くなっていくのを感じた。

 



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