勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
218 / 398

おっさん、謙虚に感謝

しおりを挟む

「おお――久しいな、ガリウスよ。
 まずは海底ダンジョン制覇おめでとう。
 余の期待通りの働きであったぞ」
「伯爵の仰る通り――まことに大儀じゃったな」

 ハイドラントと共に入室した大使館の執務室にはノービス伯爵とレイナがいた。
 良い生地を使い丁寧に縫い込まれているが、飾り気のない服装は質実剛健を地で行く二人に相応しい。
 精霊都市の名代として多忙なのだろう。
 黒檀の大机上には今にも零れ落ちそうなほど書類が重ねられており……俺達が入室するまで二人は書類仕事に追われていたようだ。
 伯爵は書類にサインする手を休めて俺に声を掛け、わざわざ立ち上がり俺の方へ来ようとする。俺は慌てて臣下の礼を取ろうとするが伯爵に止められた。

「良い。
 お前は余の頼みを聞いてくれたのだ。
 それにこれからお前はS級になろうとする存在。
 ならば余の臣下でなく対等の立場で話すべきだ」
「それでは――」
「伯爵がこうまで言ってるのだ。
 その意を汲んでやるのが大人の態度じゃぞ、ガリウス」
「……分かりました。
 ここはレイナに倣い態度は改めます。
 ただ俺個人として伯爵には敬意を払いたい。
 それは構いませんね?」
「固い男じゃのう~」
「だが、それが良い。
 余の眼は曇ってはいないようだ」
「しかしちょっと違和感が」
「なんだ?」
「俺はまだS級に叙せられてはいませんよ?」
「ふむ、それも先程冒険者ギルドへの根回しが済んだところじゃ。
 二週間後、王都で行われる叙任式でお前は正式にS級となる
 そして名実ともに勇者パーティとしてもSランク認定を受ける」
「なっ――」
「根回しというのは聞こえが悪いな。
 ギルドは個人の上げた功績を厳粛に管理し評価している。
 お前の蓄積してきた努力がきちんと認められただけだ。
 余は認定決定に掛かる時間を削減する為の後押しをしただけよ。
 無論、お前のパーティへの評価も同様。何もズルい事はあるまい?」
「いや、しかしですね――」
「高レベル冒険者には権力者とのコネクションも必要じゃ。
 何よりお前は精霊都市の危機をも救った英雄。
 これぐらいはさせてもらっても非難は受けまい」
「同感だな。
 謙虚もいいがこれぐらいは世渡りの必要事項として受け入れよ」
「了解しました。
 ただ――深く感謝致します」
「うむ。その心掛けは大事だ。
 誰かに何かをしてもらったら感謝する事。
 当たり前のことだがこれが中々出来ないものが多くてな。
 これからも長い付き合いになると思うが……初心を忘れないでほしい」
「はい」
「さて、ガリウスよ――お前にわざわざ王都まで出向いて貰ったのは他でもない、例のトーナメントの件だ」
「レイナから伺いました。
 復活した魔族へ反旗を翻す勇者隊を結成するとか」
「ああ。
 半年前に突如復活を遂げ、人族に侵攻を始めた魔族。
 稀人の召喚術師の手によって生み出された聖獣や魔獣らによって、どうにか戦線を支えてはいるが……駄目だな。
 このままではあと数か月で人族は追いつめられる」
「話には聞きましたが……やはりそこまで劣勢なのですね?」
「お主も知っておるじゃろう?
 奴等は魔神と同じ、位階障壁を纏う。
 雑兵をいくら集めても傷一つ与える事は出来ん。
 ならば障壁を貫通可能な術師の出番なのじゃが……死線が飛び交う危険な前線に術師を出すのは憚れる。
 実際のところ、魔術協会や魔導学院から派遣された魔術師らの中にも殉職した者が続出しておってな……問題になっておるのじゃ」
「そこでだ、ガリウス。
 トーナメントへの参加と共にお前に頼みたい事があるのだ」
「何でしょう? 自分に出来る事ならば」
「豪族の娘を勇者に。
 孤児の娘を聖女に。
 見習の娘を賢者に。
 素質に恵まれたとはいえ、彼女らを的確に導いたお前の卓越した育成能力……
 それを余は買っている。
 任命式までの二週間、明日からで構わぬ。
 お前には我が配下の軍を鍛えてもらいたい」

 人の好い笑顔で無理難題を告げるノービス伯爵。
 お澄まし顔のレイナにハイドラント。
 驚いた様子はなく、既に承知済みのようだ。
 つまりここまでがハイドラント訪問から今回の仕込みだったのだろう。
 無論、俺に拒否権はない。
 断れば伯爵の名誉を損ねるし恩義もあるからな。
 だが巧いやり方だ……これが上流階級の社交術、策謀というヤツか。
 頭痛が増してきたのを感じながらも、巧妙な手法に俺は感心するのだった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...