勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、試合を観戦⑤

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 第11回戦が始まった。
 今回の対戦は【護士】ミカサ対【銃士】セーリャの戦いだ。
 強固な防御力を誇るミカサの盾をセーリャの銃弾が突破できるかが焦点になる。
 試合開始の合図と共に動いたのは勿論セーリャだ。
 構えて動かないミカサの周囲を疾風の様に駆ける。
 正面からでは自慢の銃弾もさすがに分が悪い。
 少しでも狙撃に優位な位置を取ろうとしているのだろう。
 無論、易々とそれを許すミカサではない。
 激しく動き回るセーリャに合わせ重厚な盾を常に相対できるようポジショニングを続ける。
 このままでは不利なのはセーリャだ。
 体力は無尽蔵ではない。
 何より圧力を掛けながらジリジリと距離を詰めるミカサのプレッシャーは相当なものだ。
 俺も先程やった戦法だが精神的にこれは効く。
 セーリャも我慢していたがそれも限界に達したのか。
 銃を手元に寄せると焦れたようにミカサへと向かう。
 遠距離射撃が叶わぬならば、初戦同様に【獣】の力、愛獣【ジャバウォック】で片を付けようとしたのだろう。
【銃士】とは【獣士】……獣の力を秘めた銃を自在に扱うクラス故に。
 だが二番煎じは通じない。
 その手口はすでにシャリスとの戦いで見せていた。
 不敵な笑みを浮かべ迎撃しようとしたミカサだったが……その膝が崩れる。
 信じられない様に自身の身体を見下ろすが、すぐに毅然と盾を構える。
 観客は分からないようだが【視る】までもなく俺には分かる。
 セーリャが最初に見せたダッシュ。
 一見隙を窺うようにみせたあの無駄な動きが実は伏線だったに違いない。
 ミカサほどの腕前を持つ者に対し、容易に優位なポジションなどが取れないことはセーリャも先刻承知だった。
 だからこそミカサの周囲を駆けながら罠を張り巡らせた。
 それは無味無臭の痺れ薬かはたまた兎人族が得意とするドルイド魔術の秘儀か。
 いかなるものかは不明、だが効果は判明した。
 膝を着き大盾を構えるミカサに精彩さは無い。
 そして達人とはいえ獲物が僅かに見せた動揺を熟練の狩人は見逃さない。
 ここぞとばかりに襲い掛かるセーリャ。
 銃弾を連続で放ち盾を弾きながら、愛銃を愛獣へと変容させ勝負に懸ける。
 巨大な獣が牙を剥きミカサへ喰らい付く。
 絶体絶命の窮地に追い詰められたミカサ……誰しもがそう思っただろう。
 その瞬間、ミカサは盾を捨てた。
 無防備な姿を晒すその姿に怪訝そうな眼を向けるも攻撃を続行させるセーリャ。
 初戦でミカサが見せた【チャージリフレクション】の発動に対してはダメージが未だ足りない。
 それに一撃で致命的なダメージを与えれば反射する間もなく倒せる。
 これは数多くの獲物を仕留めてきた彼女の直感が為せる技。
 しかしセーリャは知らなかった。
 王室護衛官……ロイヤルガードの狂気ともいえる執念を。
 凶悪な獣に全身を貪られ還命の宝珠の崩壊と共に昏倒するミカサ。
 されど――それはセーリャも同様。
 その場に崩れ落ちるや、自身の身に何が起きた分からぬまま同様に昏倒する。
 世にも珍しいダブルノックアウトに対し、困惑したまま両者敗北を告げる司会。
 観客もただ茫然と事の成り行きを見守りざわめきを上げる。
 担架で運ばれる二人がモニターに写される中、俺は真相に気付いていた。
 ミカサが使ったのは【サクリファイス】に属するスキルだったに違いない。
 自分自身を生贄とした報復系の因果干渉。
 それは呪詛にも似た強制力を以って自分の負ったダメージを襲撃者へと返す。
 やんごとなき高貴なる者を護る為、命を捨ててでも襲撃者の命を奪う。
 自分自身の命すら盾とする究極の護り。
 その情念と執念を見抜けなかったのがセーリャの敗因だろう。
 満足げな笑みを浮かべるミカサと口惜し気に唇を歪めるセーリャ。
 万全の守りと一点突破の攻め。
 どこまでも対照的な二人の顔を視ながら……俺はその健闘ぶりに対し惜しみない称賛を送るのだった。








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