勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
258 / 398

おっさん、慄き震える

しおりを挟む

「先生……」
「寄るんじゃねえ、ガリウス!」

 剣を支軸に老いた身体を引き起こそうとするイゾウ先生。
 騙し騙し霊薬で補っていたが、遂に最後の一線を越えてしまったのだろう。
 身体はまるで幽鬼のように痩せ果ててしまっている。
 見る者に震えをもたらした猛虎のごとき気迫も既にない。
 枯れ果てたその姿を見かねて駆け寄り支えようとした俺だったが……先生の怒声に制止させられた。
 そんな惨状の中でも眼が――異様にギラつく瞳だけが輝いていた。
 ああ、先生は変わらない。
 ――否、変えられない。
 だからこそ剣士としての自分を譲れない代わりに全てを投げ打つのだ。
 それは何と愚かしく滑稽で――
 それは何と誇らしく痛快な生き方なのか。
 神龍眼で垣間視ているとはいえ、これから起きる事は人として赦されない行為。
 でも――自己の研鑽に人生を費やした先生だからこそ、選び取った道でもある。

「燃えたよ燃えた、燃え尽きた……」
「先生……俺は」
「いい死合だった。
 人生の全てを集約し、振り絞る様な。
 全てを燃やして――残ったのは真っ白な灰のみだ。
 だがよ……まだ足りねえ。
 足りねえんだ、ガリウス。
 胸の内に燈る微かな熾火がざわめくのさ。
 奮い立て、魂を燃やせ! ってな。
 武人になるということは、止まらない列車に飛び乗るようなものよ。
 もう二度と降りる事はできねえ――負けて転がり堕ちるまでは。
 だからこれから起こる事に対し、手前は何も気に病まなくていい。
 全部儂の――いや、オレの我儘よ」
「先生、待ってくだ――」

 俺の返事を待たずして先生は手にした刀を振るう。
 俺と同じ稀代の名匠樫名が生み出した刀を。
 数多を斬り滅ぼし概念武装と化したその刃を。
 精度も手数もガタ落ちした切っ先が向かうのは王都郊外に設けられた闘技場の結界と発生装置。
 長距離転移などを阻害し外界を隔てる最後の砦である。
 それが今――甲高い音を立てて崩壊する!

「さあ、約束は果たしたぜ――
 次はおめえらの番だ……魔族よ」
「承知」

 吐き捨てるように呟いた言葉と共に先生の足元から涌き出る水。
 黒(くろ)く玄(くろ)く黎(くろ)いその水は波濤のごとくうねり――異形の魔へと姿を変えていく。
 水を媒介とした長距離転移。
 魔術演算や補助を必要としない鮮やかさな構築式は最早魔法と見紛う程。
 いや……伝承が真実ならば奴等は神々に匹敵する力を持つ。
 ならばこれも魔法の一種なのだろうか。
 出現したその姿に――俺は怖気と戦慄を隠し切れない。
 上半身は瞑想するように双眸を閉ざした、どこか儚げで美しき女性。
 ただし――肢体に蠢く巨大な八つの瞳を無視するのならば、だが。
 何よりその下半身が問題だ。
 全長5メートルを超える巨大な蜘蛛。
 鋼よりも堅い剛毛。
 外骨格に守られ爪の先端部は名剣を超える鋭さで闘技場の土台に食い込む。
 アルケニーに似て非なるその畏容――噂に聞いたことがある。
 こいつが依り代にしているのはまさか、悪名名高き魔晶湖の怪魔か!
 上位精霊に匹敵し得る、災害級を超えるレジェンダリークラスの妖魔!!

「栄えある真族108柱が、子爵【プリンシパリティ】。
 死せる水のシェラフィータ――ここに推参」

 造り物じみた容姿を崩さず玲瓏冷然と告げる魔族。
 子爵級魔族の現界。
 今――遂に王都は魔族の侵入を許してしまったのだった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...