勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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攻防、らしいです

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「……昔の名だ。
 今の私には関係ない」
「そうだね……貴方には既に忘れかけた過去なのかもね~。
 でも……僕達にとっては残念ながら今現在、なのさ。
 随分と幸せそうにしちゃって……
 この、偽善者が。
 貴方にそんな資格はないと自覚してるだろうに」
「……何と言われ様が構わん。
 お前達を見過ごす訳にはいかなかった」
「へえ~……それが子供まで手に掛けた勇者達の言い訳なんだ?」
「言うな!」

 互いに有利になる間合いを計りながらの問答。
 遠くてよく聞き取れませんが、
 どうやら父様はパンドゥールとは旧知の関係らしいです。
 それも厄介な因果に関連した。
 激しい気迫と共に剣から闘気を飛ばした父様。
 パンドゥールは厭らしい笑いを浮かべると、後方に飛び退き回避します。

「まあどうでもいいや。
 結局は勝った方が正しいし。
 ええっと……確か、
 ぱわーおぶじゃすてぃす?
 だっけかな。
 魔神皇様が言ってたのは。
 それが正義ってヤツの本質でしょう?」
「相変わらず変わってないな、貴様らは。
 戦災孤児だったお前達を拾い、育てた魔神皇。
 恩義に報いようとするのは分かる。
 だがな、与えられた力による虐殺を許す訳にはいかない。
 貴様らに弄ばれ殺された千人を超える犠牲者達。
 その魂はまだ浮かばれん。
 何故疑問に感じなかった?
 たとえそれが魔神皇の命だとしても、だ」
「僕達はあの方の忠実なしもべ。
 いうなれば道具、なのさ。
 用途に応じて使い分け。
 ああ、楽しいぃ♪」
「……憐れな」
「ん? 上から目線だね~。
 生意気だな、その態度」

 互いの隙を窺いつつ会話をしていた二人ですが、
 先に大きく動いたのはパンドゥールでした。
 中空に手を伸ばすと何かを掴む真似をします。
 すると瞬く間に周囲に浮かぶ黒く昏き鋭い円錐。
 不気味に数を増やすそれは50を超えます。

「まずは御挨拶から。
 家族が巻き込まれたらごめんね~
 まあ~巻き込む気満々だけど。
 じゃあ……
 いっくよ~~~~~~~~~~~!!!」

 手を開孔すると共に、一斉に解き放たれる円錐。
 猛回転をしながら父様と私達に迫ってきます。
 来るのが認識は出来るものの、反応出来ないほどの速さ。
 当たるまでもなく、
 もしアレに触れてしまったらおぞましい結果が待ち受けてるでしょう。
 あ、危ない!
 咄嗟に母様だけでも庇おうとした私。
 闘気を循環させ高純度化し、肉体の強化を図ります。
 しかしだからこそ私は『視え』ました。

「戯言だな」

 呟き、緩やかに剣を構えた父様の剣先が蜃気楼のようにブレるのを。
 そして私達を守る様に一陣の旋風が奔ったのを。

「それで?」

 剣先を下ろし、何事もなく尋ねる父様。
 僅かに髪が乱れてます。
 でも、それだけです。
 何が起こったのか理解不可能な斬撃の嵐。
 知覚できないレベルでどれ程の攻防があったのでしょう。
 私達に迫っていたあの円錐は、全て消えていました。
 恐ろしいほどの剣技。
 遥か高純度の闘気による身体強化。
 いえ、兄様の言葉が本当なら……
 これこそがS級といわれた冒険者の格、なのでしょう。

「……相変わらずバケモノだね。
 アノ術式をよくもまあ」
「お前達ほどじゃない。
 私は人として生まれ、人として鍛えただけのこと。
 安易に力を求めたお前達とは違う」
「言うじゃないか。
 では……手数で攻めてみよっかな~」

 パンドゥールの宣言と共に、再び中空に浮かぶ円錐。
 数もさることながら、連携を図る様に今度はパンドゥールの影から次々と闇の獣達が出現し父様を狙います。
 
 
「いくよ~ほらほら……
 実際に証明してみせてみろよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 絶叫が戦いの狼煙となります。
 魔戦はまだ終わりそうにありません。




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