勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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「じゃあ吾はここで。
 村人に姿を見られると色々面倒だからね。
 ミスティによろしくな、ユナ。
 君の更なる精進を祈る、と伝えてくれ」
「うん。了解。
 同行ありがとう、リューン。
 また連絡するね」
「ああ。さらばだ」

 森の出口でリューンと別れます。
 心配性なリューン。
 毎回私が大丈夫、と言ってもいつも森の中で護衛をしてくれます。
 力を取り戻したリューンは流石幻獣だけあって私では及ばない強さを持ちます。
 けどリューン自身はまだ4年前の事を悔やんでる節があります。
 何かと私にかまけてくれるのは贖罪か親愛なのか。
 私には判別出来ないけど、その心遣いが嬉しいです。

「と、急がないと」

 のんびり思考してる場合じゃありません。
 村の出入り口が見えてきました。
 我が家に程近いゲートには人だかりができ、
 乗り合い馬車の停留所は沢山の人でいっぱいでした。

「すみません。
 通していただけませんか?」

 強引に割り込み、先を目指します。
 順調に進む私でしたが、一際大きいお尻に妨害されました。
 御近所のお喋りおばさんです。
 ある事ない事を言いふらすので、実害はないけど私は苦手です。

「あら、ユナちゃん」
「こんにちは」
「お兄ちゃん凄いわねー。
 魔導学院の特待生ですって?」
「ええ」
「こんなことならウチの子をあてがっておけばよかったわ」
「兄様は好みがウルサイですからどうでしょう?」
「あら、それなら大丈夫よ。
 ウチの娘はあたしに似て器量良しだし」
「そうですね……」

 利己的な物言いに嫌悪を抱きます。
 無論顔には出しませんが。
 普段は兄様を嫌ってたのに、試験に合格した途端にこの反応。
 大体娘を何だと思ってるのでしょう。

「すみません、先を急ぐので」
「あら、ごめんなさいね。
 お兄ちゃんによろしく~」
「はあ……」

 鬱屈した想いを切り捨て、人込みを抜けた先、
 ジャレッドおばさんに熱い抱擁をされ苦笑するミスティ兄様の姿がありました。
 この4年で身長も伸び、今では見上げる程です。
 少女と見紛う程の美貌は顕在で、ノルン家に色濃く出る遺伝的な特徴、
 深淵を連想させる漆黒の髪や、紫水晶の様な煌めきを放つ薄い紫の瞳もその容姿に拍車を掛けてます。
 しかしいつも何か企んでるような悪戯めいた表情が台無しにしてる……
 とは村の女の子の話です。
 そんな兄様ですが、村の男の子達には絶大な人気があります。
 権力や暴力による支配や横暴を許さない兄様。
 ゴーダ達にはいつも真っ向から反発してました。
 苛められたとこを助けてもらった子達も数え切れないほどです。
 更に何だかんだで面倒見がいいのもあるのでしょう。
 今もミスティ兄様を囲む様に男の子達の円陣が出来ており、

「ミスティにいちゃああああああああん!!」
「いかないでよおおおおおおおおおおお!!」
 
 と大泣きしてます。
 その筆頭はワキヤ君です。
 4年前の事件からまるでミスティ兄様を実の兄の様に慕っており、
 その忠誠ぶりにはクーノちゃんコタチちゃんも嫉妬するほどです。

「遅刻ですよ、ユナ」

 大騒ぎする集団を遠巻きに眺める私。
 そんな私の背後から優しく掛けられる落ち着いた声。
 慌てて振り返った先には、

「シャス兄様」

 ミスティ兄様同様、しなやかに成長したシャス兄様の姿がありました。
 長く伸びた髪をポニーテールにしてる為、中性的な雰囲気が増してます。
 パッと見は完全完璧な美少女です。
 何だか私より美人な気がします。
 でもよく見れば、程よくついた筋力や意志の強さをたたえた双眸を窺う事が出来るはずです。
 弓手村の若手でも随一の腕前を誇り、将来を嘱望されてるらしいです。
 実際妖魔を討伐してる実績があるのも大きいのでしょう。
 お蔭でファンが増え、兄様が鍛錬に稽古場へ赴くと大騒ぎになるらしいです。
 この間は冒険者の人達に声を掛けられたと聞きました。
 むー。
 ……何だか思い返したら腹が立ってきたような……

「今日は急な話だけど兄さんの出立の日だから……
 って、何で不機嫌になってるんです?」
「別に~(ふん)」
「……年頃の女の子はよく分かりませんね(ふむ)。
 まあしばらく兄さんとお別れになります。
 よく話しておきなさい。
 特にユナも兄さんもまだ諦めてないのでしょう?」
「……はい」
「僕も一緒です。
 ですから……思いの丈をしっかり伝えておきなさい。
 兄妹の誓いを新たにする為にも」
「はい!」

 私の我儘に当惑したシャス兄様ですが、
 真剣な表情になると声を潜め尋ねてきます。
 真摯なその言葉に私も居住まいを正し、きちんと応じます。
 沢山の人に囲まれるミスティ兄様。
 送別の挨拶を続ける人達の順番を待ちます。
 そして、ついに私の番が巡ってきました。

「ミスティ兄様……」
「おっ、ユナ」

 呼び掛けた私の声に、兄様は快活な笑みを浮かべ応じるのでした。

 

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