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礼儀作法みたいです
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「おはようございます、ユナ様」
「おはようございます、ファル姉様」
少し出遅れてしまった為か、ファル姉様は既に台所で炊事に取り組んでました。
髪を結い上げ、幅広のエプロンで完全装備。
私に気付き振り返るその仕草。
シックなドレスが可憐な大輪の花を咲かせます。
内面から輝かんばかりのその奉仕姿勢。
持ち前の美貌も相まって、同性なのに見惚れる程です。
メイドの心構えとして挨拶と共に上品に一礼をする姉様。
私も教わった作法で返します。
懸命な私の仕草にファル姉様は優しく微笑んでくれます。
「礼儀作法が上手になりましたね、ユナ様」
「そうでしょうか?
まだぎこちない気がして……」
「そんな事はありませんわ。
この一ヶ月で驚くくらい急上昇してます。
付け焼刃でなく、きちんと型を身に着けてるのが素晴らしいですわ」
「そんなこと……ないですよ(えへ)」
師匠に褒められるのは弟子として一番嬉しいです。
たとえお世辞でも。
ですがそんな私の気持ちを読み取ったようにファル姉様は首を振ります。
「フフ……お世辞ではありませんわ。
公平に正当な評価ですのよ?
それに今朝も早起きですし、感心致します」
「ファル姉様こそ毎日早起きです」
「わたくしはメイドとして当然の事をしてるまでです。
メイドたる者、仕えるべき御主人様よりも早く起床するだけでなく、快適な一日を過ごして頂く為、的確に準備を整えるられる様にするのが常なる姿勢ですから。
常在戦場、メイド版ですわ。
まあ、わたくしもまだまだ精進が足りませんけどね」
「そうなのですか?
ファル姉様は既に一流の域に達してると思いますけど」
「そんな事はありません。
良いですか、ユナ様。
メイドの道は一日しては成り立つものではないのです。
飽く事なき地味な努力の積み上げ。
退屈なそれこそが確固たる地盤を形成するのです」
「はあ……奥が深いのですね」
「道ですからね。
まだわたくしもその入口に差し掛かった辺りです」
「私は?」
「ユナ様は未知なる道を発見して大喜びしてる段階ですわね」
「はう……否定できません」
完全に降参です。
頭に手をやり反省する私に、優雅に微笑むと姉様は炊事に戻ります。
トントントン。
リズミカルな音を立てて食材を刻む包丁。
その傍ら、吹き零れそうな鍋の蓋を取り小皿で味見。
何か不服だったのか、手早く調味料を付け足すと作業に戻ります。
澱みなく動くその動きは熟練職人の様です。
見蕩れそうになる気持ちを押し留め、台所についた私は、
井戸に併設された水瓶に水を汲み出します。
顔を洗い口を濯ぎ準備OK。
腕まくりをして共に朝食の準備に取り掛かります。
「私は何をお手伝いすればいいですか、ファル姉様?」
「そうですね……
わたくしはこれからピザ生地に取り掛かります。
ユナ様は卵の調達をお願いしてもよろしいですか?」
「は~い。了解です」
ファル姉様の頼みとあればお安い御用です。
まだ宵闇が支配する早朝、私は外に向かいます。
春も半ば過ぎとはいえ、日中はともかく朝方は寒さを感じます。
羽織る物もない、エプロンドレスの私。
肌寒さを感じない様、体内の気を循環させ身体温度を微調節します。
そんな私を眼光を光らせ監視する輩。
……家で飼ってる鶏なんですけどね。
まあ普通の鶏というのは語弊があるかもしれません。
リーディング能力で得た鑑定スキルの結果、この鶏はブレイブチキンという闘鶏種であることが分かりました。
勇敢(ブレイブ)なのか臆病(チキン)なのか、どっちです?
とツッコミを入れたい感じですが。
王都では大規模なトーナメント大会も開かれる程人気がある種類らしいです。
幼い私が敗北したのも当然だったのでしょう。
無造作に近寄る私に対し、荒鷲のようなファイティングポーズの後、
怪鳥音を上げ飛び掛かってくるブレイブチキン。
しかし、甘い。
昔の私ならともかく、成長し能力に目覚めた今の私の敵ではありません。
「無駄です……
あなたの動きは、既に見切りました」
心眼(偽)スキル発動。
膨大な戦闘経験(リーディング能力により得た仮初めの物)により、最善の動きを瞬時に把握。
攻撃可動域を最小限の見切りで回避します。
必殺の一撃を躱されたのが衝撃なのか、驚愕の表情を浮かべるブレイブチキン。
私はそんな彼女の隙を逃さず、闘気を込めた手刀で瞬時に意識を刈り取ります。
彼女には私の手刀が禍々しい命を刈る形に見えた事でしょう。
地面へ這いつくばり痙攣するブレイブチキン。
ボロ雑巾のようなその姿。
4年前の幻視が重なります。
「勝利とて虚しいものです……」
生きることは闘いです。
私は敗北者に十字を切ると、彼女の巣へと赴き戦利品を頂くのでした。
「おはようございます、ファル姉様」
少し出遅れてしまった為か、ファル姉様は既に台所で炊事に取り組んでました。
髪を結い上げ、幅広のエプロンで完全装備。
私に気付き振り返るその仕草。
シックなドレスが可憐な大輪の花を咲かせます。
内面から輝かんばかりのその奉仕姿勢。
持ち前の美貌も相まって、同性なのに見惚れる程です。
メイドの心構えとして挨拶と共に上品に一礼をする姉様。
私も教わった作法で返します。
懸命な私の仕草にファル姉様は優しく微笑んでくれます。
「礼儀作法が上手になりましたね、ユナ様」
「そうでしょうか?
まだぎこちない気がして……」
「そんな事はありませんわ。
この一ヶ月で驚くくらい急上昇してます。
付け焼刃でなく、きちんと型を身に着けてるのが素晴らしいですわ」
「そんなこと……ないですよ(えへ)」
師匠に褒められるのは弟子として一番嬉しいです。
たとえお世辞でも。
ですがそんな私の気持ちを読み取ったようにファル姉様は首を振ります。
「フフ……お世辞ではありませんわ。
公平に正当な評価ですのよ?
それに今朝も早起きですし、感心致します」
「ファル姉様こそ毎日早起きです」
「わたくしはメイドとして当然の事をしてるまでです。
メイドたる者、仕えるべき御主人様よりも早く起床するだけでなく、快適な一日を過ごして頂く為、的確に準備を整えるられる様にするのが常なる姿勢ですから。
常在戦場、メイド版ですわ。
まあ、わたくしもまだまだ精進が足りませんけどね」
「そうなのですか?
ファル姉様は既に一流の域に達してると思いますけど」
「そんな事はありません。
良いですか、ユナ様。
メイドの道は一日しては成り立つものではないのです。
飽く事なき地味な努力の積み上げ。
退屈なそれこそが確固たる地盤を形成するのです」
「はあ……奥が深いのですね」
「道ですからね。
まだわたくしもその入口に差し掛かった辺りです」
「私は?」
「ユナ様は未知なる道を発見して大喜びしてる段階ですわね」
「はう……否定できません」
完全に降参です。
頭に手をやり反省する私に、優雅に微笑むと姉様は炊事に戻ります。
トントントン。
リズミカルな音を立てて食材を刻む包丁。
その傍ら、吹き零れそうな鍋の蓋を取り小皿で味見。
何か不服だったのか、手早く調味料を付け足すと作業に戻ります。
澱みなく動くその動きは熟練職人の様です。
見蕩れそうになる気持ちを押し留め、台所についた私は、
井戸に併設された水瓶に水を汲み出します。
顔を洗い口を濯ぎ準備OK。
腕まくりをして共に朝食の準備に取り掛かります。
「私は何をお手伝いすればいいですか、ファル姉様?」
「そうですね……
わたくしはこれからピザ生地に取り掛かります。
ユナ様は卵の調達をお願いしてもよろしいですか?」
「は~い。了解です」
ファル姉様の頼みとあればお安い御用です。
まだ宵闇が支配する早朝、私は外に向かいます。
春も半ば過ぎとはいえ、日中はともかく朝方は寒さを感じます。
羽織る物もない、エプロンドレスの私。
肌寒さを感じない様、体内の気を循環させ身体温度を微調節します。
そんな私を眼光を光らせ監視する輩。
……家で飼ってる鶏なんですけどね。
まあ普通の鶏というのは語弊があるかもしれません。
リーディング能力で得た鑑定スキルの結果、この鶏はブレイブチキンという闘鶏種であることが分かりました。
勇敢(ブレイブ)なのか臆病(チキン)なのか、どっちです?
とツッコミを入れたい感じですが。
王都では大規模なトーナメント大会も開かれる程人気がある種類らしいです。
幼い私が敗北したのも当然だったのでしょう。
無造作に近寄る私に対し、荒鷲のようなファイティングポーズの後、
怪鳥音を上げ飛び掛かってくるブレイブチキン。
しかし、甘い。
昔の私ならともかく、成長し能力に目覚めた今の私の敵ではありません。
「無駄です……
あなたの動きは、既に見切りました」
心眼(偽)スキル発動。
膨大な戦闘経験(リーディング能力により得た仮初めの物)により、最善の動きを瞬時に把握。
攻撃可動域を最小限の見切りで回避します。
必殺の一撃を躱されたのが衝撃なのか、驚愕の表情を浮かべるブレイブチキン。
私はそんな彼女の隙を逃さず、闘気を込めた手刀で瞬時に意識を刈り取ります。
彼女には私の手刀が禍々しい命を刈る形に見えた事でしょう。
地面へ這いつくばり痙攣するブレイブチキン。
ボロ雑巾のようなその姿。
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