勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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 7歳になっても私の朝は早いです。
 まだ日も差さぬ早朝、家人の誰よりも早く起床します。

「ふああ~
 ……よく寝ました」

 大きく背伸びします。
 そのまま軽く右に左に柔軟運動。
 これが私のメンタルスイッチです。
 電源を入れた様に身体に活力が燈ります。
 私は寝具を片付けると、誕生日に父様に買ってもらった姿見の前に赴きます。
 そして手早くパジャマを脱ぐと、自分の状態を把握します。
 痩せ過ぎず太過ぎず。
 適度に筋肉と脂肪がついた少女の姿がそこに映ってます。
 若干胸が残念な気がしますが……
 私はめげません。ええ。
 陰鬱な思いを吹き飛ばす様に、気による体内のサーチを開始。
 丹田と呼ばれるおへそ下のチャクラが緩やかに回転を始めます。
 生み出された気は身体を循環し、微弱な波動を察知。
 その結果を伝えてくれます。

 熱・血圧・脈拍などのバイタルサイン……異常なし。
 身体機能及び睡眠状態良好……特変みられず。
 コンデイション・オールグリーン。

 鏡に向かって頷くと、傍らに立て掛けてあったハンガーに手を伸ばします。
 そこに掛けられていたのは……

「うふ……
 本物のメイド服だぁ~」

 秋葉で見たものよりもフリルは少なめですが、紛れもないエプロンドレス。
 嬉しさに幾度も見直してしまいます。
 ファル姉様が我が家に来て一月。
 これは弟子入りしてからしばらくの後、祝福の言葉と共に贈られたものです。
 恐ろしい事に全てファル姉様の手縫いです。
 私の寸法を的確に捉えたこのメイド服は外見だけでなく機能性にも富んでます。
 何度見ても飽きる事はないし、その着心地は最高です。
 まさに至高の一品。
 垂涎の的です。
 見る度に顔がだらしなく歪むのを頑張って堪えます。
 ファル姉様曰く、

「メイドたる者、いついかなる時も優雅さを忘れてはいけません」

 との教えがあるからです。
 常に気品溢れた佇まいを装うべく、私は戦闘装束(メイド服)を身に纏います。
 これから私が行くのは戦地なのです。
 銃弾と剣戟の代わりに家事と忙殺が飛び交う戦場。
 泣き言は許されません。
 いかなる不条理にも打ち勝つ心。
 あくまで華やかに。
 どこまでも麗しく。
 それこそメイドたる者の心構えです(キリッ)。

(でも……もう少しだけ……)

 簡単に誘惑に屈した私。
 鏡の前でポーズを取ります。
 ドヤ顔でセクシーさを増すべく髪を掻き上げてるお馬鹿さんと目が合いました。
 ちょっと……死にたくなります。
 ……こんな事をしてるから遅れるのですね。
 ふと我に返った私は赤面しつつ自室を出るのでした。


 
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