勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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羞恥と無礼千万みたいです

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 自分なりのスタイルを見い出す事。
 それが父様から与えられた課題です。
 でも、私らしさって何でしょう?
 汗に濡れた運動着を脱ぎ、風呂場に続く脱衣室に設置された籠に放り込みながら私は考えます。
 いつもなら肌に張り付く感触を不快に思うところですが、今は気になりません。
 当惑した思いと葛藤とを抱えながら前を見ます。
 脱衣室に設置された鏡に映る、生まれたままの姿の自分。
 多少鍛え込まれてはいるも、どこにでもいる普通の少女がそこにはいます。
 私は鏡に手を当てると、内心問い掛けます。
 貴女らしさって何? と。
 転生し、ユナティアとして生きる悠奈である私。
 うっすら推測してますが、今の私は転生前の私と完全に同一ではありません。
 正確に言うなら悠奈としての私と、ユナティアとしての私。
 双方の意識と認識が混合し合ったのが、今の自分なのでしょう。
 悠奈だった記憶を受け継いではいますが……
 時が経つにつれ、私はやはり父様と母様、そして兄様達に囲まれた育ったユナとしての認識が根底にはあります。
 そんな曖昧な存在である私の自我は希薄です。
 確固たる自分を主張できるものはありません。
 しいて言うならメイド道でしょうが……
 これはどちらかと言うとスタイルよりスタンスに近いのでしょう。
 明確な判断を下す基準にはなりません。
 ここ数年はただ強くなる事に執着し、内面を窺う事を敢えて放棄してました。
 でも、素の私はこんなに弱いのです。
 母様に会いたくて未だに泣きそうになるし、
 ミスティ兄様と離ればなれになって寂しい。
 親離れ出来てないというか……結局は子供なのです。

「はあ……何て未熟」

 鬱屈した自分に呆れてしまいます。
 まあ悩んでいても仕方ありません。
 私はツインテールを解くと、汗を流す為に風呂場に入り、

「……え?」
「ん?」

 長い黒髪を艶やかに滑り落ちる水滴。
 細身ながらも均整の取れた筋肉質な身体。
 柔和さに秘めた誇り高い獣のような美麗な容姿。
 そこには水を浴びるシャス兄様がいました。
 っていうか、思いっきり目が合いました。
 思わず硬直する私。

「う……」
「う?」
「うきゃああああああああああああああああああああああ!!!」

 変な声を上げてパニくります。
 だって全裸で男の人が予想以上の大きさで絹の様に繊細な濡れ惚れあsdfgh
 突然の事態に思考が混乱します。
 しかしそんな私を余所に、
 兄様は苦笑すると、さっさと水風呂に入ってしまいます。
 のんびり頭にタオルを乗せながら、
 あたふたする私におかしそうに尋ねてきます。

「どうしたんだい、ユナ?」
「いやその兄様が先に入ってるとは知らずに此度は大変ご無礼奉りますもす」
「変なユナ。
 兄妹なんだからいいじゃないか。
 別に減る訳じゃないし……
 久々に一緒に入ろう」

 いえいえ兄様。
 その認識は間違ってます。
 目に視える測りはないも色々減るのです。
 ヲトメ心とか羞恥心とか、もう~なんか色々なものが。
 っていうか確かに昔は一緒に入浴や水浴びをしてましたが……
 改めてこうして見ると、兄様はもう少年って感じです。
 何だか年端もいかない少年に悪戯してるようないけない感じが付き纏います。

 に、兄様は純粋にお誘いしてるだけですよね?
 私は悪くないですよね?

 誰が見てる訳でも聞いてる訳でもないのに弁解すると、
 私は恐る恐る足を踏み入れます。

「し、失礼しま~す」
「うん。おいで~」

 無邪気に応じるシャス兄様の微笑み。
 私は若干緊張しながら腰を下ろし水を浴びます。
 ふう。気持ちいいです。
 暖かい陽気の中、運動し火照った身体が徐々に冷えていきます。
 同時に私も冷静さを取り戻してきました。
 兄様の指摘通り、兄妹でドキドキしてる方がおかしいのです。
 まったく不届き千万極まりません。
 私は頭の片隅に緊張を追いやり、ファル姉様の様なクールさを装います。
 よし、何とか準備OK。
 異性の裸、バッチこ~い! って感じです。
 キャラが壊れてるのはご了承ください。
 高速で思考しながら、身体の汗を軽く流します。
 砂と埃に汚れた髪を洗おうとしたところで、

「あ、ユナ。
 僕がやってあげるよ」

 ポルカの実を手に、半身を乗り出した兄様が声を掛けてきました。

「え……よろしいのですか?」
「うん。久々だしね」
「でも兄様にそんなこと……」
「なに遠慮してるの。
 ほら、こっちおいでよ」
「じゃ、じゃあ……遠慮なく。
 お、お願いしま~す」

 羞恥に肌が赤くなるのを自覚しながら、
 私は兄様に背を向けるの座り込むのでした。

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