勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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研鑽と戦闘流儀みたいです

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 母様を失ってから4年。
 力が無い事の悔しさを発条に、私達は協力し合いながら出来る限り切磋琢磨してきました。
 歳以上に私も兄様も己を鍛え上げたと思います。
 そこには微かな自負すらありました。
 しかし父様との圧倒的な実力差を見せつけられた今……
 自分の傲慢さを思い知りました。
 結局のとこ、身体能力の向上やスキルの習熟以外私は変わっていなかった。
 精神的にはお子様だった3歳の時のままなのでしょうか?
 情けなさと自分の愚かさに敗北感すら抱きながら父様の前に赴きます。
 訓練場の中央。
 5メートル程離れ、間合いを取りながら対峙する私達。

「次はユナか」
「はい。よろしくお願いします」

 無手で構え、半身を引きます。
 一見無防備とすら見えるこの構えですが、
 実態はノルファリア練法<天地>の型といいます。
 大きく腕で螺旋を描く周天の振りが無限∞を示し、
 生半可な力ではそのベクトルを簡単に否されてしまうのです。
 防御に優れるだけでなく、
 すぐに攻撃に移行できるのも大きな特徴でしょう。

 それに対して父様が取るのは<陰陽>の型。
 左手を大きく突き出し間合いを測りつつ、
 右手の木刀はまるで弓の様に引き絞られその解放を待つ。
 ノルファリア練法最速の業である<雷閃>にも繋げ易い型です。

 剣先から迸る威圧感に身体が萎縮していくのが分かります。
 闘気もスキルも無しでこの重圧。
 先程まで対戦してた兄様の偉大さが実感できます。
 息苦しさを覚えた私は、無意識に<気と魔力の収斂>を発動。
 今の自分に出来る最大倍率まで闘気を纏うと身体機能を強化。
 時間を掛けながらジリジリとトータル戦闘力を向上させていきます。
 しかしそんな私に対し、父様は咎める様な思案する様な顔で話し掛けてきます。

「なあ、ユナ」
「何でしょうか、父様」
「実戦でそんな隙はあると思うか?」
「……ありませんね」

 私は瞬時に<気と魔力の収斂>を解除。
 僅か数秒の発動に過ぎないのに、全身にずっしりと疲労感が襲い掛かります。
 父様からリーディングしラーニングした前衛職究極技法<気と魔力の収斂>
 ……俗にいうアゾートは、確かに比類なき力を与えてくれます。
 けどそれはある意味諸刃の剣なのです。
 生命力の象徴である気と、
 精神力の象徴である魔力。
 双方を共に消費続けるこの技は、いわば血を吐くマラソン。
 使い手が相応しい存在にならない限り、自分の身体を痛めてしまいます。
 残念ながら私はまだまだ精進が足りません。
 軽い深呼吸の後、私は再び天地の構えに戻ります。

「ではこれで」
「いや、今日は止めにしよう」
「え!? どうしてですか?
 シャス兄様は、ちゃんと稽古をしてたじゃないですか!?」
「理由は……わたしが言わずとも、
 本当はユナも分かっているのだろう?」
「……はい」
「確かにユナは多種多様な才能を持っている。
 一度見た事は忘れないし、努力もしている。
 だが……それだけでは駄目なのだ。
 実戦では役に立たない」
「絶対の一にならないからですか?」
「そうだ。天才肌であるユナには理解し難い概念かもしれないが……
 万能よりも一点でもどこか突き抜けたものを持つ方が勝利を得やすいのだよ。
 凡人は持ち味を活かす為に試行錯誤するからな。
 卑劣ではない。
 それは努力の賜物なのだ。
 飽く事なき研鑽の末に生み出されるのが戦闘の型、スタイル。
 今のユナは覚えたスキルに振り回されてる印象を受ける。
 技能を伸ばすだけで完全に身に着けた訳ではない。
 違うかな?」

 私の心を窺う様に射竦める父様。
 鋭い。
 その示唆は流石の一言です。
 常日頃私が感じていた疑念を率直に指摘してました。

「……その通りです」
「ふむ。ならば基礎訓練を終えた今、
 下手に稽古を積むより自分なりの戦闘スタイルを見い出す事が先決だろう」
「はい」
「まあ、師として忠告すれば……
 ただ多くのスキルを持てばいいという訳ではない。
 理に適った自分だけの戦闘流儀を形成するのが重要なのだよ。
 それは属性となり信念となり武器となる。
 この様に」

 父様が軽く力を籠めると木刀に闘気が宿ります。
 それは瞬時に大きく鋭く拡大していき巨大な闘気の刃となります。

「昔、私の異名の由来ともなった闘気の刃……闘刃だ。
 如何なる事態もこれで乗り切るべく鍛え上げてきた。
 結果はあの通りだったがな」

 自嘲するように唇を歪める父様。
 そんな父様の顔は見たくないのに……

「綺麗事だけではやっていけない。
 正義なき力が無意味な様に、
 力無き正義もまた無力なのだから。
 だからユナ、強くなりなさい。
 然るべき時に後悔しない様、確固たる自分を鍛えなさい」
「はい!」

 苦悩しながらも重々しく告げる父様に、
 私は一滴(ひとしずく)の涙を零しながら応じるのでした。
 
 


 
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