迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流

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1日目⑩

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「こいつと戦え、ってことか」

 俺は手にしたスコップを胸元で構える。
 途端、合わせる様に骸骨も剣と盾を構えた。
 平和な日本で生まれ育って早27年。
 時折喧嘩などはあったが……
 幸い大きな争いに巻き込まれた事はない。
 それがチュートリアルとはいえ、いきなり命を懸けた戦いだ。
 喉の奥がひり付き足が麻痺したように重くなる。
 だが、戦士【ファイター】クラスを得た恩寵なのだろう。
 身体の動かし方は自然と分かる。
 これなら戦える!
 ならば……チュートリアルとはいえ戦闘訓練に付き合ってくれるこの骸骨は敵以前に先生だ。
 先達に対しては、まず敬意を。
 躾をしてくれた祖父の教えを思い出し、襲い掛かる前に軽く一礼を行う。
 すると驚いた感じで骸骨が強張り――
 やがて肩を竦めるように剣と盾を軽く持ち上げてみせる。
 随分と人間臭い動作だが……
 掛かって来い、という事だろう。
 骸骨との距離を一気に詰めると俺は上段から袈裟懸けで骸骨に切り込む。
 当たった! 
 と思った瞬間、俺は後頭部に衝撃を感じて地面に倒れていた。
 何があった!? と首を上げ確かめると――
 半身で軸をずらし俺の突進をいなした骸骨が盾を使って殴りつけたらしい。
 追撃してくる様子はなく、俺が立ち上がるのを待ってくれている。
 これが実戦なら……今ので終わりだった。
 倒れたところで無防備な姿を晒す俺を、剣で刺すだけでいい。
 なので今の動きの何が駄目だったかを思い返す。
 予備動作が大き過ぎた。
 要は威力があるとはいえ派手な動きを伴う狙いは相手にバレバレで対処される、ということか。
 初撃の反省を活かし今度は細かく丁寧にスコップを構えにじり寄る。
 その動きは及第点だったのだろう。
 満足そうに頷いた骸骨が再度剣と盾を構える。
 そして時が経つ事、小一時間――

「ありがとうございました!」

 戦いとは何か、無駄な動きとは何か――
 を文字通り叩きこまれ体得し汗だくになった俺は深々と一礼をする。
 この短時間で俺にとってこの骸骨はチュートリアルの相手というだけでなく、戦いにおける師匠……スカル先生とでも呼ぶべき存在になっていた。
 スカル先生は感慨深そうに再度頷くや俺に剣を向ける。すると剣先から放たれた燐光が俺の胸目掛けて飛んできた。
 これまでの付き合いでそれが有害なものでないと直感で理解した俺は甘んじて受け入れる。すると――

「【身体強化(低)】【物理耐性(低)】並びに【強撃】スキルを取得しました」

 というアイの声が響き渡る。
 驚いてスカル先生の方を見ると……表情の分からない骸骨なのに明らかにニヤリとした表情を浮かべ消えていく。
 こんな格好いい餞別なんて……感謝するしかないだろうが!
 師匠じみたスカル先生の佇まいに――
 熱い衝動を堪え、俺はその姿が完全に消えても頭を下げ続けるのだった。

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