迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流

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1日目 終

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「またこの空間か……」

 気付けば自宅居間を模したソファーに俺は腰掛けていた。
 目の前には明滅するテレビが配置されている。
 先程も来た意識空間だ。
 だが周囲を見るまでもなく全然違和感がない。
 仮想空間である不自然さを感じないなのだ。
 あるがままにあるものがある。
 いったいどういうテクノロジーの産物なんだか。
 まあ、魔法がある世界にツッコミを入れても仕方がないかもしれないが。

「それだけ臥龍の思い入れが深いのでしょう」
「うおっ!」

 背後から不意打ち気味に話し掛けられ驚愕する。
 振り返れば澄まし顔のアイが例の姿(メイド)よろしく控えていた。
 一人暮らし故か最近独り言が多いが……
 それに答える存在がいるのがどうにも慣れない。
 俺は照れ隠しに頭を掻きながらアイに尋ねる。

「色々とサポートありがとう、アイ」
「当然の成果です」
「それでも改めて礼を言いたいのさ。
 本当に感謝している」
「臥龍の有益に繋げるのが私の役目ですから」
「ホント、そういうとこ可愛くないな。
 いつかデレさせてみせる」
「期待しないで待ちます」
「んで、無事レベルアップはしたけどさ……
 ここで何をすればいいんだ?」
「説明します。
 まずテレビ画面に映るステータスをご覧下さい」
「おう」

 画面に注目する。
 そこにはクラス取得時同様のステータスが写し出されているが――若干変わっている部分もあった。


ネーム:臥龍臼汰
レベル:2
クラス:戦士【ファイター】L2
HP :58
MP :12
SP :5
称 号:ダンジョンの寵愛を受けし者 
身 長:185
体 重:72
ステ表:筋力C 体力D 魔力E 
    敏捷D 器用E 精神E  
装 備:スコップ
    ツナギ 
スキル:獲得経験値向上(低) 
    身体強化(低)
    物理耐性(低)
    強撃(発動名:スマッシュ)
加 護:助言者(思念体:アイ)


「おお。HPとMPが追加表記されてる!」
「貴方の潜在能力を汲み取った、おおよその概算値です。
 HPは攻撃を受けたり罠や毒などを受けると減少し、0になると昏倒。マイナス体力数値分、Eなら-10になると死亡します。
 今はまだ手段を得ていませんが、常に回復を怠らないようご注意を。
 MPは魔法やスキルを使う度に規定値を消耗。
 こちらも0になると昏倒し、HPとの違いはマイナス魔力数値分、Eなら-10になると昏睡します。
 昏睡状態になると通常手段では回復ができませんのでご配慮下さい。
 なお、通常探索中にステータスを見る事ができませんが、私がサポートする事により残値を知らせる事は可能です」
「ステータスオープンはこの意識空間下だけか。
 よし、了解した。
 無謀な行為は控えるよ」
「賢明な判断です」
「そういえば……SPっていうのはアレか?
 もしかしてスキルポイントの略なのか?」
「正解です。
 今後この数値を消費してスキルを獲得します」
「やっぱりな。
 あとレベルが上がればクラスレベルも共に上がる感じか」
「肯定です。
 それにしても……随分手慣れた様子ですね」
「昔やっていたTRPGがそんなノリでな。
 自分好みにビルドして自由に遊べた」
「テーブルトークアールピージー……
 卓上冒険遊戯ですか。
 だからこそ【探索者】に選ばれる素質があったのですね」
「? 何か言ったか?」
「――いえ、何も。
 ステータスに関わる情報を更新し終えたら、また現実空間に復帰します。
 逆説的に考えれば――更新するまでは、この意識空間に居続けられるという事。
 これは大きなアドバンテージとなり得るので覚えておいて下さい」
「なるほど。
 レベルアップのタイミング調整が必要だが……
 絶体絶命の危機とかに、心行くまで打開策を検討出来る訳か」
「そうです。
 無限の時間があれば検証を重ね有益な対応を図りやすくなります。
 さあ、スキルを選択するかポイントを保持するかを選べば終了です。
 どうしますか、臥龍?」
「なら、まずはアイのお勧めを訊こう」
「私ならば――」

 アイの助言通りにあるスキルを選択。
 通常なら【探索者】に見向きもされない一見地味なこのスキル。
 実感が湧くまで時間が掛かるのが難点らしい。

「あと、臥龍。
 これは大切なお知らせです」
「なんだ、改まって?」
「今日は探索を切り上げ一度地上に戻って下さい」
「どうしてだ?
 せっかく面白くなってきたのに」
「レベルアップの弊害……魔素を急激に取り込んだ後遺症が貴方を襲います。
 俗に言う【成長酔い】状態ですね。
 急激にレベルアップした際などもに生じるので、今後も注意を。
 今回初めてなので特大級のものが来る予定です」
「どの程度なんだ?」
「臥龍風に分かりやすく具体的に例えれば……
 大学初のコンパ級でしょうか」
「……恐ろしいな、それは。
 地獄絵図を思い出したよ。
 分かった。今日はこれで切り上げる」
「正解です。
 素直でよろしいと思います」
「おう。昔からの取り柄だ」

 スキルを選択し、現実空間に復帰した俺は入って来たゲートまで歩む。
 何事も無く転送され自宅に戻ると……急な疲労感を覚えたのでシャワーを浴び横になった。
 記憶にあるのはそこまでだ。
 平衡感覚の消失。
 前後不覚の酩酊。
 ダンジョン探索に挑んだ感慨も興奮もなく――
 俺の意識は一瞬にして途切れた。

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