迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流

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5日目④

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「現在の金相場から換算させて頂きまして……
 この額になりますが、如何でしょうか?」
「ああ、それで構わない」
「ありがとうございます。
 先程、現金での受け取りをご希望と伺ったので只今ご準備致します」
「迅速な対応で素晴らしい。
 ただ、一ついいか?」
「何でしょうか?」
「出所を……訊かないんだな」
「はて? 数日前から市場を賑わかせている謎の金貨の事でございましたら、
 我々の界隈でも既に情報は行き交っておりますのでご安心を。
 含まれている金、つまり含有量についても問題ないですし」
「さすがは商売人」
「お褒めに預かり恐悦至極。
 ああ、来ました。
 こちら、どうぞお納めください」
「ありがとう」
「中身をお確かめにならないので?」
「金勘定で貴店を疑うような真似はしたくない。
 もし間違っていたなら俺の見る目がないだけだ」
「これはこれは。
 豪放に見えて随分と手厳しい。
 我々も常に自戒せねばなりませんね」
「他意は無い。
 互いに儲け合う良好な関係を築きたいだけだ」
「同感ですな。
 なればこそ、臥龍様」
「なんだ?」
「今後ともぜひ当店をご贔屓頂ければ幸いです。
 大概の事には問題なく対処するので」
「正直こちらとしても助かる。
 では、また数日後に」
「くれぐれもお気を付けて。
 命あっての物種と申します故」

 どこまで事情を把握しているのか?
 慇懃無礼にも取られそうなロマンスグレー店員の最敬礼を背に――
 俺達はこの都市最高ランクにして最上級の貴金属店を後にするのだった。




「せ、先輩……」
「どうした、楓?」
「めっちゃカッコイイっす!
 なんですか、さっきの!?」
「何って……初取引場所に素の自分でいったら舐められるだろう?
 見たこともない金貨を抱えてる客なんて怪しい以外何者でもないし。
 だから演技だよ、ハードボイルド風の」
「はあああああ~
 それであんな燻し銀だったんすね!」
「殆どはウチの爺様の真似だけどな。
 小さい頃、盛り場によく連れて行ってもらった」
「自分としてはそっちの方が気になるんですけど」
「まあ、まずはATMだな。
 こんな金を抱えてると碌な目に合わないし。
 取り合えずこうして、と」
「先輩!
 さ、札束を投げないで欲しいっす」
「ん?
 これはお前の正当な取り分だぞ?」
「そうじゃなくてですね、こんな金額を」
「慣れろ。
 どうせこんな金額はすぐ稼げるようになる」
「そりゃあそうでしょうけど……」

 俺の言葉に楓が押し黙る。
 アイによる探索者の死亡人数を聞いた俺達。
 何やら興を削がれたというか、探索に関する集中力を欠いてしまったのだ。
 それで今日は早々と探索を切り上げ車で都会まで出てみた。
 気晴らしもあるが一番は溜まった金貨の換金である。
 かくして冒頭に繋がるが――
 予想以上の金額に驚いている。
 どうやら数日前から更に金相場が上がっているらしい。
 その理由は勿論ダンジョンだろう。
 さっきの店員も俺がうっすら探索者であると気付いていた。
 俺も出所を探られず安心して換金できる店を求めていた。
 結果、ウィンウィンの関係を構築できたと思う。
 
「今日は美味いものでも食って明日からに備えるとするか」
「賛成です。
 あと探索に役立てそうなアウトドアの店も覗きませんか?」
「名案だな。
 もう少し行ったところに中華の美味いとこが――」

 貴金属店を出た俺と楓が駅前の繁華街を歩いていると、

「あの~止めて欲しいのですけど」
「いいじゃん、付き合えよ」

 路地裏からどこか聞き覚えのある男女の諍いの声が聞こえてきた。



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