迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流

文字の大きさ
37 / 54

5日目⑤

しおりを挟む

「こんな時間に一人でいるからには、どうせ暇っしょ?
 ならさ~オレらといいことしよーぜ」
「そうそう。
 身も心も気持ち良くさせちゃうよん」

 いかにもザコっぽい三下な台詞。
 ただ恫喝にも近い言葉には暴力に慣れた感じがあった。
 楓と顔を見合わせた俺は隠れるよう無言で指示する。
 素直に応じ、スーッと目立たない場所へと移動する楓。
 なんで? 
 とか、 
 どうして?
 など余計な事を問わず応じてくれる迅速さは、ダンジョン探索で培われたものだ。
 命が懸かった場では何より拙速が尊ばれる。
 気配を殺した俺は声のする路地裏をそっと覗き込む。
 そこでは怯える一人の女性を囲む様に髪を金だの赤だの派手に染めた、厳つい容貌をした若者二人がいた。
 ガラの悪さからタチの悪いナンパという名の不同意猥褻に近いと判断。
 見て見ぬ振りも出来ず――
 また何かの間違いだとシャレにならないので溜息を吐きつつ声を掛けてみる。

「その辺にしておいたらどうだ?」
「あん? なんだ、おっさん」
「てめえにはカンケーないだろ。
 黙って失せろや」

 自分たちに非がある事は重々承知しているのだろう。
 最初から喧嘩腰どころか胸倉を掴み、有無を言わさず殴り掛かってきた。
 なるほど。
 こうやって女性の前で介入者へと暴行を見せつければ、更に怯えて事に及びやすくなるという寸法――目論見か。
 確かに有効かもしれない。
 相手で俺でなければ、だが。
 拳を大きく振り上げるテレフォンパンチにこちらからタイミングを合わせ、勢いよく額をぶつけていく。
 次の瞬間――
 グシャ!

「いてえええええええええ!!
 なにすんだ、おめえええええ!!」
 
 自ら(愚者)を讃える破砕音と共に拳を押さえて転げまわる金髪。
 おかしな角度に曲がった指を見るに骨折したらしい。
 探索者としての頑健さに加え、スキル【物理耐性】【身体強化】所持者を無防備に殴ったら、そりゃそうなるわな。
 にしても反射でそんなダメージを負うほど全力で人を殴るなよ。
 自業自得ともいえる男を冷静に見下ろしていると、

「ふざけんな、殺すぞ!」

 仲間がやられたことに激昂したのだろう。
 赤髪の方がナイフを取り出して襲い掛かってきた。
 鈍い銀光が夕闇に照り輝く。
 しかし――

「遅いな」

 先程からのこいつらの動きときたら……
 戦闘に慣れた俺にとってはスローモーションだ。
 それに殺気すら伴わない雑な攻撃は児戯に等しい。
 頸動脈を狙ってくるだけ、まだジャイアントラットの方が脅威である。
 素人丸出しでブンブンとナイフを振り回しながら切り掛かってくる赤髪。
 俺は冷静に殺傷圏から身をかわすと手加減をしながらカウンターで顎に蹴りを叩きこむ。
 バキッ!
 景気のいい音と共に白目を剥いて意識を失い、その場に崩れ落ちる赤髪。
 い、いかん。
 殺してないよな?
 よし、ピクピクしてはいるが……ちゃんと呼吸はしてる!

「ひいいいいいいいいいい!!」
「これ以上痛い目に遭いたくなかったら――
 そいつを連れてさっさと失せろ。
 これは治療費だ」

 情けない悲鳴を上げる金髪に10万程入った封筒を叩きつけ睨みつける。
 本物の殺気というか気迫を浴びたことがなかったのだろう。
 金髪は大慌てで封筒を仕舞い込むと赤髪を抱え、えっちらおっちら逃げていく。
 ふう……どうにかなったな。
 だが――俺も随分と強くなったもんだ。
 格闘技をやっていた経験はあるが、刃傷沙汰なんて初めてだというのに。
 それなのにあれだけ冷静に捌けた自分に驚く。
 僅か数日で俺は規格外の成長を遂げたらしい。
 肉体的にも……精神的にも。
 これはレベルアップだけでなくスカル師匠のお陰かもしれない。
 あのチュートリアルで戦う為の心構えが定まった気がするしな。
 男達が走り去ったのを確認しながらそんな事を思っていた時――

「臼汰……くん?」

 背後から掛けられたか細い声に振り返る。
 天然なんだよ、といつも自慢していた栗色のロングヘア―。
 小顔なのにバランスよく配置された美貌。
 野暮ったいカーディガンとジーパンなのにスタイルの良さを隠し切れない肢体。
 何より印象的な、見る者を捉えて離さない蠱惑的な双眸。

「瑞希さん……
 どうしてここに?」

 以前勤めていたブラック会社の元上司。
 そして学生時代からの付き合いである瑞希莉愛がそこにいた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...