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5日目⑥
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「さっきは助けてくれて本当にありがとう。
しつこく付き纏われて怖かった。
でも……まさかこんな所で臼汰くんや楓ちゃんに会えるとは思わなかったな」
「こちらこそですよ、瑞希さん」
荒事のあった裏路地では何なので手近な喫茶店に入った俺と楓は、対面に座った瑞希さんと向き合う。
久しぶりに会う彼女はかなり消耗していた。
以前は常に穏やかな微笑みを浮かべまるで朝顔みたいだった表情には陰鬱な翳りが差し、どこか夕顔のようなアンニュイさを感じる。
「けど……ごめんね」
「何がです?」
「二人のデートの邪魔をしちゃって。
せっかく楓ちゃんとのお出かけだったのに」
「そんな色気のあるもんじゃないですよ。
こいつが従業員として急に押し掛けてきたから必要物資の買い出しです。
な、楓?」
「全般的に否定し辛い内容っすけど……
そうきっぱり言われると腹立つっすね」
「ほらね」
「そうなんだ……うん、良かった」
何故か安堵する様に胸を撫で下ろすと、注文したコーヒーに手をつけず下を向いて無言になる瑞希さん。
何か言いたいけど言い出せないらしい。
なので迷惑かもしれないが敢えて踏み込む。
「瑞希さんはどうしてあんなところに?
物騒ですよ、一人で路地裏なんて」
「考え事をしてたら迷い込んでしまったの。
ほら、わたしって昔からおっちょこちょいだから」
「変わってないですね、その周囲が見えなくなる癖。
だけど気をつけないと。
瑞希さんは美人なんだから余計なトラブルに巻き込まれますよ。
たまたま今回は俺がいたからいいものの」
「うん、気をつける。
また……臼汰くんに護ってもらっちゃったね」
「大学時代に受けた恩に比べれば全然です」
楓同様、突然の事故で家族を亡くし天涯孤独の身となった俺。
そんな俺を𠮟咤激励し公私共に支えてくれたのが瑞希さんだった。
俺にとって彼女は肉親以上に大切な存在だ。
「それだけじゃないよ。
ほら――君が会社を辞めることになった、あの」
「ああ、あのバカ(部長)」
「うん。自らを省みず臼汰くんが動いてくれたのに……
わたしは最後まで護られてばかりで。
お礼を言おうにも、電話もメールも含め全部連絡が付かなくなっちゃうし」
「すみません。
退職する俺と関わると迷惑になると思ったんで」
「相談してよ!
――わたし、臼汰くんに嫌われたかと思って……」
「俺が瑞希さんを? ありえない」
「はあ……
先輩――そういうとこっすよ」
「どういうことだ、楓?」
「ここ最近、課長が落ち込んでいた訳が分かりました。
そして個人情報だから伏せてたけど――療養休暇に入った理由も」
「療養休暇?
おい、それって――」
「待って、臼汰くん。
わたしから説明するね?
君がいなくなって……それでも会社は何事も無く廻って。
相変わらずノルマに追われる日々。
正直言うとね、疲れちゃったの。
鬱病……っていうのかな?
わたしがいなくなっても同じなんだなって。
何もする気がなくなっちゃって。
お医者さんに通ったけど良くならなくて。
本当の事を言うとね――
ここに来たのは、楓ちゃんが話してた君の家の近くで癒されたかったの。
――ううん、これも嘘だね。
ホントは……全てを終わりにしたかったのかもしれない」
整った顔を流れる美しい透明な雫。
テーブルを哀しく叩くその音色に俺と楓は言葉を失うのだった。
しつこく付き纏われて怖かった。
でも……まさかこんな所で臼汰くんや楓ちゃんに会えるとは思わなかったな」
「こちらこそですよ、瑞希さん」
荒事のあった裏路地では何なので手近な喫茶店に入った俺と楓は、対面に座った瑞希さんと向き合う。
久しぶりに会う彼女はかなり消耗していた。
以前は常に穏やかな微笑みを浮かべまるで朝顔みたいだった表情には陰鬱な翳りが差し、どこか夕顔のようなアンニュイさを感じる。
「けど……ごめんね」
「何がです?」
「二人のデートの邪魔をしちゃって。
せっかく楓ちゃんとのお出かけだったのに」
「そんな色気のあるもんじゃないですよ。
こいつが従業員として急に押し掛けてきたから必要物資の買い出しです。
な、楓?」
「全般的に否定し辛い内容っすけど……
そうきっぱり言われると腹立つっすね」
「ほらね」
「そうなんだ……うん、良かった」
何故か安堵する様に胸を撫で下ろすと、注文したコーヒーに手をつけず下を向いて無言になる瑞希さん。
何か言いたいけど言い出せないらしい。
なので迷惑かもしれないが敢えて踏み込む。
「瑞希さんはどうしてあんなところに?
物騒ですよ、一人で路地裏なんて」
「考え事をしてたら迷い込んでしまったの。
ほら、わたしって昔からおっちょこちょいだから」
「変わってないですね、その周囲が見えなくなる癖。
だけど気をつけないと。
瑞希さんは美人なんだから余計なトラブルに巻き込まれますよ。
たまたま今回は俺がいたからいいものの」
「うん、気をつける。
また……臼汰くんに護ってもらっちゃったね」
「大学時代に受けた恩に比べれば全然です」
楓同様、突然の事故で家族を亡くし天涯孤独の身となった俺。
そんな俺を𠮟咤激励し公私共に支えてくれたのが瑞希さんだった。
俺にとって彼女は肉親以上に大切な存在だ。
「それだけじゃないよ。
ほら――君が会社を辞めることになった、あの」
「ああ、あのバカ(部長)」
「うん。自らを省みず臼汰くんが動いてくれたのに……
わたしは最後まで護られてばかりで。
お礼を言おうにも、電話もメールも含め全部連絡が付かなくなっちゃうし」
「すみません。
退職する俺と関わると迷惑になると思ったんで」
「相談してよ!
――わたし、臼汰くんに嫌われたかと思って……」
「俺が瑞希さんを? ありえない」
「はあ……
先輩――そういうとこっすよ」
「どういうことだ、楓?」
「ここ最近、課長が落ち込んでいた訳が分かりました。
そして個人情報だから伏せてたけど――療養休暇に入った理由も」
「療養休暇?
おい、それって――」
「待って、臼汰くん。
わたしから説明するね?
君がいなくなって……それでも会社は何事も無く廻って。
相変わらずノルマに追われる日々。
正直言うとね、疲れちゃったの。
鬱病……っていうのかな?
わたしがいなくなっても同じなんだなって。
何もする気がなくなっちゃって。
お医者さんに通ったけど良くならなくて。
本当の事を言うとね――
ここに来たのは、楓ちゃんが話してた君の家の近くで癒されたかったの。
――ううん、これも嘘だね。
ホントは……全てを終わりにしたかったのかもしれない」
整った顔を流れる美しい透明な雫。
テーブルを哀しく叩くその音色に俺と楓は言葉を失うのだった。
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