信仰心ゼロの聖女、女神の身近な世界で無双する

ゆうきゅうにいと

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第1章 信仰心ゼロの目覚め

第004話 エルリカ、チートの中身を認識する


 私の魔法を検証した結果だけど、周囲の魔力を集めていた訳じゃなかった。寧ろもっとヤバい事が分かった。
 ――信仰心を集めているらしいんだけど、どうやらその範囲は広げられる様なのだ。
 チンピラを相手にした時に神聖魔力で作った結界が強かったのは、ギルド全体から信仰心を集めていたらしい。
 信仰心が強ければ特に神聖魔法と言われる回復、結界、浄化の魔法は威力を発揮する。結果わずかな魔力で高威力の結界魔法が発動した訳だ。
 孤児院にいた時はそんな事を意識してなかったから食べ物を届けに来た時とかイジメに来た子供とか、たまたま近くにいた人の信仰心を使っていたんだろう。
 そう言う意味では命の恩人か? ――まあ全く感謝する気にならないけど。
 そして広げられる範囲だけど100m以上いけた。多分慣れればもっといける気がする。
 神聖魔力を乗せれば神聖魔法以外の魔法もそれなりに高威力になる。私は神性魔法含めて全ての魔法が使える。得意不得意はあったけど神聖魔力を乗せれば全て得意魔法に成り変わるのだ。
 これは本当にヤバい威力を発揮するだろう。本気になったら魔法一発でこのギルドくらいなら吹き飛ばせると思う。
 まあしないと思うけど、……今の所。
「反則だよね? ……まあこれからは好きに使って生きさせて貰おう」


 翌朝、……かと思ったらお昼になっていてニーナさんに起こされた。
「やっぱり大分疲れてたみたいねえエルリカちゃん。私今からお昼休憩なんだけど、大丈夫なら一緒にご飯食べない?」
「うん、……大丈夫。起きる」
 まだちょっと眠いけどお腹の方がもっと空いてる。着替えて1階に降りて、顔を洗ってからギルド内にある食堂に向かう。食事時だからか結構混んでるな。
 気の所為とかじゃなくジロジロ見られてる。昨日の騒ぎか原因かな? まあ職員のニーナさんに連れられてるから絡まれる事も無いけど。
「そうよね! エルリカちゃんが自力で神官としての才能に目覚めなかったら死んでいたかも知れないもの!」
「かもって言うか、確実に死んでたと思うよ? まともに食事も取れて無かったし」
「うんうん、でもそんなんでご飯とかってちゃんと分けて貰えてたの?」
「そんな訳ないじゃない。石とか泥玉と一緒に生の芋を投げ付けられてたわよ。あれは痛かったな。良く痣が出来てたっけ」
「えっ! ……生のまま食べてたの!!?」
「体を動かすのも辛かったんだよ? 料理なんて無理に決まってるじゃない」
「孤児院では、……重病の子供を物置に押し込んで、食事もまともに与えないんですねえ?」
 ニーナはギルドで食事中、敢えてエルリカの出自の話題を周囲の人達に聞かせるように話していた。同情して貰い、いざと言う時に助けになって貰おうと考えての事だ。
 しかし次々と出て来るエルリカの新情報に当のニーナがボロボロと涙をこぼし震えながら聞く事になった。絶対この子を幸せにしてやるんだと燃えるニーナだった。
 話しを聞いていた周囲の冒険者達の中にも同様の考えを持った者達もいたようなのでニーナの作戦は割りと上手くいっていたのだが。


「嬢ちゃんは教会公認の神官と言っても成り立てで下級神官だろ? まず何処まで出来るのか知りたい」
 教会の神官にはランクがある。実力と実績に合わせて下級中級上級、そしてその上に特級があり更にその上には聖者聖女と呼ばれる者達もいる。
 聖者聖女は大陸でも数人しかいない程で、女神の身近なこの世界においては一国が囲い込む事も許されていない程の権限が与えられている。
 それで問題が起きないかと言うと信仰心が物を言う神官にとって、信仰心を高める事は女神メルヒオーネに寄り添う事で何よりもの喜びになる。国政などに関わろうとする聖者聖女はこれまで出た事もないのだ。

「自分を治したのは実績にならないの?」
「ああ、ギルドや教会を通した依頼と言う訳じゃないからな。まあお前さんに実力があるなら直ぐにランクなんざ上がるし、低ランクでも神官なら簡単に稼げるから問題無いだろ?」
「まあ、ね」
 ちょっと納得いかないけど仕方ないか。此処はギルドの受け付けの中、ギルマスとニーナさんを交えて私の仕事について話し合っている。
「ギルドにも回復魔法持ちはそれなりにいるが、あれ程の結界を張れる神聖魔法の使い手となると希少だ。少なくとも今この町には神官のメリンダ以外は居ねえだろうよ」
 もし私の実力が中級以上なら回復魔法で稼いでいる人達の仕事を奪う事になるそうだ。

「最低限の力がある事は教会が保証しているだろうが、不治の病を治した程の実力が他人に何処まで発揮出来るのかも分からない。だがそれでも試して貰いたい奴等は居るんだが良いか?」
 と言う事で始まりました神官の仕事。トラブル回避の為にギルドの受け付け内部で仕事をする事になった。
 まずは職員がお試し、肩こりとか腰痛とか簡単なのを治していった。これくらいならギルド内の信仰心だけでも消費する魔力より自然回復量が上回る。サービスで体全体をリフレッシュするようにしたら絶賛されてしまった。
 ちょっと疲れを取って肌艶が良くなっただけなのにね。
「いやいや、気合い入れ過ぎだ嬢ちゃん。これは異常だろ。町中から女達が集まって来るぞ」
「……その内、国中からも来そうですね」
 頭を抱えるギルマスとニーナだったが、仕事が忙しくて溜まっていた疲れが一気に取り除かれて肌艶にまで影響が出ただけ。普通の人に美容効果がある訳ではないと言う話しを職員に徹底させて話しを付けた。
 私も重病人ほっといて美容の為に魔法なんて使いたくないし構わないけどね。

「でも別に気合いなんて入れてないよ?」
「いやいや、肌艶まで良くなるなんて明らかにやり過ぎだよ嬢ちゃん。魔力の無駄遣いだ」
「? たいして使ってないよ?」
「ギルマス。……これホントにエルリカちゃん、聖女並みの力を持ってるんじゃ……」
「ああ、ヤベえな。いや凄えな嬢ちゃん」
「て言うかギルマス、いい加減ちゃんとエルリカちゃんって呼んであげて下さい。他にも若い女の子は皆んな嬢ちゃん呼びしてるでしょう? 言われてますよ?」
「お、おう。……エルリカ、……ちゃん。………………む、無理だ」
 ハゲたおっさんの恥じらう姿を頂きました。って要らないよ?

「ごめんなさいギルマス。ちゃんは要らないです。気持ち悪い」
「いやお前! 言わせておいて気持ち悪いって酷くないか!?」
「だって嬢ちゃんのちゃん呼びが大丈夫だからイケるかと思ったんですよ! でも全然気持ち悪かったんですぅ!! 無理でした!!」
 気持ち悪いと言われて肩を落とすギルマスだけどお試しが終わって今度こそ本番、町の回復魔法使いでも治せない人達を見て欲しいと言う事だった。
「……数ヶ月前に、聖女フィルシアが来てな。その時に重症者は粗方治して貰えたんだが、その時町に居なかった奴等やそれから怪我した奴等も居るんだよ」
 との事、聖女の話しをした時ギルマスも話し辛そうだったし、ニーナさんが凄く嫌そうな顔してたけど何かあったのかな?
 まあ良いや。兎に角、こうして私の冒険者生活が始まる事になった。




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