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第7章 ふわふわ空飛ぶ旅は旅行気分?
第007話 アデール王国の行く末?
しおりを挟む「ちょっ、ちょっとお待ちを! 折角来たのですしもう少しいても宜しいのでは? 歓待させて頂きたい(泊まって貰えなかったらこの希代の爆乳美女と宜しく出来んではないか!!)」
「そうですわ。折角遠くからいらしたのですもの。ゆっくりしていって下さい(お義母様が私や侍女達の姿を見て、肝心のあの子が居ないとなったら美容魔法を自慢しただけの様に見られるじゃない!!)」
そこで慌てたのは公爵夫妻である。理由は真逆と言っても良い程かけ離れているが。
戦争の事もあり今後の舵取りには国家の存亡が掛かってくる。当然その為の社交も必須だ。そんな場に自分達だけアイリス仕立ての肌艶で向かえば吊し上げをくらってしまう。
ユリアンヌ公爵夫人はせめて王妹の前公爵夫人を巻き込んでおかなければならないと必死に引き留めにかかった、アルムール公爵も理由はアレだが同様だ。
マリアンヌは互いの国力の差を理解しているので寧ろ両親が無理強いして相手を不快にさせないかと心配していた。ただアイリスの施術の恩恵を一番受けているので止め辛くもなっていたのだが。
「折角のお誘いですがお気持ちだけで十分です。此方も色々と予定が立て込んでおりますので」
「そっ、そうです! まだ昨日の施術に対する対価も決まっておりません。せめてその話し合いを」
「それは此方でこの子に渡すので大丈夫です。まあ気になるのでしたら後程レンリート伯爵家へお送り下さい」
そんな必死の引き留めもシャルロッテは張り付けた様な笑顔でにべもなく断った。それは何を言っても聞く耳は持たないと言っている様なモノだった。
あまりにも取り付く島もない態度に公爵である自分に対して不敬ではないかと憤りを覚えたが、そう言えばスカーレット姫の妹の治療が理由なのだから此方の方こそこれ以上無理は通せないと考え直した。
「うーむ、そうか、それならば仕方がない……か」
「けど今後の付き合いもありますし、せめてもう少し話し合いたいわ」
シャルロッテの主張の激しい部分をガン見しつつ未練がましくも引き下がるアルムール公爵。
しかしユリアンヌ公爵夫人は諦められなかった。邪な感情だけのアルムール公爵と違い社交での実害を考える夫人にとっては国を背負っているのも同義なのだ。
「今後の付き合い、ですか」
「っ、ええ。実は前ルクセンガング公爵夫人は現王の妹なのよ。丁度今日の夕方には此方に来る予定なの。実のある話しが出来ると思うのだけど如何かしら?」
「何の話しか分かりませんが、それならば公爵様で充分ではないのですか?」
「うっ、うむ。そうだな!」
お義母様に美容魔法の施術をして味方になって頂かないと意味が無いのよ!!
自信満々に答えるアルムール公爵にユリアンヌは何とかこの場で夫に罵声を浴びせるのを堪えていた。――もうぶちギレ寸前である。
「ではアデール王国崩壊後の為の国交について交渉をしましょうか」
「「「は? ……え?」」」
「ああ、勿論未だ一応アデール王国は健在ですので、あくまでも予定になりますが」
アデール王国はカントラス王国と並ぶ中規模の国家である。タヒュロス王国の数倍はあり、また非常に好戦的で脅威度は先に戦争を仕掛けて来たカントラス王国よりも上と見られていた。
そんな国が崩壊する? 何の冗談だ? 困惑する夫妻は何か聞いていないかと娘のマリアンヌに視線を向けていた。
当のマリアンヌはアデール王国の内乱から避難してビアンカの屋敷に匿われていたので、ビアンカ経由でフォシュレーグ王国とアデール王国の戦争について多少聞いていた程度でそこまでは聞いていなかった。
勿論聞いている話しは既に両親に話してあるのでそれ以上の話しは何も無い。
「あの、アデール王国東部からメメントリア王国までの北部をフォシュレーグ王国が抑えたと言う話しは聞いていたのですが、アデール王国の崩壊と言うのはどう言う事なのでしょうか?」
「確かに東部北部はレンリート伯爵が抑えました。ですがそれだけではありませんよ? まあ南部や王都についてはそちらも情報収集されているでしょうからこれ以上は言う迄もないでしょうけど」
そう言って優雅にお茶を口にするシャルロッテをユリアンヌは苦い気持ちで見つめていた。タヒュロス王国も当然危険な隣国の情報収集は欠かしていない。だがマリアンヌからもたらされた情報以上のモノは持っていなかったのだ。
王都の混乱は知っていたが庶民が知る以上の事は知らないし南部についても此方に対しての脅威は無いのではないかと言うくらいだった。
「ですがそうですね。一度情報を整理しましょうか」
シャルロッテは情報を出し惜しみして多少の利益を得るより度量の大きい処を見せて信用させた方が良いと判断していた。一拍置いたのは互いの立ち位置の自覚を促す為だ。ユリアンヌの方には効いているだろう。
ただ事の真偽を証明出来ない以上そこは自分で判断しろと言う事になるのだが。
マリアンヌの問いに答える様にシャルロッテからもたらされた情報は、シャルロッテに美容魔法を掛けるのに集中して話しを聞いていないアイリス以外を驚愕させる内容だった。
「スヤァ……」
『いや主はとっくに寝とるのじゃ』
『リリィ、何時までこの人(シャルロッテ)施術してれば良いなのー?』
『取り敢えずアイリスが起きるか離れるまでじゃの』
『ネネェは主の強化を優先するべきだと思うなのー』
『あっ、こら勝手に止めるでないのじゃ! 全く、仕方がないのう。此方はリリィがやっておくのじゃ』
『(ネネェはアイリスに救われたからかアイリスを優先し過ぎるきらいがあるのじゃ)』やれやれ
アデール王国東部ブラン侯爵派は完全に掌握している事。北部貴族も幾つか取り込んでいて、残りも小物ばかりなので問題無い事。
そして王都は未だ混乱中、西部はカントラス王国への睨みが必要で動けない。南部のサルマトール侯爵派は自領に引っ込んで南部の国々からの侵略に備えている、事になっている。
「あの、なっていると言うのは?」
「南部派閥が南方の2国と手を結んでもアデール王国にも勝てませんから。私達とも付き合いがあるのですよ」
暗に手を組んでいる事を仄めかすシャルロッテ。
仮にサルマトール侯爵派が南の2国と手を組んだとしてもアデール王国単体にも劣る戦力、更に戦になっても戦場はアデール王国と南の2国に挟まれる自分達の南部派閥の領地になる事は明白。
――勝っても負けても自分達の土地が荒れる。
だから今は自領を守る為にアデール王国の行く末を静かに見据えている状況だ。シャルロッテ達は彼等にとって行く末を握る有力な候補になっているのだ。
「それが本当なら確かにアデール王国は詰んでいるのだろうな」
「西部がカントラス王国に取り込まれる可能性はありますけど、まあ大した影響は無いでしょうね」
「それで、アデール王国を取り込んだとしてフォシュレーグ王国としては私達をどうしたいのだ?」
「我々が求めているのはリアースレイ精霊王国との国交とその交易品です」
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